2013年03月21日掲載

会社を伸ばす「すごい若手」の育て方 - 第12回・完 若手社員の1年の成長を振り返ろう

 


常見陽平 つねみ ようへい
株式会社クオリティ・オブ・ライフ フェロー
HR総合調査研究所 客員研究員

 卒業シーズンです。何度かリニューアルしつつ続いてきたこの連載も、ついに最終回。今回は、「若手社員の1年の成長を振り返ろう」をテーマにお届けします。新年度をなんとなく迎えてはいけません。上司・先輩とともに、ちゃんと振り返り、成長につなげましょう。

■成果はシートで振り返る

 突然ですが、新人、若手社員に限らず、皆さんの勤務先では、成果に対する振り返りはどのように行っているでしょうか? 少し大きな会社や、人材マネジメントに熱心に取り組んでいる企業では、期の始めにこの1年間で取り組む仕事、目標を上司と面談しつつ決めミッションシートなどに落としこみます。これをもとにして、期の終わりに達成度を確認し、面談するわけです。シートがあれば、具体的な振り返りがしやすいです。
 企業として、このようなシートが導入されていないことも多いでしょう。しかし、日々の行動をぶれないものにするためにも、PDCAサイクルを回せる人材に育てるためにも、具体的な振り返りを行うためにも、若手社員だけでもこのようなシートは使用したほうがいいと思います。
 少しだけ話がずれますが、若手社員を劇的に育てようと思ったら、このように紙を活用したコミュニケーションをオススメします。日々の優先順位付け、進捗管理、アウトプットの質の管理など、何においても、紙に書き出させると、若手社員の頭の中も整理できますし、文書によるコミュニケーションスキルが上がります。アドバイスも具体的になります。

 

 ただ、シートを使おうと、使わまいと、成果に対する評価で陥りがちなのは、評価される人も、評価する人も、感覚的に振り返ってしまうことです。なんとなく、普段の思い込みだけで互いに語ってしまうのです。
 評価というのは、成長のための絶好の機会です。定量的にも定性的にも、結果についてもプロセスについても何が良くて、何がダメだったのかを具体的に振り返りたいところです。数字へのこだわりも、ここで教育しておきたいところです。
 例えば、やや残酷な見方ですが、毎日、遅くまで一生懸命頑張っている若手社員は、本当に頑張っているといえるのでしょうか? 実は効率が悪く、ダラダラやっているだけということもあるわけです。でも、本人は一生懸命のようなので、なかなか注意できない。ここまで読んできて気づいたかもしれませんが、こうした状態には上司・先輩であるあなたにも責任があるのですけどね。
さらには、これは日常的に行うべきことでもありますが、結果に対する理由を説明できるかどうかもポイントです。たとえ、目標を120%で達成していたとしても、その理由を明確につかんでいなければ意味がないわけです。
 シートをもとに、しっかりと面談時間をとり、達成度と成長度を確かめつつ、具体的に褒めること、叱ることを実施したいところです。
 なお、1年間の振り返りですが、特に新人の場合は同期同士で部門を越えて集まり、振り返る研修を実施すべきです。同期を見て、刺激を受けたり、逆に成長を実感したりすることができるわけです。

■上司や教育担当こそ、反省する

 もう一つ、気をつけたいポイントがあります。それは、「上司や教育担当ほど反省しなければならない」ということです。
 なぜ、その若手は順調に育ったのか? 逆に、あの若手は低迷してしまったのか? ここにはちゃんと理由があります。その一つは、まさに皆さん上司や先輩社員のマネジメントによるものです。前述したとおり、若手社員が毎日、遅くまで仕事しているのは、彼らが仕事ができなくて効率が悪いからでしょうか? それとも、愚直なガンバリズムからでしょうか? 実は、あなたの仕事の任せ方、サポートの仕方、教え方に問題があるかもしれませんよ。
 教育担当こそ反省をするべきです。トヨタ社員から教えてもらった、私が大事にしている言葉があります。それは、こうです。
 人を変えるには、「人を変える人」を変える。
 なんだかトンチみたいですが、これが人材育成の本質だと思っています。若手社員だけでなく、上司・先輩も進化しましょう。

 人が人を育てる。
 こんな連鎖が、世の中を動かしてきたのだと信じています。その連鎖が弱いものになっていることが、今の企業社会の問題だと思っています。もちろん、育てる余裕がないこともよく分かりますが。
 育てる連鎖を復活させましょう。

 ご愛読、ありがとうございました。

 

常見陽平(つねみ ようへい)Profile
株式会社クオリティ・オブ・ライフ フェロー
HR総合調査研究所 客員研究員

北海道出身。一橋大学卒業後、株式会社リクルート入社。大手メーカーで新卒採用を担当後、株式会社クオリティ・オブ・ライフに参加。その後、退社し、フェローに。著書に『自由な働き方をつくる 「食えるノマド」の仕事術』(日本実業出版社)、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)『「意識高い系」という病』(ベスト新書)『女子と就活』(白河桃子氏との共著 中公新書ラクレ)『「キャリアアップ」のバカヤロー』(講談社+α新書)『くたばれ!就職氷河期』(角川SSC新書)