2019年11月08日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2019年11月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 10月30日、政府は就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議を開催し、2021年度卒業・修了予定者(2022年卒)の就職・採用活動日程について、現行日程である「広報活動開始:3月1日以降、採用選考活動開始:6月1日以降、正式内定日:10月1日以降」を踏襲することを決めました。
 経団連と大学関係団体の代表者により構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が4月に公表した「中間とりまとめと共同提言」の中で、従来の新卒一括採用に加えてジョブ型採用などを含めた、複線的で多様な採用形態に移行すべきとしたことや、6月に政府が閣議決定した「成長戦略実行計画」の中で、新卒一括採用中心の採用制度の見直しを図る必要があるとしたことは認めながらも、新卒採用だけでなく、終身雇用や年功賃金等も含めた日本の雇用全体にかかわる問題であり、引き続き未来投資会議において議論すべき課題だとして先送りしています。
 就職・採用活動のルールが急激に変更されることは、学生の混乱を招くこと、就職活動の早期化・長期化が進み学生の学修時間が確保されないこと、中小企業の採用選考活動の負担が増大すること等への懸念も理由とされていますが、これらは最初から想定されていたことであり、これらをも踏まえた「中間とりまとめと共同提言」や「成長戦略実行計画」ではなかったのかと思わざるを得ません。

エアライン2社が上位独占

 さて、今回も前回に引き続き、HR総研が2020年3月卒業予定の「楽天みん就」会員を対象に行った就職活動動向調査の中から、個別企業が実施した選考施策に対する好感度ランキングを見ていきたいと思います。
 まずは、「セミナー・会社説明会」です[図表1]。総合の1位、2位は日本航空(JAL/就職人気企業ランキング9位)と全日本空輸(ANA/同4位)のエアライン系2社です。スコアにはかなり差があり、JALは39ポイント、ANA29ポイントと10ポイントの差があります。この2社は文系で圧倒的に評価が高く、JALは33ポイント、ANAは25ポイントに上ります。3位以下の企業が10ポイント台にすぎないことを考えると、この2社の突出ぶりが分かります。ただし、理系ではJALが6ポイント、ANAは4ポイントと少ない状態です。また、旧帝大クラスでコメントした学生は皆無で、上位私立大の学生が目立つのも特徴といえます。

[図表1]最も印象の良かったセミナー・会社説明会ランキング

順位 企業名 総合 文系 理系
1 日本航空(JAL) 39 33 6
2 全日本空輸(ANA) 29 25 4
3 味の素 25 11 14
3 NTTデータ 25 10 15
5 アクセンチュア 23 18 5
6 旭化成 21 6 15
7 東京海上日動火災保険 17 17 0
8 東海旅客鉄道(JR東海) 16 13 3
8 第一三共 16 4 12
10 日本郵政グループ 15 15 0
10 伊藤忠商事 15 14 1
10 三井住友海上火災保険 15 13 2
10 キリン 15 12 3
10 住友商事 15 12 3
10 東日本旅客鉄道(JR東日本) 15 6 9
16 楽天 14 12 2
17 オリエンタルランド 13 12 1
17 電通 13 10 3
17 村田製作所 13 7 6
17 野村総合研究所(NRI) 13 6 7
17 日立製作所 13 4 9

資料出所:HR総研/ProFuture「就職活動動向調査」(2019年6月、以下図表も同じ)

※有効回答数は1489名

 好印象の理由を読むと、両社ともにセミナーの雰囲気と社員の人柄の良さを挙げる学生が多くなっています。JALに対しては次のようなコメントが寄せられ、社員、特にCAを動員していることが分かります。

・メッセージカードをくれた(文系・上位私立大)

・時間すべてを社員座談会に使っていた(文系・上位私立大)

・参加者が圧倒的に多い業界なのに一人ひとりと真摯に向き合ってくれている感じがした(文系・その他私立大)

・実際に働いているCAさんがたくさんいらっしゃってワクワクしたし、生の声が聞けたので良かった(文系・上位私立大)

 学生がJALを研究すれば、2010年に経営破綻した歴史を知ることになります。しかし、JALはそれを隠そうとせず、そこからの再生の過程を明らかにする姿勢が好感されているようです。

・経営破綻の内容を包み隠さず、むしろ成長している過程を知れたことと、以前と社風が異なっていたこと(文系・中堅私立大)

 ANAのセミナーもJALと似た雰囲気のようです。JALはメッセージカードをプレゼントしたようですが、ANAはクリアファイルとお茶。こういう小さなプレゼントで、たぶん学生は距離の近さや優しさを感じとっているのでしょう。

・一人ひとりにクリアファイルとお茶をくれた(文系・上位私立大)

・現役の社員の方を呼んで生の声が聞けたため(文系・中堅私立大)

・就活生への、気遣いに感銘を受けたため(理系・その他国公立大)

・業界説明から個別の展望、どんなところを学生に見ているか、教えてくれた(文系・上位私立大)

・そこでしか知らない情報を知れたため(文系・上位私立大)

味の素は「福利厚生」をきちんと説明

 3位は味の素(同1位)。食品・飲料系は就職人気企業ランキングの人気業種ですが、今回の好感度ランキング20位以内に入ったのは味の素とキリン(10位)の2社だけでした。
 味の素では「規模の大きさ」や「雰囲気」を挙げるコメントが多く、下記のコメントからは丁寧に説明していることが分かります。人事担当者の中には、福利厚生に強い関心を持つ学生を嫌う人もいます。しかし、福利厚生は労働環境に関する事項であり、コンプライアンス重視の姿勢を示す意味でも、十分に説明する必要があるでしょう。年々、学生の福利厚生への関心度は高くなっており、2020年卒学生の応募先企業の選社理由では、文系・理系ともに「仕事内容」「給与・待遇」に次ぐ3位となっています(2019年9月の本稿参照)。

・社員の方の人柄の良さと仕事にかける情熱を感じられたから(文系・早慶大クラス)

・入社後の福利厚生をきちんと説明してくれた(文系・中堅私立大)

・一対一で話す時間が長かった(理系・旧帝大クラス)

・どんな質問にも答えていただいた(理系・旧帝大クラス)

NTTデータは女子学生限定の説明会を実施

 味の素と同数25ポイントで3位となったのはNTTデータ(同3位)。味の素のポイントが文系11ポイント、理系14ポイントに対して、NTTデータも文系10ポイント、理系15ポイントと文理の比率もほぼ同じです。2社とも文系よりも理系の支持が高いことが特徴です。
 コメントを読むと、何度もセミナーを実施しており、しかもいろんな種類がありそうです。OB・OG主催のセミナーを大学ごとに実施するほか、女性限定の説明会もあるようです。男子学生が出席していると、女子学生が聞きづらい質問もあるはずでしょうし、女性限定の説明会は有効だといえます。

・単体だけでなくNTTデータグループの説明会もしてくれたため(文系・早慶大クラス)

・女性限定の説明会があり、育休や産休について質問しやすかったから(文系・上位国公立大)

・大学ごとにOB・OGが主催してくれたから(理系・旧帝大クラス)

・何度もイベントの案内をしていただき、何度も違う社員さんとお話しする機会があったから(理系・上位私立大)

外資系コンサルのアクセンチュアは「知るカフェ」活用

 5位はアクセンチュア(同13位)。外資系コンサルの代表的な企業であり、近年、働き方改革の成果もあり、上位校学生からの人気が高まっています。コメントを読むと、旧帝大クラス、早慶クラス、上位国公私立大クラスがほぼ3分の1ずつの割合になっています。
 就職偏差値が高い企業と考えられているアクセンチュアですが、セミナーはオープンな雰囲気が支持されているようです。「きれい」「丁寧な対応」「明確」などの言葉が並んでおり、学生には総じてスマートな印象があるようです。
 「知るカフェ開催」とも書かれていますが、「知るカフェ」とは上位校大学近辺に立地する、大学生と大学院生限定のカフェの一つです。企業がスポンサーになり、学生は無料で利用できます。近年はこういった新卒採用を意識したカフェが、新たな採用プロモーション手法の一つとして増えてきています。エリート企業の印象があるアクセンチュアですが、社員と学生が話すセミナーはカジュアルに運営されているようです。

・ラフな感じだったから(文系・旧帝大クラス)

・知るカフェ開催。OBの人と直接話せ、企業の印象が上がった(文系・早慶大クラス)

・キャリアプランの透明性が高かったから(文系・早慶大クラス)

・社員さんが輝いている雰囲気を感じた(文系・上位国公立大)

「紳士的に対応」の旭化成は理系トップ

 6位は旭化成(同40位)。ただし、理系では15ポイントあり、NTTデータと同数で理系ではトップとなります。
 コメントを読むと、「説明が熱い」「説明が分かりやすい」「真面目に答えてくれた」などの言葉があり、社員の人柄に対する評価が高いようです。
 印象的だったのは「紳士」という言葉です。旭化成に対して「紳士」と形容した学生が2人いましたが、他の企業に対するコメントで「紳士」という言葉は出てきていません。

・社員の方の印象が良かった(文系・早慶大クラス)

・仕事への誇りを持っているように感じたため(理系・旧帝大クラス)

・新卒予定者に対して紳士的に対応してくれたから(理系・中堅私立大)

・対応が紳士であった(理系・中堅私立大)

人柄と熱意が評価された東京海上日動火災保険

 7位は東京海上日動火災保険(同49位)。「たくさんの社員」や「社員の参加人数が多かった」とあり、多くの社員を動員するなど、説明会に対する熱い姿勢が分かります。「社員の人柄」「座談会」という言葉もありますので、多くの社員が肉声で学生に語りかけたのでしょう。

・パンフレットや会場の雰囲気が他社とは違い、こだわりがあった(文系・上位私立大)

・熱意を感じた(文系・早慶大クラス)

・先輩が内定をもらっていて、本当に少しの興味本位で行ったらすごく良かった!(文系・その他私立大)

・すべて完璧だった(文系・その他私立大)

東海旅客鉄道は「距離の近さ」が特徴

 8位は東海旅客鉄道(JR東海/同70位)。下記のコメントにあるように「学生との距離」「社員との距離」が近いと書かれており、さらに「人数が少ないのに時間が長い」とあり、社員の「仲の良さ」への言及もあります。
 セミナーは他社と比較してかなり異色のようで、こういうセミナーに参加した学生は、働くことに対する警戒感が薄らぎ、安心感が増すのではないかと思います。

・学生との距離が近かったから(文系・早慶大クラス)

・社員との距離が近く、人数が少ないのに時間が長かった(文系・早慶大クラス)

・社員の方々の印象。名前をお互いに知っており、性格なども熟知していた。総じて、仲の良さを感じた。加えて、学生への対応も良かった(文系・上位私立大)

「説明者が完璧」の第一三共

 第一三共は東海旅客鉄道と同じく8位(同97位)。評価されているのは、社員の能力です。「説明者が完璧」という評価もあります。就職人気企業ランキングでは上位にランクインすることがない同社のような企業が、セミナー好感度ランキングで上位に入ることは珍しいといえます。就職人気企業ランキングでも上位にランクインしている他社と比較すると、セミナーに参加した学生の総数では後れを取っているものとみられ、それにもかかわらず8位というのは、より上位の企業よりも純粋にセミナーが評価されているといえそうです。

・社員が面白かった(文系・旧帝大クラス)

・人事の方の対応、説明内容が非常に良かった(理系・旧帝大クラス)

・説明者が完璧だったと思う、仕事ができる人の印象(理系・旧帝大クラス)

ネットセミナーへの取り組み、複数回参加学生に対する配慮

 学生の反応を見ると、セミナーで最も重要なのは、社員や人事の説明や質問への対応であることが分かります。プログラム内容や登壇者の人選、演出の吟味も必要でしょう。今回の調査でも複数セミナーに出席して理解を深めた学生が多かったですし、1Dayインターンシップは説明会と内容が似通ってしまうことを考えると、何回も参加する学生が飽きないようにする工夫がこれまで以上に重要になるはずです。
 また、企業セミナーへの出席は、会だけでなく会場までの往復でも学生の時間を奪います。移動せずに参加できるネットセミナーや地方への出張セミナーを歓迎する学生は多くなっています。リアルなセミナーで学生に直接熱意を感じてもらうことも大切ですが、地方学生や時間に制約のある学生への対応をどうしていくのか、考える必要がありそうです。5Gの時代を迎えるに当たり、来年からすぐにとはいかないまでも、今まで以上に工夫の範囲は広がりそうです。

9割の学生は、面接官が志望度に影響

 最後に「面接官」の好感度ランキングです。面接官が志望度に与える影響は大きく、インターンシップやセミナー・説明会等で築き上げてきた志望度をさらに高めることもある反面、マイナスに作用することもあります[図表2]。「非常に影響した」学生は文系で51%、理系で42%、「影響した」は文系で40%、理系で43%、合わせると文系の91%、理系の85%が、志望度において面接官から影響を受けていると回答しています。理系は文系より影響されることがやや少ないようですが、志望理由における専門性のウエートが高いからでしょう。

[図表2]面接官の志望度への影響

 「影響した」にもプラスとマイナスがあります。親身になって話を聞いてくれる面接官に対しては志望度を上げる効果がありますが、逆に、圧迫面接などの上から目線の面接官に対しては嫌悪する学生が多く、志望度を落とす原因にもなります。

学生の話を聞こうとするJAL

 印象の良い理由で共通するのは「傾聴力」です。話を遮らず、言葉に詰まっても待ち、学生を理解しようとする面接官を評価しています。学生コメントで目立つキーワードは「笑顔」「うなずき」「よく聞いてくれた」「見てくれた」などです。どの企業に対しても同じようなコメントが見られますが、その言葉の遣い方に注意するとニュアンスの違いが分かります。

[図表3]最も印象の良かった面接官ランキング

順位 企業名 総合 文系 理系
1 日本航空(JAL) 18 18 0
2 東京海上日動火災保険 16 15 1
3 アクセンチュア 14 9 5
4 三井住友銀行 12 11 1
5 NTTデータ 10 3 7
6 全日本空輸(ANA) 9 6 3
7 三菱UFJ銀行 8 8 0
7 キヤノン 8 3 5
9 オリエンタルランド 7 7 0
9 日本郵政グループ 7 7 0
9 住友商事 7 6 1
9 IHI 7 4 3
9 東海旅客鉄道(JR東海) 7 4 3
9 日立製作所 7 3 4

※有効回答数:995名

 総合トップ10([図表3]。同率9位が6社あるので14社)の1位は、文系18ポイント、理系0ポイントの日本航空(JAL/就職人気企業ランキング9位)です。「セミナー・説明会」好感度ランキングと並んでのトップです。理由コメントの大学クラスを見ると、「その他私立大」と「上位私立大」の女性が多くなっています。
 「和やか」「話しやすい雰囲気」「圧迫など一切なく、常に優しい」などの言葉があり、柔和な人が面接し、学生の話を聞こうとしている様子が伝わってきます。

・一人ひとりの話を聞いてくださっている印象であったため(文系・その他私立大)

・柔らかな雰囲気でお話を聞いてくださった(文系・上位私立大)

・こちら側の話に興味を持って聞いてくれ、リアクションをしてくれたこと(文系・早慶大クラス)

学生を尊重する東京海上日動火災保険

 2位は東京海上日動火災保険(同49位)。「一生懸命私のことを知ろうとしてくださった」(その他国公立大)や「緊張感漂う中でもより詳しく知ろうとしてくれた」(上位私立大)と学生を理解しようとする意欲が強いと受け止められているようです。理由コメントでは、旧帝大クラスと早慶クラスの多さが目立ちます。

・笑顔でうなずきながら話を聞いてくれて、話しやすかった(文系・旧帝大クラス)

・内定承諾を待ってくれた。ぜひ来てほしいからこそ、意思を尊重すると言ってくれた(文系・旧帝大クラス)

・1人当たりに割く時間が非常に多く、また幼少期のことまで聞いてくれて、より多面的に自分を見てくれたと感じたから(文系・早慶大クラス)

ウイットある会話を学生と交わすアクセンチュア

 3位のアクセンチュア(同13位)は、旧帝大クラスと早慶クラスからのコメントが目立ち、理系も多くなっています。学生の感想は「面白い」「楽しい」とあり、ウイットのある会話だったようです。そういう対応ができる面接官に知性を感じるのでしょう。

・よく話を聞いてくれたため、逆質問への答えが面白かったため(文系・早慶大クラス)

・面接が楽しかった(理系・旧帝大クラス)

・こちらの受け答えにうなずいて聞いてくれた(文系・旧帝大クラス)

学生に寄り添い勇気づける三井住友銀行

 4位の三井住友銀行(同88位)は学生に寄り添い、就活に関するアドバイスをするなど、励ましています。

・自社以外の相談に乗っていただいたから(文系・旧帝大クラス)

・私自身の人間性を知ろうとしていただいたから(文系・旧帝大クラス)

・就活生に対しても真摯な姿勢でアドバイスをくれた。就活に対して勇気づけられることが多かったし、自身の仕事に対しての熱を熱く語られる方が多くて魅力的だった(文系・上位私立大)

・志望動機など聞かず、幼少期からの私の人間そのものを見てくれた(文系・上位私立大)

・志望動機の添削や自己分析の手伝いなど、企業研究以外にいろんなお世話をしてもらった(理系・旧帝大クラス)

鋭く優しいNTTデータ、経歴でなく人柄を知ろうとするANA

 5位のNTTデータ(同3位)はIT業界の大手企業であり、理系学生からのコメントが多くなっています。コメントを読むと、逆質問に対し丁寧に回答し、鋭いが優しく、肯定だけでなく提案する面接になっているようです。

・逆質問の回答が丁寧だったから(理系・旧帝大クラス)

・鋭い質問が多かったが、終始優しい雰囲気であった(理系・上位私立大)

・話をよく聞いて、肯定するだけでなく提案をしてくれたから(理系・上位私立大)

 6位の全日本空輸(ANA/同4位)は人物本位の面接が好感されています。学生の経歴でなく人柄を知ろうとし、言葉に詰まったときには前傾姿勢で待つなど、面接官の人間力が分かります。

・今までの経歴ではなく、人柄をよく知ろうとしてくださっているのが伝わったから(文系・早慶大クラス)

・笑顔で丁寧に対応してくださったため。言葉に詰まっても、前傾姿勢で待ってくださる(文系・中堅私立大)

笑顔を絶やさない三菱UFJ銀行、対話で面接を進めるキヤノン

 7位は三菱UFJ銀行(同78位)。「男の人は~」というコメントがありますが、おそらく女子学生のコメントなのでしょう。

・男の人は圧迫感が今まであったが、圧迫感がなく、笑顔を絶やさず、話しやすい雰囲気を作ってくれていた(文系・その他私立大)

・素の自分を評価してくれるような対応だったから(文系・旧帝大クラス)

・熱意を持ってこちらの話を聞いてくれているように思えたから(文系・中堅私立大)

 同率7位のキヤノン(同67位)は理系からのコメントが多くなっています。言葉を大事にしており、詰まっても待ち、一方的な質問ではなく対話で面接を進めていることが好感されています。

・非常にこちらの話を聞いていただける姿勢を感じた(文系・早慶大クラス)

・受け答えに対して、詰まっても待ってくれ、話しやすい雰囲気を感じたため(理系・旧帝大クラス)

・一方的な質問でなく、対話によって面接を進めようという意図が感じられたため(理系・中堅私立大)

面接官の「傾聴力」が学生の印象を左右する

 9位は、オリエンタルランド(同10位)、日本郵政グループ(同102社)、住友商事(同60位)、IHI(同108位)、東海旅客鉄道(JR東海/同70位)、日立製作所(同84位)の6社が同率で並びました。
 オリエンタルランドは、エンターテインメント企業らしく、うなずきながら柔らかい雰囲気を演出しています。

・非常にうなずいてくれたり、話を聞いてくれている感じが強かった(文系・上位私立大)

・笑顔でずっと聞いてくれて柔らかい雰囲気を出してくれた(文系・早慶大クラス)

 日本郵政グループの物腰は柔らかいが、学生をよく理解してアドバイスしています。

・こちらに対する物腰が柔らかかった。近い距離で話ができた(文系・旧帝大クラス)

・話をしっかりと聞いてくださり、最後はアドバイスもくださったから(文系・上位私立大)

 以上、「印象の良い面接官がいた会社」を紹介してきました。今回のコメントを見ると、面接官には個性があり、評価ポイントは品性、知性、鷹揚さ、優しさ、温かさとさまざまです。ただし、学生が好感する理由は「自分の話を聞いてくれているか」という「傾聴力」がキーワードになります。学生からすれば、面接は自分をアピールする場であり、当たり前と言えば当たり前ですが、「聞いてくれない」企業が多いことの裏返しにもなっていると思います。
 「いい採用」をするためには、「誰を面接官に起用するか」が大事であるとともに、人事担当に限らず、面接を担当する社員の方への面接官研修も併せて大事であると考えます。面接官が学生に与える影響が、採用活動において極めて重要なポイントであることを再認識していただければと思います。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/