講座概要
近時、労務コンプライアンス上で問題視されるのが、フリーランスや個人事業主といった業務委託契約者の労働者性判断です。とりわけ、ITエンジニアは空前の人手不足と賃金コストの増大を背景に業務委託化が進んでいます。そのため、社内に多く存在する業務委託契約者に対して直接業務を指示したり、契約外の業務をアサインしたりして「偽装請負」と認識されるケースが散見されます。また、厚生労働省では、各都道府県に需給調整事業の窓口を設置しており、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に則した指導を強めていることから、副業・兼業を認める企業や70歳までの就業機会確保措置として業務委託契約を締結する制度の導入を選択する企業は基準にのっとった対策が急務になっています。
そこで、本講座は、業務委託契約者に関する労働者性判断のポイントを平易に解説し、適法に運用することで、安心して業務委託契約者を活用し、戦力化することを目的にしています。
※WEB受講でご参加の場合は、お申込み前に必ず下記のURLをご確認のうえで、お申込みください。
https://www.rosei.jp/seminarstore/seminar/deliveru
【本講座のポイント】
①労働基準法・労働組合法における「労働者」の判断基準を知ることで偽装請負のリスクを低減できる
②業務委託と労働者派遣との区分基準(37号告示)を整理でき、行政指導への対応に役立つ
③フリーランス新法の内容を理解して取引の適正化・就業環境の整理を進められる
講座内容
Ⅰ 労働基準法における「労働者」の判断基準
1.「使用従属性」に関する判断基準
①「指揮監督下の労働」であること
・仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
・業務遂行上の指揮監督の有無
・拘束性の有無
・代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
②「報酬の労務対償性」があること
2.「労働者性」の判断を補強する要素
①事業者性の有無
②専属性の程度
③その他
Ⅱ 労働組合法における「労働者性」の判断要素
1.基本的判断要素
①事業組織への組み入れ
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性
2.補充的判断要素
④業務の依頼に応ずべき関係
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
3.消極的判断要素
⑥顕著な事業者性
Ⅲ 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)
1.労働者派遣事業と請負の区分の必要性
2.労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分基準の具体化、明確化についての考え方
3.労働基準法等の適用について
Ⅳ フリーランス・事業者間取引適正化等法
1.本法の概要
2.法律上の定義
3.義務と禁止行為
4.違反行為への対応
Ⅴ 厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」に見る今後の検討課題
1.現代における「労働者」性の課題
2.労働基準法9条について
3.昭和60 年労働基準法研究会報告について
4.働く人の法的保護との関係
5.今後の研究について
6.家事使用人について
講師プロフィール
HRプラス社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士
佐藤 広一 氏
HRプラス社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士
佐藤 広一 氏
【略歴・著書】
「HRに安心、情報、ソリューションをプラスする」をコンセプトに、人事パーソンにコミットした労務相談、IPO・M&Aシーンにおける労務デューデリジェンスおよびPMI(統合プロセス)など人事労務コンサルティングを展開している。また、複数の上場企業で社外役員を現任しボードメンバーとして労務コンプライアンスに寄与。TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』、日本テレビ『ダンダリン 労働基準監督官』 を監修、『労政時報』『週刊ダイヤモンド』『週刊エコノミスト』『ビジネスガイド』『日本経済新聞』など各種媒体への寄稿多数。労務行政をはじめ、日本能率協会、SMBCコンサルティングなどでセミナー講師としても活躍中。主な著書として『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)、『泣きたくないなら労働法』(光文社)、『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)など多数。