自分の価値を最大限に発揮するための
セルフ・ブランディング技術
~グローバル社会で生き残れる人材の条件~
金塚ゆきこ かなつか ゆきこ 株式会社グロリアーレ 代表取締役社長 才能ブランディング・コンサルタント 株式会社デジタル・フロンティア(当時株式会社TYOグループ会社)の取締役としてアジアでトップのプロダクションの成長を支える。経営者としての経験を活かしビジネスリーダー、働く女性を支援するため2010年、株式会社グロリアーレを設立。200人の成功したリーダーに関わり、才能(潜在意識)を発揮することの重要性に気づき東洋哲学、心理学、コーチング、カウンセリングを学び「才能ブランディング」をコンテンツ化。"人はみな生きた芸術"をコンセプトに、経営幹部、若手リーダーや働く女性の才能をブランディングしキャリア、転職、起業・人間関係での自己実現をサポートする。現在は才能ブランディング・コンサルタントとして活動中。 株式会社グロリアーレ http://gloriare.co.jp/ |
企業のグローバル化に伴って変わりつつある
プロフェッショナルの定義とは
「企業に所属する人は、5、6年後には、何かしらのプロフェッショナルとして自律しなければならない」
近年、このようなビジョンを持つ経営者の数は確かに増えてきている。しかし、果たしてどれだけの人が、企業名や肩書きを抜きにして「私は○○のプロフェッショナルです」と自信を持って言い切れるのだろう。
そもそもプロフェッショナルとは、どのような人を指す言葉なのだろうか。多くの人が、プロフェッショナルとは「多くの経験とそれらに裏付けされた深い知識を身につけた専門家」と認識している。そのため、ある一つの専門分野に長期間関わることがプロフェッショナルだと思い込んでいる人も少なくない。
しかし、そうしたプロフェッショナルの定義は、過去に属するものである。少なくともグローバル化の波の中で、もしあなたが専門的な知識や経験のみを武器とするなら、早々に超えられない壁にぶつかってしまうだろう。
ボーダーレス化が進み複雑に進化していくビジネスの環境下で、私たちに求められる能力は、自己完結型のプレーヤー的能力ではない。多種多様な人たちと深いレベルで共鳴し、お互いの価値を高め合いつつ、かつ、高いパフォーマンスを維持しつづける能力だ。
ブレない軸をつくること
グローバル化の波の中で、私たちには、同時に多くの問題と向き合い、短時間で解決し、瞬時に多くの、正確な決断を下すことが要求されている。しかし、同時に、目の前で起きる出来事を、ありのままの姿で認識することは難しい作業でもある。過去の経験や思い込み、願望といったものが私たちの認識を妨げる。ケンカ、論争といったコミュニケーションをめぐる問題の多くは、私たちが無意識の間に勝手に現実を歪めているために起こっている。
しかし一方で、私たちがものごとを正しく認識しようと努めれば、挫折や失敗からも意味を見いだし、学びに変えることができるのではないだろうか。
発明王エジソンは、電球を発明するまで1万回失敗した。しかし、彼はそれを失敗とは言わなかった。「失敗ではない。うまくいかない方法を1万通り発見しただけだ」――代わりに彼はそう言ったという。
また、パナソニックの創業者である松下幸之助は、毎日「偏見なく素直にものごとを見られるように」と願ったという。しかし、松下幸之助の例を挙げるまでもなく、偏見なくものごとを見ることはリーダーにとって大事な価値である。出来事を正しく認識し、正確な判断を下すためには、一体何があなたの価値判断を妨げているのか、あなたならではの価値判断を作り上げているものは何か――を知っておかなければならない。これは、自分のブレない軸を探求することでプロとしてのアイデンティティを確立する「内的なセルフ・ブランディング」とも言い換えることができる。
正しい認識を可能にするために必要な要素をいくつか挙げてみよう。
(1)感情に振り回されないこと
起こる出来事の一つ一つに振り回され、その度に興奮したり、あるいは、憂鬱(ゆううつ)になって落ち込んでしまえば、あなたは冷静な判断を下すことはできないだろう。しかし、たとえどんなことが起きてもニュートラルな精神状態を保つことができれば、あなたは偏見なくものごとを判断することができる。
(2)あなたの感じ方を自覚すること
あなたはどういった出来事から満足や楽しさ、充実感を得て、また、どんな出来事に不快や苦痛を感じるのか。それらを冷静に認識することができるようになれば、まず、あなたは苦痛に感じる出来事から距離を置くことができるようになる。今までそうであったようには苦痛を感じなくなるだろう。そしてそれは、苦痛を快感に変えるための最初の一歩である。
(3)適切に"経験の管理"を行うこと
見たこと、読んだこと、聞いたこと、感じたこと、考えたこと、そして、うまくいったこと、失敗したこと。あらゆる経験は、目の前にある問題について考えるときの材料となる。豊かな経験は私たちに柔軟な判断を可能にするだろう。
そのためには、それらの経験の管理の方法は適切なものでなければならない。もしも、その経験が、恐れ、不安、後悔、羞恥心といったネガティブな感情と結び付いたままで保存されていたら、それらはトラウマとなってあなたの可能性を制限してしまう。
(4)自分の"情熱のありか"を知っておくこと
誰しもがモチベーションの源泉を持っている。しかし、その存在を正しく認識できている人は少ない。その源泉を探し当てるためには、あなたの人生の歩みや、あなたの毎日について、一度立ち止まって振り返って見る必要がある。子供のときから夢中になってやってしまうことや、仕事の上でも努力なくやれてしまうことがきっと見つかるだろう。自分が何からモチベーションを受けているか、きちんと知っておく必要がある。
自分の価値判断の材料がどうやって形成されているのかを正しく認識し、感情を意識的にコントロールし、冷静な判断を努めれば、外的環境が変化してもブレない軸を持つことができる。そして、そのような内的なセルフ・ブランディングの成功は、創造力を形にし、関わる人たちとの質の高い関係構築を可能にするだろう。そのことによって、自分と他者の欲求を冷静に認識し、適切に応えられるリーダーへの道が切り拓かれるだろうと考える。