神垣あゆみ かみがきあゆみ/ライター
上司が部下に対して使う言葉と、部下が上司に対して使う言葉には違いがあります。上司や目上の相手に、敬語のつもりで誤った言葉遣いをしていないか、失礼のない適切な表現ができているか今一度確認してみましょう。
目上の相手に対して、失礼のない言葉遣いをするために注意すべきポイントを下記に挙げてみました。
●ポイント1:ねぎらいの言葉は上司から部下へ
上司に対して「ご苦労さま」を使っていませんか? 「ご苦労さま」は本来、目上の人から目下の相手にかけるねぎらいの言葉です。上司が部下に対して使うことはあっても、部下が上司に対して使うのは失礼にあたります。
部下から上司に対しては「お疲れさまです」「お疲れさまでございました」を用いるのが適切です。
「お世話さま」も「ご苦労さま」同様、立場が上の人から下の人に対して使うのは問題ありませんが、客先や目上の相手に対しては失礼になるので注意を。この場合は「お世話さまです」ではなく「お世話になっております」が適切な表現です。
<上司から部下へ>
昨日はご苦労さまでした。
<部下から上司へ>
昨日はお疲れさまでした。
●ポイント2:部下が上司を褒めるのはNG
褒めるとは、相手を評価することです。上司が部下を褒めることはあっても、部下が上司を褒める(=評価する)のは適切ではありません。上司に対して「お上手ですね」「よくご存じですね」という表現を用いるのは避けましょう。
同様に「さすがですね」「感心しました」「大したものですね」という褒め言葉も、部下が上司に対して使うのは不適切です。目下の者が目上の相手に使うと、相手を見下しているような印象を与えるからです。
目上の相手には安易に褒め言葉を使うよりも、相手への尊敬の念や感謝、相手から学んだことや成果を伝える方が喜ばれます。
例)
× さすが、部長は説明するのがお上手ですね。分かりやすくて感心しました。
○ 部長にご説明いただき、要点が理解できました。ありがとうございます。
●ポイント3:「できるかどうか」より「するかしないか」
上司に対して「中国語が話せますか?」「ゴルフができますか?」という質問の仕方は失礼です。あたかも、目上の相手の能力を測っているような印象を与えてしまうからです。「中国語がおできになりますか?」「ゴルフをおやりになりますか?」と、丁寧な言い回しにしても失礼であることに変わりはありません。
目上の相手に対しては、「できるか、できないか」能力を問う質問の仕方ではなく、「するか、しないか」という経験の有無や事実を尋ね、確認することがポイントです。
例)
× 工場長は中国語がおできになりますか?
○ 工場長は中国語をお話になりますか?
《ワンポイント》上司に使わない方がよいNG表現
「助かりました」は、相手へのねぎらいを含む表現なので、部下が上司に使うのは好ましくありません。上司の力添えに対しては「ありがとうございました」と感謝の意を伝えましょう。上司からのアドバイスに対して「参考になりました」と返すのもNG。その場合は「勉強になりました」の方が実感がこもっていて、相手に伝わります。
神垣あゆみ(かみがきあゆみ)Profile ライター 広島を拠点に官公庁冊子や企業の記念誌、社内報、PR誌の編集・制作に携わる傍ら、メールマガジン「仕事美人のメール作法」を配信。『メールは1分で返しなさい!』(フォレスト出版)など、メールマナー関連の著書多数。 |