人事院勧告

公開日 2012.07.27 深瀬勝範(社会保険労務士、人事コンサルタント)

人事院勧告(じんじいんかんこく)

 人事院が、人事行政の改善に関して関係大臣等に勧告すること(国家公務員法22条)、あるいは国家公務員の給与、勤務時間その他勤務条件の変更に関して国会および内閣に勧告すること(同法23条)。一般的には、毎年8月中旬(ただし、2011年は9月30日)に発表される、給与に関する勧告(給与勧告)を指すことが多い。

 国家公務員について給与勧告が行われる理由として、次の点が挙げられる。

(1)国家公務員には労働基本権の一部(争議権など)が認められていないため、給与や勤務条件を適正に決定するうえで、それを代替する機能が必要となるから
(2)国家公務員の給与水準は、民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本としているが、それを具体化するために、民間従業員と公務員の給与の実態調査を行い、その結果に基づいて俸給表や手当を改定する必要があるから

 給与勧告は、公務員の給与の実態に関する「報告」と、給与改定の内容を提言する「勧告」、および民間給与や生計費の実態等の調査結果を示す「参考資料」によって構成されており、これに「人事管理に関する報告」等が追加されることもある。人事院勧告は、拘束力は持たないものの、その内容にそって国家公務員のベースアップ等の給与改定(給与法改正による)がなされることが多く、また、報道等を通じて世間に公表されることから、民間企業の給与決定にも大きな影響を与えるものとなっている。

 なお、地方公務員については、各地方公共団体の人事委員会によって、人事院勧告とほぼ同様の給与勧告が、毎年行われている。