2014年12月01日掲載

人事総務担当者のための今月のお仕事 - 第3回 賞与支払届の提出と保険料の控除


永井 由美 ながい ゆみ 永井社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士

1.賞与とは

 賞与とは、名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、①支給回数が年3回以下のもの(年4回以上支給の場合は標準報酬月額の対象となる)、②その他定期的でなくても一時的に支給されるものを指し、金銭(通貨)に限らず現物で支給されるものも含む。

2.賞与の支払いに伴う手続き

 賞与を支払った場合は5日以内に「賞与支払届」(健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届)に「賞与支払届総括表」(健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届総括表)を添付し、(事業所の所在地を管轄する)年金事務所に提出する必要がある。「賞与支払届総括表」については、賞与の支払いがなかった場合も提出しなければならないため注意が必要である。

[1]賞与支払届の記入に伴うチェックポイント(詳細はこちらの記載例を参照)










[2]賞与支払届総括表の記入に伴うチェックポイント(詳細はこちらの記載例を参照)



  ※登録された賞与支払月の翌月までに届出がないときは、翌々月に「催告状」が送付される。





3.賞与の支払いに伴う保険料控除

[1]保険料の計算方法
(1)社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)
 各被保険者の標準賞与額(実際に支給した賞与額から1000円未満の端数を切り捨てたもの(上限額設定あり)に毎月の保険料率と同じ保険料率を掛ける。

[図表1]標準賞与額の対象となる賞与

対象となるもの 対象とならないもの

・賞与(役員賞与を含む)、ボーナス、一時金、期末手当、決算手当、繁忙手当、勤勉手当、もち代、年末一時金など賞与と同一性質を有するもので、支給回数が年3回までのもの

・寒冷地手当・石炭手当・薪炭(しんたん)手当など賞与と同一性質を有するもので、支給回数が年3回までのもの

・自社製品など現物で支給されるもの

・左記の賞与等で年4回以上支給されるもの

・恩恵的に支給される結婚祝金・病気見舞金・災害見舞金など

・出張旅費・大入袋・退職金・解雇予告手当・年金・恩給・株主配当金・健康保険の傷病手当金など


■健康保険・介護保険
(ア)40歳以上65歳未満の被保険者(介護保険第2号被保険者)
  標準賞与額×保険料率(介護保険料率を上乗せした率)
(イ)上記(ア)の被保険者以外の被保険者
  標準賞与額×保険料率(介護保険料率を含まない率)
   ※標準賞与額の上限額:年度(毎年4月1日から翌年3月31日)の累計で540万円。
   上限額を超える額には保険料がかからない。
■厚生年金保険
 標準賞与額×厚生年金保険料率
  ※標準賞与額の上限額:1カ月につき150万円
  (同じ月に2回以上支給された場合は合算して150万円)

(2)雇用保険
 実際の支給額(税引き前の総支給額)に毎月と同じ保険料率を掛ける。
  ※賞与の額には、社会保険の標準賞与額のような上限額は設けられていない。

[2]保険料率
(1)健康保険・介護保険
 協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに異なる(具体的にはこちら)。40歳以上65歳未満の被保険者には介護保険料率(平成26年度は1.72%)が上乗せされる。
  ※健康保険組合の保険料率はそれぞれの健康保険組合の定めによる。
(2)厚生年金保険(平成26年9月~平成27年8月)
           一 般  … 17.474%(1000分の174.74)
 坑内員・船員  … 17.688%(1000分の176.88)
  ※厚生年金保険料率は毎年9月に0.354%(船員・坑内員は0.248%)ずつ引き上げられ、
   平成29年9月以降は一般、坑内員・船員ともに18.300%で固定される。
(3)雇用保険(平成26年度:労働者負担分)
 一般の事業 … 0.5%(1000分の5)
 農林水産・清酒製造・建設の事業 … 0.6%(1000分の6)
  ※事業主負担分の雇用保険料率は、一般の事業0.85%、
   農林水産・清酒製造0.95%、建設の事業1.05%。

[3]賞与からの控除・納付
(1)社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)
 事業主は、賞与から被保険者負担分の保険料(協会けんぽの場合は事業主と被保険者とが折半負担のため折半した額。健康保険組合の場合はそれぞれの健康保険組合の定めによる)を控除し、それに事業主負担分を加えて毎月の保険料と一緒に翌月末までに納付する。
(2)雇用保険
 賞与に労働者負担分の保険料率をかけて算出した額を、賞与を支払う都度、被保険者の賞与から控除する。保険料の申告・納付は、事業主負担分と合わせて年度更新により行う。

 以上をまとめると、[図表2]のとおりとなる。

[図表2]賞与の支払いに伴う保険料控除

区  分 健康保険
(介護保険)
厚生年金保険 雇用保険
計算の基となる金額 標準賞与額 実際の支給額
保険料率 加入先により異なる
(※1)
17.474%(※2) 0.5%(※3)
端数処理 1円未満の端数:50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げ
賞与から控除する額 「標準賞与額」に上記保険料率を乗じて算出した額を折半した額(※4) 「実際の支給額」に上記労働者負担分の保険料率を乗じた額
納付時期 事業主負担分と合わせて賞与を支給した月の翌月末まで(※5) 事業主負担分と合わせて年度更新時

 ※1 協会けんぽは都道府県単位の設定、健康保険組合は各健康組合の定めによる。また、40歳以上65歳
   未満の介護保険第2号被保険者には介護保険料率を上乗せした率が適用される。

 ※2 平成27年8月までの一般被保険者の保険料率。
 ※3 平成26年度の労働者負担分の保険料率。
 ※4 協会けんぽの場合。健康保険組合は各健康保険組合の定める負担割合による。
 ※5 毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の納入告知書で通知がある。

[4]チェックポイント

(税引き前)の支給額を基に計算しているか?



  → 退職時期によって「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の保険料控除、
   「賞与支払届」
の提出が異なるので注意が必要([図表3]参照)
  ※雇用保険料は退職した時期にかかわらず賞与から控除する。
[図表4]参照)


[図表3]退職月に賞与を支払った場合の保険料


[図表4]社会保険料の控除に変更がある被保険者の年齢一覧

4.Q&A

Q 「賞与支払届」「賞与支払 総括表」が届きません。

A 「賞与支払届」「賞与支払届総括表」は、賞与支払予定月の前月に送付されるものなので、賞与支払予定月を登録していない場合は送付されません。年金事務所に送付依頼または日本年金機構のホームページからダウンロードすることによって入手できます。
 なお、今後送付を希望する場合の賞与支払予定月の登録は、「賞与支払届総括表」「事業所関係変更(訂正)届」の提出等により行うことができます。

Q 「賞与支払届」「賞与支払届総括表」を紛失(破損等)してしまいました。
A  届かない場合と同様、年金事務所に送付依頼するか日本年金機構のホームページからダウンロードしてください。

Q 「賞与支払届」に記入されていない被保険者がいます。
A  被保険者の氏名等の基本情報を印字した届出用紙は、賞与支払予定月の前々月の情報を基に作成しているため、届出用紙に氏名等が印字されていない方がいる場合があります。その場合は、印字されていない欄に手書き等で追記してください。

Q  従業員が多くて記入が大変です。
A  届出用紙によるほか、電子媒体(フロッピーディスク、MO、CDまたはDVD)による提出が可能です。提出方法には二つの方法があります。
  ①自社開発または市販ソフトの届出システムを使用する場合(詳細はこちら
  ②日本年金機構が提供する届書作成プログラムを利用する場合(詳細はこちら
 あらかじめ事業所に勤務している被保険者の情報を収録したCD(=「ターンアラウンドCD」)の送付を希望するときは「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届」を管轄の年金事務所に提出してください。(届書中の丸番号22または丸番号24欄の「CD要 2」に○を付けて提出してください。(詳細はこちら))

Q  同月内に2回以上賞与を支給しました。
A  その月の最後に支払った日を支払日として合算した金額を一括で届け出ます。

永井 由美   ながい ゆみ
永井社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
ホームヘルパー2級 福祉住環境コーディネーター

平成18年永井社会保険労務士事務所開業。年金事務所年金相談員、労働基準監督署労災課相談員、雇用均等室セクシャルハラスメント相談員、両立支援コーディネーターの経験を活かして、講師、年金相談、労務管理を中心に活動中。親の介護を通じて介護保険に興味を持ち、千葉市の介護保険関係審議会委員(平成19~22年度)を務める。著書「社労士業務必携マニュアル」(共著・日本法令)
◆永井社会保険労務士事務所   http://119nagai.com/

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