公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
コア・コンピタンス経営(こあ・こんぴたんすけいえい)
他の企業はまねできない、その企業ならではの強み(コア・コンピタンス)を軸に、競争優位を獲得し、さらに将来の競争優位性を築き上げる経営戦略。
1980年代から90年代にかけて日本企業の追い上げを受けたアメリカでは、有力企業をベンチマーキングし、その分析をもとに戦略を立てる経営手法が広く採用された。しかしこの戦略はあまり成功せず、1990年代には多くの企業が不採算部門のダウンサイジング、リストラクチャリング、リエンジニアリングを断行するに至った。
この風潮に対してゲイリー・ハメル(Gary Hamel)とC・Kプラハラード(Coimbatore K.Prahalad)は、「基本戦略の見直しや戦略計画のないリエンジニアリングやダウンサイジングを行っても、将来の主導権を守ることはできない」と警告を発し、自社の強みを再構築するコア・コンピタンス経営を提唱した(1990年)。特に90年代半ばからの景気回復期には新たな成長戦略が求められるようになり、2人が出版した『Competing for the Future』は世界の主要企業に大きな影響を与えた(1994年)。
ハメルとプラハラードは、コア・コンピタンスとは特定の商品や会計上の資産などではなく、その能力を核として企業が長期的に発展するような能力であると述べている。コア・コンピタンスは以下の3つの条件を備えている必要がある。
①模倣されにくく、ユニークな能力
②新しい分野・製品・サービスに応用しやすい能力
③顧客にとって価値がある能力
このような企業のコア・コンピタンスを発見し、定義することは簡単なことではない。また定義したのちに組織がコア・コンピタンスについて学習し、日々活用していかなければならない。そのためには組織改革が不可欠であるとハメルとプラハラードは述べている。
■参考文献
『コア・コンピタンス経営~未来への競争戦略』ゲイリー・ハメル、C・Kプラハラード著(日本経済新聞社、2001)