産業医制度

公開日 2017.7.21 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・ 社会保険労務士)

産業医制度(さんぎょういせいど)

 事業場において労働者の健康管理などを行う者として、必要な知識、能力を有する医師を選任する制度。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならないとされている(労働安全衛生法13条)。産業医の人数は、労働者数50人以上3000人以下の事業場は1名以上、3001人以上の事業場は2名以上選任することが必要で、また常時1000人以上の労働者を使用する事業場および多量の高熱物体を取り扱う業務や有害物を取り扱う業務などに常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、専属の産業医を選任しなければならない(労働安全衛生規則13条)。
 産業医の職務は、次の事項で医学に関する専門的知識を必要とするものである(労働安全衛生規則14条)。

(1)健康診断の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること

(2)面接指導などの実施、およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること

(3)心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)と面接指導の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること

(4)作業環境の維持管理に関すること

(5)作業の管理に関すること

(6)上記のほか、労働者の健康管理に関すること

(7)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること

(8)衛生教育に関すること

(9)労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること

 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理などについて必要な勧告をすることができる。また、少なくとも毎月1回(※)作業場などを巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないものと定められている。

※事業者から毎月1回以上産業医に所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合は「毎月1回以上」から「2カ月以内ごとに1回以上」へ変更可能。

 2017年6月6日、労働政策審議会から「働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医、産業保健機能の強化について」との建議がなされ、そこでは、今後の産業医・産業保健機能の強化に向けた対策として、次の事項が挙げられている。
①事業者における労働者の健康確保対策の強化

・長時間労働者への就業上の措置に対して産業医がより適確に関与するための方策

・健康情報の事業場内での取り扱いルールの明確化、適正化の推進

・労働者が産業医・産業保健スタッフに直接健康相談ができる環境整備など

②産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備

・産業医の独立性、中立性を強化するための方策

・産業医がより効果的に活動するために必要な情報が提供される仕組みの整備

・産業医が衛生委員会に積極的に提案できること、その他産業医の権限の明確化

③その他(産業医の勧告などを事業者が記録し、保存することなど)