公開日 2009.04.28 あした葉経営労務研究所
●裁判所が整理解雇の合理性を判断する際の考慮要素である、「整理解雇の4要件」のうちの一つである。
●長年にわたって、終身雇用制度が慣行となっていた日本の労使関係の中で、整理解雇は最終手段とされてきた。企業の経営不振の打開策として、あるいは経営戦略としての合理化を行う必要性があると認められる場合であっても、その前段階として解雇回避の努力を尽くす、信義則上の義務があるとされている。
●具体的には、残業規制、昇給・賞与の停止、配転・出向、新規採用の抑制・停止、非正規従業員の雇い止め、希望退職募集等の措置を講じることが要請される。
●このような手段を経ることなく整理解雇を断行したケースにつき、信義則違反として解雇無効とした最高裁判決がある(あさひ保育園事件 最高裁一小 昭58.10.27判決)。ただし希望退職の募集によって、優秀な社員の流出や社員に無用の不安を与えるとして、希望退職募集を必ずしも必要要件としないとする裁判例もある(東洋酸素事件 東京高裁 昭54.10.29判決、シンガポール・デベロップメント銀行事件 大阪地裁 平12.6.23判決)。
●解雇回避措置として、退職金の上乗せなどの経済的利益や再就職支援措置を認める裁判例もある。(ナショナル・ウエストミンスター銀行事件 東京地裁 平12.1.21決定)
●配転・転勤等が困難な、職種限定・勤務地域限定の労働契約を締結している労働者や、出向・転籍を拒否している労働者の場合の解雇回避義務については、その他の整理解雇要件との関係の中で判断されることになる。
■関連用語
整理解雇の4要件
人員整理の必要性
被解雇者選定の合理性
手続きの妥当性(協議説得義務)
(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)