動機付け・衛生理論(二要因理論)

公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)

動機付け・衛生理論(二要因理論)(どうきづけ・えいせいりろん(によういんりろん))

アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱したモチベーション理論。このアイデアを最初に発表したのは1959年。

この主張のポイントは、仕事の満足やモチベーションを引き出す要因は、仕事に対する不満足を生み出す要因とは別物であるという点。つまり従業員の満足と不満足は、表裏一体の関係にはない、ということだ。

そのため不満足要因を取り除くだけでは、満足度やモチベーションを高めることはできない。逆に満足要因を満たしても、不満足な要素が解消するわけではない。

この一見矛盾した状況についてハーズバーグは、満足と不満足を生み出す「もと」が、全く別の欲求にあるからだと説明している。

ハーズバーグいわく、「人間には二種類の欲求がある。苦痛を避けようとする動物的な欲求と、心理的に成長しようとする人間的な欲求である」

ハーズバーグによれば、人間は危険や苦痛を回避しようとする本動物的な欲求が満たされないと、不満足になる。例えば「飢え」は、あらゆる動物にとって大きな危険の一つ。そのため飢えを回避しようとする行動は本能的な行動である。

人間の場合、飢えを回避するには、一般に金を稼ぐことが必要だと認識される。そのため十分な収入を得られないことは、大きな不満足要因になる。

このような不満足要因は職務環境に見いだすことができるため、ハーズバーグは不満足要因を「衛生要因」(hygiene factors)とよんだ。

一方満足を生み出すのは、成長したい、達成したいといった人間的な欲求である。このような欲求にかなう経験とは、何らかの達成、達成の承認、仕事そのもの、責任、成長や昇進などである。

つまり人間は、仕事の達成感や充実感といったものによって動機づけられ、やる気を高める。これらの要因は職務そのものに内在するため、これをハーズバーグは「動機づけ要因」(motivator)と名づけた。
■参考文献
『組織行動のマネジメント』ステファン・ロビンス著(ダイヤモンド社、1997)
『動機づける力』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部(ダイヤモンド社、2005)

■関連用語
モチベーション理論