公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
フォロワーシップ(ふぉろわーしっぷ)
リーダーシップ研究の第一人者ロバート・ケリーが1992年に発表した概念。成功するリーダーの陰には、リーダーを支援するフォロワーが必ず存在する。ケリーは、「フォロワーシップとは、組織の目標や課題、問題、方法などについて、独自の立場から重要な判断を行うことで、組織の成功に積極的にかかわっていくこと」だと述べている。
ケリーによれば頭脳労働者の仕事のうち、90%をフォロワーとしての立場で行っており、したがって組織の成果の90%はフォロワーとしての貢献によるものであり、リーダーとしての貢献はわずか10%しかない。
よきフォロワーは独自の考えをもって意思決定ができ(思考の独立性)、組織の命運を握る活動に積極的に参加できる(積極性)。ケリーはこの2軸でフォロワーをとらえ、フォロワーを次の5タイプに分類した。
①イエス・フォロワー
積極性が高く、批判精神が低いフォロワー。リーダーの指示に従って積極的に動くが、指示されたこと以外では動けない。また彼らはリーダーが知るべきことではなく、聞きたがることだけ話そうとする。いわゆるゴマすり・太鼓持ちタイプの部下。
②シープ・フォロワー
積極性が低く、批判精神も低いフォロワー。自らの視点で考えることをせず、上司に対しても積極的に働きかけていくわけでもない。事なかれ主義の部下がこれに当たる。
③孤立型フォロワー
積極性が低く、批判精神が高いフォロワー。もともとは優秀なフォロワーであった者が、何らかの理由で孤立したケース。そのため独自の意思決定ができ組織内で得意な地位を築いているが、役割を進んで果たそうとしない。リーダーに対して非常に批判的。
④日和見フォロワー
2軸の中央に位置するのがこのタイプである。彼らは有能な頭脳労働者だが、常に風向きを考え、無難に行動する。実務型フォロワーともいえる。
⑤スター・フォロワー
積極性が高く、批判精神も高いフォロワー。リーダーに盲従せず、リーダーが間違っていると感じたときには批判も辞さない。彼らは最も貢献度の高い部下である。
頭脳労働者はしばしばリーダーとフォロワー、両方の役割を果たすことが求められる。優れたリーダーはフォロワーシップとはまず自分が果たすべき役割だと考えている、とケリーは述べている。ケリーはスター・フォロワーこそが有望なリーダー候補であり、成功するリーダーの多くが、スター・フォロワーとしての経験を積んできていると指摘している。
■参考文献
『9つの黄金則』ロバート・E・ケリー著(PHP研究所、1999)
■関連用語
リーダーシップ理論