2012年05月10日掲載

使える!統計講座 【深瀬勝範】 - 第37回 外国人雇用の現状を見る ~外国人雇用状況の届出状況~

使える!統計講座(37)
深瀬勝範
 ふかせかつのり
Fフロンティア代表取締役・社会保険労務士

 日本企業にとって、もはや「外国人雇用」は珍しいことではなくなりました。外国人雇用の現状を把握したいときには、厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況」を見ましょう。そこには、外国人を雇用している事業所や外国人労働者に関するさまざまなデータが掲載されています。

1.「外国人雇用状況の届出状況」とは

 近年、わが国で働く外国人労働者の数が増加しています。このような中、2007年10月から、すべての事業主は、外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇い入れまたは離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間などを厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられました。
 この届け出をもとに、外国人雇用の現状をまとめたものが「外国人雇用状況の届出状況」です。集計は毎年10月末現在で行われ、翌年1月下旬に、その結果が厚生労働省のウェブサイトに掲載されます。ここから、次のデータを見ることができます。

(1)外国人労働者を雇用している事業所数
(2)国籍別・在留資格別の外国人労働者数
(3)都道府県別・産業別・事業所規模別にみた外国人雇用事業所の特性
(4)都道府県別・産業別・事業所規模別にみた外国人労働者の就労実態

2.外国人雇用状況の推移を見る

 それでは、ここで示されているデータを、具体的に見ていきましょう。
 [図表1]は、外国人労働者を雇用する事業所数と外国人労働者数の推移を示したものです。


[図表1]外国人を雇用する事業所数、外国人労働者数の推移

 2011年10月末現在、外国人労働者を雇用する事業所数は11万6561事業所、外国人労働者数は68万6246人で、2008年と比較すると、事業所数は約1.5倍、労働者数は約1.4倍と大幅な増加となっています。ただし、前年増加率で見ると、2011年は事業所数、労働者数ともに、それまでよりも低くなっています。これは、同年3月に発生した東日本大震災の影響により、国内の事業活動が低調になったことや外国人労働者の流入が減少したことが関係しているものと考えられます。

 外国人労働者の国籍を見ると、中国、ブラジル、フィリピンなどの構成割合が高くなっています。2008年以降の推移を見ると、「フィリピン」の割合が上昇し、「ブラジル」や「G8+オーストラリア+ニュージーランド」の割合が下降傾向にあります。「その他の国」の割合が上昇していることから、さまざまな国から労働者が流入するようになってきていることが分かります([図表2]参照)。


[図表2]国籍別外国人労働者数の推移

3.外国人労働者を雇用している事業所の特性を見る

 [図表3]は、産業別、規模別に見た外国人雇用事業所の割合です。これを見ると、産業別には「製造業」「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」が、また、規模別には「30人未満」「30~99人未満」の事業所が、外国人労働者を多く雇用していることが分かります。今や、あらゆる産業で、また規模が小さい事業所であっても、外国人労働者を雇用している実態がうかがえます。

 少子高齢化が進むわが国では、すでに労働力人口の減少が始まっています。今後は、事業活動に必要とされる労働力を確保するため、より多くの事業所において、外国人雇用が積極的に行われていくことになるでしょう。


[図表3]産業別・規模別 外国人雇用事業所割合

4.外国人を雇用するときの注意点を調べる

 「外国人雇用状況の届出状況」は、雇用状況のデータをまとめたものですから、雇用管理の内容に関する情報は掲載されていません。外国人雇用の注意点を知りたいときは、厚生労働省の「外国人雇用対策」のサイトを見るとよいでしょう(サイトURLは本記事下部を参照)。

 このサイトでは、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」や「外国人雇用のルールについてのパンフレット」など、外国人労働者を雇用するときに目を通しておくべき資料が掲載されています。

 また、法務省入国管理局のウェブサイトには、外国人労働者の在留資格に関する情報などが掲載されています。外国人労働者を受け入れている事業所は、このサイトも、定期的にチェックするとよいでしょう(なお、2012年5月7日から「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」が始まりました。外国人の研究開発者や経営管理者を受け入れている事業所は、この制度の内容を理解しておくことが必要です)。

 外国人労働者の雇用に当たっては、統計データから世間動向を把握し、さらに、関係省庁のサイトからさまざまな情報を入手して、適切に対処するよう心掛けましょう。

・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」(平成23年10月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000020ns6.html

・厚生労働省「外国人雇用対策 Employment Policy for Foreign Workers」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html

・出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/index.html

・出入国在留管理庁「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_index.html

Profile

深瀬勝範(ふかせ・かつのり)

社会保険労務士

1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、2001年より現職。営利企業、社会福祉法人、学校法人等を対象に人事制度の設計、事業計画の策定等のコンサルティングを実施中。