2012年03月23日掲載

使える!統計講座 【深瀬勝範】 - 第35回 男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の運用実態を調べる ~雇用均等基本調査~:使える! 統計講座

使える!統計講座(35)
深瀬勝範
 ふかせかつのり
Fフロンティア代表取締役・社会保険労務士

「うちの会社は女性を活用できていない」「育児休業制度が世間水準よりも見劣りする」などと思ったことはありませんか。そういうときには、厚生労働省の「雇用均等基本調査」を見てください。これを見れば、男女の雇用管理の実態や育児介護休業法の運用実態が分かります。

1.雇用均等基本調査とは

「雇用均等基本調査」は、男女の雇用均等問題にかかる雇用管理の実態を把握することを目的として、2007年度以降、厚生労働省が毎年実施している調査です(2006年度以前は「女性雇用管理基本調査」として実施されていました)。

これまでの調査は、次の内容で実施されています。

[図表1]雇用均等基本調査の調査内容

近年、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正が度々行われてきましたが、この調査は、それらの法令の企業における運用実態について調べています。したがって、この調査を見れば、自社の男女雇用機会均等法や育児・介護休業法への対応が世間と比べて遅れていないかどうかをチェックすることができるのです。

2.コース別雇用管理制度の見直し状況を見る

2010年度の「雇用均等基本調査」では、コース別雇用管理制度の見直し状況に関する調査が行われました。

[注]コース別雇用管理制度:労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる配置・昇進、教育訓練等の雇用管理を行うシステム。基幹業務等を行う「総合職」、定型的業務に従事する「一般職」のコース区分をし、前者は転居を伴う転勤があるものとする――といった在り方がよく見られた。

2007年4月から施行された改正男女雇用機会均等法において、「コース別雇用管理における『総合職』の労働者の募集または採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること」が、合理的な理由のない限り「間接差別」として禁止されましたが、この調査を見れば、法改正に対して企業が実際にどのように対応したかを調べることができます。

[図表2]は、コース別雇用管理制度を導入している企業(規模30人以上)のうち、2010年度以前の3年間に制度の見直しを行った企業数の割合を示したものです。約80%の企業がコース別雇用管理制度の見直し・検討を行っておらず、法改正への対応が遅れ気味であることが分かります。

[図表2]コース別雇用管理制度の見直し状況(クリックして拡大)

見直しの内容を見ると、「各コースの処遇の見直し」が37.4%と最も多く、以下、割合が多い順に「コース区分の見直し」(26.6%)、「コースを分割または統合」(24.3%)となっています。

なお、「各コースの処遇の見直し」を行った企業数割合が多いのは、この調査が行われる3カ月前に厚生労働省が発表した「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」(2010年10月)において、「コース間の賃金体系の差異については、それが職務内容等に見合った合理的なものとなるよう十分考慮する等により、どのようなコース区分を選択した者についてもその能力を存分に発揮して働き続けられる環境づくりに取り組むことが望まれる」というポイントが示されたことも影響しているものと考えられます。

コース別雇用管理制度を導入している会社は、このような調査結果を参考にして、自社の制度の見直しを行ってみるとよいでしょう。

3.女性管理職の割合を見る

昨今、日本企業において女性の積極的な活用が進められていますが、雇用均等基本調査では、女性活用の実態を示す指標として「管理職に占める女性の割合」も調べています。

[図表3]女性管理職割合の推移・規模別女性管理職割合(2009年度/クリックして拡大)

2009年度の調査結果には、1988年度以降の「管理職に占める女性の割合」の推移が出ており、これを見ると、2000年度以降、管理職に占める女性の割合が大きく上昇していることがわかります。ただし、2009年度においても、女性管理職割合は「係長相当職」が11.1%、課長相当職が5.0%、部長相当職が3.1%となっており、どれも高い数字とはいえません。また、この割合は、企業規模により大きく異なるもので、例えば部長相当職の女性割合は、「30~99人」の規模では5.1%ですが、「5000人以上」の規模のそれは1.2%と低くなってしまいます。

企業規模が大きい企業ほど管理職数そのものが多くなることを考えれば、このような傾向は当然という見方もできますが、それにしても、大企業の女性管理職の割合はいまだに低い状態にあります。今後、規模が大きい会社ほど、女性活用を積極的に進めていくことが必要となるでしょう。

自社における女性管理職割合を算出し、この調査結果との比較を行えば、自社の女性活用に対する積極度合いを見ることができます。みなさんも、一度、試してしてみてください。

雇用均等基本調査では、この他にも、育児介護休業制度の運用状況に関する調査結果も公表されています。こういったデータを参考に、自社の制度をチェックしてはいかがでしょうか。