Dr.カワシタの誌上健康診断・心得帳(7)
河下太志 かわしたふとし
リクルートグループ 統括産業医
その昔、BMIなる数値は、知名度が低かったのですが、この数年、急に知名度がUPした気がします。さて、このBMIとはいったい何者なのでしょうか?
■BMIとは
~『痩せの基準 BMI』から『肥満の基準 BMI』への変貌~
そもそも、BMIとは、一言で言うと、体格を示す値ということになります。
どうやって計算するの? と言うと、「体重(kg)÷身長(m)2」です。ポイントは、身長の2乗であることと、身長の単位をcmではなく、mにするところです。
もともとは、BMIは、痩せすぎを判定する値であったことをご存じでしょうか?
人間は、元来やせ気味でした。よほど裕福な階層の人(王様とか殿様)でなければ、太ることはなかったので、BMIは肥満のためというよりも、痩せすぎとか、子どもの栄養・発達具合を見るための値でした。
ところが、先進諸国では、痩せすぎて健康を脅かされる人よりも、太りすぎて健康を脅かされる人が増えてきました。そこで、BMIを「痩せ」ではなく、「肥満」度合いを見る値としてどうだろう? といろいろ調べたところ、やはりBMIが高い人は、高血圧や糖尿病などを起こしやすいことが示されたのです。そこで近年、BMIが高い人は、「不健康である」とされ始めたわけです。
■自分のBMIを知りましょう ~25という数字の境界線~
さあ、計算機で、自分のおおよそのBMIを計算してみましょう!
『体重』÷『身長』÷『身長』ですよ。
さあ、どうでしょうか?(ちなみに、筆者は25.0なので、ぎりぎり肥満で、あまり偉そうなことは言えません。一時は、29を超え2度の肥満になりかけた頃からすれば、25.0はかなり頑張っているのですが…)
BMIの判定はどうなっているかというと、外国の方と、日本人は体つきが違いますから、各国でBMIによる肥満の分類は異なります。
日本では、BMI25以上は、肥満とされています。
さて、このBMIですが、最近では、健康診断の時には、身長・体重が測定されるので、ほとんどの医療機関でBMIが算定されて、結果用紙に印刷されて戻ってきます。ですが、そのBMIが高いからと言って、これまで話題にしてきた「血圧」や「貧血」などのように「病気なので、病院に行ってください!」と言えるかというと、極端な肥満者を除いて、なかなか肥満の治療とはなりません。
■BMIをとりまく現状 ~BMIを改善するのは、あなた自身です~
「肥満が原因で、高血圧や糖尿病になったから、痩せなければならない」とは、本人も主治医も感じていることは間違いありません。しかし、現状では、血圧や血糖値のコントロールさえしていれば、ダイエットについて主治医がうるさく言うことはあまりありませんし、病院でダイエットプログラムを組んでくれるわけでもありません。つまり、肥満が原因で、生活習慣病になっているにも関わらず、根本的原因であるダイエットには手を下さず、対症的に薬物コントロールを行っていることが多いのです。
あるいは、脂肪肝で病院に行っても、よほどひどくない限りは、「(自分で)痩せるように!」と一喝され、病院を後にするということも少なくありません。病院も、肥満では治療費が取れないので無理もありません。
そこで、メタボ健診・保健指導が始まったわけです。無論、ここでも、手取り足取りダイエットをさせてくれるわけではなく、ダイエットのサポートを行うだけです。しかも、現時点では、治療している人は保健指導の対象とはならないので、ここでもまた、ダイエットの機会を失うわけです。しかし、高血圧や糖尿病を一つ抱えると治療費は、年間10万円からスタートします。下手すると、心筋梗塞や脳梗塞にもなりかねません。そうなると、医療費はいくらかかるか分かりません。コスト面からみても、BMI管理…お得な話だと思いませんか?
■ホントに危険なBMI値 ~30以上は、アウト~
もちろん25以上は肥満なのですから、ダイエットすべきです。しかし、筋肉質なスポーツマンの人たちも含まれます。そこで、今回のレッドゾーンは、ズバリ『30』です。
『BMI 30』以上の人は、高血圧や糖尿病でなくても、近い将来何がしかの病気を抱えるのは間違いないでしょう。
さあ、健診結果をみて、計算して、BMI30以上の方は、今すぐダイエットのための施策を講ずる必要がありますよ。
次回は、定期健康診断の項目だけでも最低3項目ある「知ってそうで、知らないコレステロール」です。