2011年08月26日掲載

使える!統計講座 【深瀬勝範】 - 第22回 人口を調べる ~国勢調査・人口推計~:使える! 統計講座

使える!統計講座(22)
深瀬勝範
 ふかせかつのり
Fフロンティア代表取締役・社会保険労務士

人口の動きは、その国の経済や社会に大きな影響を与えます。我が国の人口は、今後、どのよう推移し、私たちの生活には、どのような変化が生じるのでしょうか。今回は、人口に関する統計について説明します。

1.人口統計の種類

人口に関する統計は、「人口静態統計」と「人口動態統計」の2種類に分けられます。

人口静態統計とは、ある時点における人口およびその構造を調査するもので、総務省統計局の「国勢調査」がこれに該当します。国勢調査は、全国すべての人を対象として5年ごとに行われており、性別、年齢別、職業別の人口などのデータが得られます。

人口動態統計とは、出生・死亡などの人口の変動について調査するもので、厚生労働省の「人口動態調査」がこれに該当します。人口動態調査は、戸籍上の出生・死亡などの届け出を集計して厚生労働省が毎月作成しており、出生率や死亡率などのデータが入手できます。

また、これらの統計に基づき、総務省統計局が「現在推計人口」を、厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所が「将来推計人口」を作成しています。5年ごとに行われる国勢調査ではとらえられない現在あるいは将来の人口については、これらのデータを使います。

【図表1】人口統計の種類

2.人口構造の現在と将来

人口統計では、年齢階級を①0歳以上14歳以下(年少人口)、②15歳以上64歳以下(生産年齢人口)、③65歳以上(老年人口)の三つに分けることがあります。年齢3区分に基づいた人口の推移は[図表2]のとおりです。

【図表2】年齢3区分別人口の推移(1950~2055年)<クリックして拡大>

我が国では、年少人口が減少し、老年人口が増加する「少子高齢化」が進んでいます。この影響を受けて、生産年齢人口は、2000年頃から減少に転じました。さらに、2015年以降は老年人口に移る人が増えるため、生産年齢人口の減少スピードは速まっていきます。総人口も、2005年ごろから減少しはじめましたが、今後も、減少傾向が続くものと推測されます。そして、現在1億2691万人の総人口は、2050年ころに1億人以下となるものと見込まれます。

[図表3]は、年齢3区分の人口の割合を算出したものです。労働力の中心となる生産年齢人口の割合は、2010年は63.9%となっていますが、今後、急速に減少して、2050年には51.8%にまで低下するものと見込まれています。

【図表3】年齢3区分別人口割合

20年ほど前には12.1%であった老年人口割合は、現在23.1%にまで上昇しています。老年人口の割合は「高齢化率」とも呼ばれていますが、現在、日本は世界で最も高齢化率が高い国となっています。2050年には老年人口は39.6%に達して、国民の3分の1以上が65歳以上になるものと推測されます。

3.人口動態統計をみる

厚生労働省「人口動態調査」から、出生率と死亡率の推移を見てみましょう。

出生率とは「年間出生数÷10月1日現在日本人人口×1000」、死亡率とは「年間死亡数÷10月1日現在日本人人口×1000」で算出します(出生率や死亡率は人口1000人に対する率なので「%」表示されません)。

【図表4】出生率と死亡率の推移

出生率は1974年ごろから下降傾向が、死亡率は1983年ごろ上昇傾向が続いており、2005年には出生率が死亡率をはじめて下回りました。2009年の出生率は8.5(出生者数107万人)、死亡率は9.1(死亡者数114万人)となっています。

人口動態を見るときには、「合計特殊出生率(期間合計特殊出生率)」という指標もよく使われます。これは、その年次の15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、「1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子ども数」を示します。合計特出生率は、1975年以降2.00を下回るようになり、2009年は1.37となっています。

4.人口構造の変化に伴う生活の変化

このような人口構造の変化は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。

今後は、人口減少に伴い、国内の消費市場や労働市場が縮小していく可能性があります。したがって、日本企業は、海外拠点の設立・拡大や外国人労働者の受け入れを積極的に行っていくことになるでしょう。職場や生活の場において、これまで以上に外国人との付き合いが増えることになるものと考えられます。

また、年金や介護等の給付を受ける老年人口が増加し、それらの給付を負担する生産年齢人口が減少するため、社会保障の仕組みが大幅に見直される可能性があります。将来的には、公的年金の支給開始年齢のさらなる引き上げや介護保険の給付抑制も起こり得るため、老後を考えた資金作りや健康づくりに若いうちから取り組む人が増えるでしょう。

人口統計は、市場や生活に関する分析、推測の基礎資料として必ずと言ってよいほど使われるものです。皆さんも、それをご覧になって、これから起こり得る変化について考えてみることをお薦めします。