2019年10月11日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2019年10月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 経団連の2020年新卒採用に向けた指針における、具体的スケジュールの最後の取り決めである「4.採用内定日の遵守~正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする。」も経過し、「5.多様な採用選考機会の提供~留学経験者に対して配慮するように努める。また、卒業時期の異なる学生や未就職卒業者等への対応を図るため、多様な採用選考機会の提供(秋季採用、通年採用等の実施)に努める。」はまだ継続されるものの、実質的には指針の役目は終わったと言ってよいでしょう。
 指針が廃止される2021年新卒採用に向けて、企業・学生ともにサマーインターンシップにさらに拍車がかかるなど、早期化の傾向がはっきりと現れていますが、今回は、2020年卒採用の振り返りをこれまでと違った形で見ていきたいと思います。

就職人気企業ランキングとは必ずしも連動しない好感度ランキング

 HR総研では、2020年3月卒業予定の「楽天みん就」会員を対象に行った就職活動動向調査の中で、個別企業の「インターンシップ」「採用ホームページ」「セミナー・説明会」「面接官」等について、「最も印象の良かった企業とその理由」を聞いています。1人1社しか投票できないため、企業ごとの得票数は分散する傾向にありますが、1票の価値はとても大きいといえます。今回は、それぞれの項目について好感度上位のランキングを発表するとともに、その理由の一部を紹介します。学生はどんな点を評価しているのか、2021年新卒採用に向けてのヒントにしていただければ幸いです。
 項目別の好感度ランキングは、参加者数や閲覧者数が多いほど、当然のごとく得票の可能性が高くなるわけですが、中には就職人気企業ランキングの上位企業でないにもかかわらず、項目別では上位に来ている例もあります。ここではそうした企業を、特に注目して見てみたいと思います。その参考に、項目別好感度ランキングとの比較対象として、「楽天みん就」会員学生による「2020年卒 新卒就職人気企業ランキング(総合版)」を掲載しておきます[図表1]

[図表1]新卒就職人気企業ランキング(総合)

順位 企業名
1 味の素
2 伊藤忠商事
3 NTTデータ
4 全日本空輸(ANA)
5 花王
6 資生堂
7 電通
8 サントリーホールディングス
9 日本航空(JAL)
10 オリエンタルランド
11 アサヒビール
12 丸紅
13 アクセンチュア
14 集英社
15 バンダイ
16 ソニーミュージックグループ
17 楽天
18 ロッテ
19 サッポロビール
20 バンダイナムコエンターテインメント

資料出所:楽天みん就(有効回答数:4404名)

 なお、調査時期は、[図表1]の新卒就職人気企業ランキングが、2018年10月6日~2019年3月20日と就職活動前半の長期にわたって投票されたのに対して、今回紹介する項目別の好感度ランキングは、就職活動後半戦の2019年6月12日~23日に短期間で投票されたものとなります。

インターンシップの好感度No.1は三井住友海上火災保険

 まずは、「インターンシップ」(2018年~2019年2月実施分)の好感度ランキングから見ていきましょう[図表2]

[図表2]最も印象の良かったインターンシップランキング

順位 企業名 総合 文系 理系
1 三井住友海上火災保険 25 25 0
2 ニトリ 22 19 3
3 グループ 21 21 0
4 日本航空(JAL) 20 17 3
5 全日本空輸(ANA) 19 14 5
6 三菱UFJ銀行 15 12 3
7 東京海上日動火災保険 14 14 0
7 キーエンス 14 6 8
9 明治安田生命保険 13 13 0
9 ソニー 13 5 8

資料出所:HR総研/ProFuture「就職活動動向調査」(2019年6月、[図表3]も同じ)

※有効回答数は1588名

 「インターンシップ」で最も多くの評価を得たのは三井住友海上火災保険(25ポイント)でした。就職人気企業ランキングでは71位ですので、純粋に内容・プログラムが評価された好例と言えるでしょう。コメントを読むと、なぜか早慶大クラスの学生からの支持が多く、1Dayと5日間のプログラムがあることが分かります。また、プログラム内容も多種多様なものがあり、就活本番の予行演習としても好適な経験になったようです。そして、さらに好感度を上げているのは「フィードバック」です。きちんと学生の発表を聞いて講評を返してあげることで、学生はコミュニケーション実感を持つはずです。

・1Dayのものだったが、社会人で必要なスキルを体感できたと感じたから(文系・早慶大クラス)

・5日間で営業ワークや新規事業立案などいろいろできたから(文系・早慶大クラス)

・インターンシップのフォローアップがあったから。プレゼンやグループワーク、ロールプレイングなどさまざまなプログラムがあった(文系・早慶大クラス)

・あらゆる種類のグループワークが盛り込まれていて、内容の濃いインターンシップだったから(文系・上位私立大)

・発表ごとにしっかりしたフィードバックがある(文系・早慶大クラス)

ニトリは参加型ゲームが好評

 2位のニトリ(就職人気企業ランキング36位)のインターンシップは、ゲーム主体のプログラムになっているようです。短期のインターンシップは講話主体の説明会になりがちですが、一方的な講話では学生が受け身になりやすく、参加実感が湧きません。学生を飽きさせない上でも参加型プログラムはマストといえるでしょう。インターンシップだけではなく、セミナーや説明会でも同様です。

・雰囲気が良く、社員の方の人柄も良かったため。グループワークゲームや自己分析を行った(文系・旧帝大クラス)

・複数回参加し、統一した理念・流れがありつつ、毎回新しい気付きが得られたのが良かった(文系・旧帝大クラス)

・1日のインターンシップで、実際の配転教育などを体感できたから(文系・早慶大クラス)

・ゲームの形で会社の歴史背景やビジネスモデルを理解できて、楽しかったです(文系・早慶大クラス)

・実際の仕事内容がワークを進めながら実感できるような内容だった(文系・上位私立大)

 3位はJTBグループ(同23位)。好感度の高いインターンシップはゲーム形式のものが多いものですが、JTBグループはオーソドックスなプログラムのようです。コメントを読むと、グループディスカッションで企業や業務への理解を深め、実際に社員と営業同行することで法人営業を体験させていることが分かります。また、人事や社員の印象が良いと感じる学生が多いのも特徴です。接客業務で鍛えられているからでしょうか。

・人事、内定者の印象がとても良かったから(文系・旧帝大クラス)

・グループディスカッションを通して、企業について深く知ることができたから(文系・早慶大クラス)

・法人営業体験。社員さんのサポートが手厚く、具体的なフィードバックを頂くこともできた(文系・早慶大クラス)

・旅行商品造成企画体験(文系・早慶大クラス)

・どのインターンも、JTBの社員になったことを想定して行ったため、モチベーションが上がったから(文系・その他国公立大)

JALとANAは社員の評価が高い

 日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)のエアライン系2社は、どの就職人気企業ランキング調査でも上位に挙がっていますが、そのほとんどでANAが上位になっています。「楽天みん就」のランキングでも、ANAが4位なのに対して、JALは9位です。たぶん国内線、国際線ともに旅客数首位ということや、JALの経営破綻がまだ記憶に新しいことなども影響しているのでしょう。しかし、今回のインターンシップ好感度調査では、JALが4位、ANAが5位と逆転しています。
 JALのインターンシップでは、新規事業立案を新鮮に感じた学生が目立ちます。「パイロットインターン」という言葉もあるようですから、いろんな職種向けインターンシップを実施しているようです。

・新規事業立案、社員座談会(文系・旧帝大クラス)

・社員さんがとにかく親切だった。内容はパイロットインターンで、機長、副機長の方のお話が聞けたり、シミュレーター体験をしたりした(文系・上位私立大)

・内容も楽しく、CAの志望度が高まったから(文系・上位私立大)

・従業員間のコミュニケーションが多く、どちらかというと体育会系であった点(文系・その他私立大)

 JALの社員への評価には高いものがありましたが、ANAもそれは同じです。「雰囲気」「温かかった」「和気あいあい」「親切丁寧」「気遣い」と、絶賛と言ってもいいコメントが並びます。エアラインは旅客サービス業だから接客サービスに長けているのは当たり前とも言えますが、インターンシップに参加した学生の志望度は間違いなく上がったことでしょう。

・職場の雰囲気をつかみやすかった(文系・中堅私立大)

・就活生に対しての気遣いがすごい(理系・その他国公立大)

・一人ひとりの学生に最初から最後まで親切丁寧な対応をしてくれた(文系・上位私立大)

・インターンシップの後に、希望者は社員の方とお話しする時間を取ってくれた。1時間ほど、社員の方と密にお話しできた(文系・上位私立大)

・会場へ入場する前の待ち時間からも、積極的に学生に話しかける等、本当に温かかった(文系・その他私立大)

キーエンスは「自己分析合宿」

 6位の三菱UFJ銀行(就職人気企業ランキング78位)のインターンシップは、本格的な印象を受けます。専門性が高く、涙するほど感動する内容とはただごとではありません。また、自行や銀行業界だけでなく、他業界への批評も話してもらえるようです。

・まず社員1人にリクルーターになっていただき、1対1で社員と話すことができ、そこを中心にして自分が興味のある部署、職種で働く現場社員の人に会わせていただけるというもの(文系・上位私立大)

・非常に専門性の高いプログラムを行っていたから(文系・中堅私立大)

・感動して涙が出た。素晴らしい仕事だと思った(文系・その他私立大)

 7位の東京海上日動火災保険(同49位)のインターンシップでも、社員の人間力を評価する学生が多くなっています。

・社員の方がとても丁寧に接してくださったから(文系・旧帝大クラス)

・人が良かった。特にメンターが支えてくれた(文系・早慶大クラス)

・一人ひとりを理解しようとしてくださる社員の方々の姿勢が好印象、かつこのような方々と一緒に働きたいと思えるきっかけとなったため(文系・上位私立大)

 合宿形式でインターンシップを行ったのは、同じく7位のキーエンス(同64位)。内容は自己分析が中心のようで、下記のコメントを読むと、宣伝は一切ないようです。設計業務を体験させたり、掘り下げて自己分析をさせたりとハードに見えますが、学生は喜んでおり、「利益度外視」の姿勢を評価しており、理系からの支持が多くなっています。

・企業宣伝より学生のことを考えたプログラムだった。就職活動で大切にすべきことなどについてのプログラム(文系・早慶大クラス)

・自己分析を非常に深くできた(理系・旧帝大クラス)

・利益度外視でお金をインターンシップにかけていたから(理系・旧帝大クラス)

・キーエンスが大事にしているコミュニケーションについて訓練できた(文系・その他私立大)

 9位は明治安田生命保険(同120位)とソニー(同21位)。明治安田生命保険のインターンシップは、にぎやかな様子が分かります。グループ発表の優勝チームにはゴディバの菓子が贈られたそうですが、これで盛り上がるのであれば安いものと言えそうです。

・グループ発表の優勝チームにはゴディバが贈られたこと(文系・早慶大クラス)

・社員や内定者とお話しをする機会が非常に豊富であり、インターン後のサポートも手厚かったから(文系・上位私立大)

・短い時間でも自分たちで考える時間やワークがあり、積極的になれるプログラムだったのが好印象(文系・その他国公立大)

 続いてソニーです。現在でも理系学生にとって「ソニー」は憧れなのでしょう。なにしろ印象が良かった理由が「職場に入れた」ことを挙げている学生もいます。ほかの企業ではこんな理由は出てきません。

・職場に入れたから(理系・旧帝大クラス)

・担当部署に配属され、OJT形式で取り組んでいく。最終日に成果報告をする。途中でさまざまな職種の社員との懇談会も用意されていて、多方向から意見を聞くことができた(理系・上位国公立大)

・職場での体験、多くの社員の方と話せたから(理系・上位国公立大)

・社員との交流の機会が多かった。オーディオ機器を成長させるためのマーケティング戦略の立案(文系・早慶大クラス)

 今回紹介したトップ10では、ゲーム形式のインターンシップに好感を抱く学生が多かったようですが、職場配属型のインターンシップを経験して企業や業務への理解が深まったという学生も目立ちました。これが本来のインターンシップと言うべきですが、職場の協力を得ることなく、受け入れ人数を増やすことを実現するためには、ゲーム形式のインターンシップも有効なプログラムだと思います。

デザイン・ビジュアルへの評価が高いエアライン系

 次に、採用ホームページの印象についても見てみましょう[図表3]。かつては、大半の企業が就職ナビの正式オープン(現在であれば3月1日)に合わせて採用ホームページを開設していましたが、近年はそれでは遅いとばかりに開設時期が早期化する傾向が見られます。経団連の指針が撤廃されたことで、2021年卒採用に向けてはさらに早期化しており、自社の採用ページでのプレエントリー受付も、来年3月1日を待たずしてオープンする企業も増えてくるものと思われます。

[図表3]最も印象の良かった採用ホームページランキング

順位 企業名 総合 文系 理系
1 全日本空輸(ANA) 60 47 13
2 日本航空(JAL) 49 44 5
3 東京海上日動火災保険 38 36 2
4 カゴメ 37 19 18
5 ソニー 35 4 31
6 伊藤忠商事 34 25 9
7 味の素 33 16 17
8 アクセンチュア 31 24 7
9 電通 30 23 7
10 オリエンタルランド 29 24 5
11 旭化成 28 1 27
12 楽天 26 20 6
12 NTTデータ 26 16 10
12 花王 26 11 15
15 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 25 24 1
16 凸版印刷 23 14 9
16 トヨタ自動車 23 13 10
18 東海旅客鉄道(JR東海) 21 16 5
18 東日本旅客鉄道(JR東日本) 21 10 11
18 パナソニック 21 8 13

※有効回答数は1890名

 好感度ランキングの上位企業への学生コメントを紹介します。1位の全日本空輸(ANA/就職人気企業ランキング4位)へのコメントはビジュアルへの評価が多くなっていますが、短文コメントも多く、憧れで閲覧しているだけの学生もいそうです。

・キラキラしていたため(文系・早慶大クラス)

・動画が魅力的(文系・早慶大クラス)

・社員インタビューがとても充実していたこと(文系・早慶大クラス)

・動画や写真など視覚的情報が多く、魅力的だったため(文系・上位私立大)

・社風のイメージカラーを主としたデザインで、知りたい内容が分かりやすくまとまっているから(文系・早慶大クラス)

・見やすいだけでなく、社員の声が反映されているものだったから(文系・上位私立大)

・人材を人財と呼んでいるところ(文系・上位私立大)

 2位の日本航空(JAL/同9位)もデザイン性への評価が高くなっています。「見やすい」というコメントが最も多く寄せられています。

・デザインがきれい(文系・早慶大クラス)

・見やすかったから(文系・その他国公立大)

・分かりやすく整理されていた(文系・上位私立大)

・文言が簡潔で分かりやすい(文系・その他私立大)

・福利厚生が充実しており、事業内容が面白そう(文系・旧帝大クラス)

 原稿を作り始めるとあれもこれも盛り込みたくなるものですが、削って短くしたほうがメッセージ性は高まります。JALは簡潔な文言で狙いどおりの効果を上げているようです。

社員検索機能を搭載するカゴメと味の素

 3位の東京海上日動火災保険(就職人気企業ランキング49位)のコメントは長いものが多く、明らかにANAやJALを志望する学生とは質が異なっているようで、見かけよりも内容を語るコメントが多くなっています。

・新卒採用のページで、就職活動全般に当てはまるようなアドバイスや社員の方のメッセージが掲載されていて、会社の利益だけを考えず社会のためにある会社だという印象を受けたから(文系・旧帝大クラス)

・『世界中に使命がある』というフレーズが好きだから(文系・上位私立大)

・スッキリしていた点と、パスワードとログインIDを端末に記憶させることができるサイトだったため(文系・上位国公立大)

・使命感があることから、仕事への責任の重さ、自己成長の機会が多いことを感じた(文系・早慶大クラス)

 4位のカゴメ(同26位)では、ホームページの機能を評価する声が目立ちます。60人もの社員・内定者のコメントを、職種や入社年次、性別、文理等で絞り込みができるようになっています。面白いのは「スタート職種」での絞り込みです。「研究」「工場」「営業」の3択になっており、初任配属が「研究」だった人が、現在は「海外事業」や「企画・開発マーケティング」「人事」など、さまざまなキャリアに進んでいることが理解できます。

・社員紹介のページが充実しており、さまざまな社員の方の経歴や仕事内容・就活のアドバイスなどを閲覧できたから(文系・早慶大クラス)

・働く人の紹介が豊富で、職種、性別、勤続年数から働く人のインタビューを検索できること。自分が気になっている職種や、自分と同じような学部卒の人のインタビューを簡単に検索して読むことができたこと(理系・その他国公立大)

・社員紹介が一番多く、マイナス面の説明もあった(理系・その他私立大)

・ビジョンについて詳しく書かれていたから(理系・旧帝大クラス)

 5位ソニーと6位伊藤忠商事(同2位)へのコメントは短いですが、使い勝手が良さそうであることが分かります。学生が「UX」という言葉を使っていますが、ユーザーエクスペリエンス(ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験)の略語で、よく使われるUI:ユーザーインターフェイス(ユーザーの目に触れる部分・使用する部分)は、UXの一部だと捉えることができます。

[ソニー]

・就活生に求めることや理念がきっちり書いてあったから(理系・旧帝大クラス)

・きれい(理系・上位国公立大)

・ワクワクした(理系・上位国公立大)

・グループ全体の目標や目指すビジョンがはっきりしていて、分かりやすかった(理系・その他国公立大)

[伊藤忠商事]

・UXがいい、見やすい(文系・旧帝大クラス)

・見やすく、頑張ろうという気力が上がった(文系・早慶大クラス)

・挑戦する人物を応援する雰囲気を感じた(文系・早慶大クラス)

・分かりやすく自分が働いているイメージがつきやすかった(文系・中堅私立大)

 7位の味の素(同1位)もカゴメと同様に22名もの社員を登場させ、初任職種領域と入社年次での絞り込みができるようになっています。一人ひとりの情報量は、キャリアステップや1日のスケジュールなども掲載されており、味の素のほうが充実しています。また、ページ遷移に工夫があり、迷子になりにくいことも評価されているようです。
 8位のアクセンチュア(同13位)では、説明会動画などのコンテンツや視聴者目線での洗練されたホームページが好感されています。

[味の素]

・動画等がホームページ内に貼られ、分かりやすかった点と社員の掲載が多く見ていて飽きない点(文系・中堅私立大)

・迷子にならなかった(理系・その他私立大)

・働き方改革を前面に押し出していた(文系・上位国公立大)

[アクセンチュア]

・社風を出しつつ、説明会の動画があるなどコンテンツが充実していた(文系・早慶大クラス)

・HPデザイン(色、ページリンクボタンの形、フォント、使用画像など)が洗練されており、会社実績がグラフや数字で分かりやすく示されていたため。全体的に、HPを見ている顧客や就活生が何を見たいのかを捉えたHPの作りだと感じた(文系・上位国公立大)

・ブランディングがうまいと感じた(文系・早慶大クラス)

ポップで楽しい電通、ログインごとにあいさつが変わるオリエンタルランド

 9位の電通(同7位)は期待どおりに仕掛けが満載、視聴者に熱を感じさせるのは得意中の得意とするところ。ただ、電通は、かつては1位の常連だったことを考えると、9位に甘んじているのは、学生の間で新入社員の自殺事件の影響はまだ完全には払しょくされていないということなのでしょう。
 10位はオリエンタルランド(同10位)。ちょっと驚いたのは、ログインごとに時間に合ったあいさつに変わる仕掛けです。すべての学生が気付くわけではないでしょうが、気付かれないところでもこっそりとサービスの種をまいているのが、オリエンタルランドらしいとも言えます。

[電通]

・ポップだし見ていて楽しい仕掛け(文系・早慶大クラス)

・企業が目指しているものが伝わってくるから(文系・旧帝大クラス)

・熱を感じた(文系・上位私立大)

・HPとしての利便性とクリエイティビティがどちらも欠けておらず、会社を表していると感じた(理系・上位私立大)

[オリエンタルランド]

・ログインする度にその時間に合ったあいさつが書かれてあったこと(文系・その他私立大)

・夢の国でありながら、ビジネスとして大切にしていることを明確に伝えられていた(理系・上位私立大)

・キラキラしていた(文系・旧帝大クラス)

・笑顔の写真が多かったから(理系・上位私立大)

採用は「マス」から「個」へ

 企業が人材の多様性を求めるとき、そこでは一律の対応は機能しなくなり、個別の対応を余儀なくされることになります。採用においても同様です。これまで新入社員に、全員横並びの処遇制度を適用していたソニーやNECといった歴史のある大企業ですら、特別なスキルを要する人材には、1年目から特別待遇を用意する時代を迎えています。処遇だけでなく、選考においても新卒一括採用から通年採用へシフトしていく中で、全応募者を一つのグループと捉える「マス」の考え方ではなく、応募者一人ずつを個別に捉えていくことが求められてきます。
 採用ホームページについても、これまでの見栄えや分かりやすさといったUI重視の作り方から、「個」に寄り添ったコンテンツ、見せ方が重要になってきます。その中で、タイミングも重要な要素です。最初から採用ホームページ上に膨大な情報を公開するのではなく、応募者のタイプやタイミングに応じて、発信する情報を増やしていくことを考える必要があります。
 選考タイミングがある特定の短期間に行われる一括採用であれば、応募者全体を「興味喚起期」「共感醸成期」「志望度向上期」「不安払しょく期」等に分けて、時期に応じた情報を発信していけばよかったわけですが、今後は応募受付・選考時期もバラバラになるとすると、一人ひとりへ情報を発信するタイミングも異なってきます。オープンな採用ホームページには興味喚起のための情報だけを公開し、採用管理システムのマイページ機能を利用して、個別に情報を出し分けていく必要があります。
 セミナーや説明会も独立したイベントではなく、セミナーに申し込んだ人向けの予習コンテンツ、セミナーに参加した向けのフォローコンテンツなど、WEBとリアルイベントを立体的に構成して、ストーリーを持った採用活動を展開することを考える必要があります。社員・仕事の紹介コンテンツも、応募者全員にすべて同じものを公開して、どの社員・仕事の情報を見るかを応募者に委ねるのではなく、例えば、適性検査や面接の結果と連動させ、その応募者の志向・タイプに適した社員を前面に出して見せていく(見せない社員も存在する)など、よりテクノロジーとの連携が必要な時代になってくると思います。
 次回は、「セミナー・会社説明会」と「面接官」をランキングします。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/