年次有給休暇の時季指定義務

公開日 2019.4.1 あした葉経営労務研究所

●2019年4月施行の改正労働基準法により、年次有給休暇(以下、年休)の付与日数が10日以上の労働者に対し、時季を定めて5日の年休を取得させること(時季指定義務)が使用者に義務づけられた。本規定は、年休の取得率が低迷し、かつ、年休をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年休取得促進を図るために設けられたものである。

●本来、年休は労働者が請求する時季に与えることとされており、労働者から具体的に請求がない限り、使用者は年休を与えなくとも労基法違反を問われることはないが、本規定により時季指定義務の対象となる5日の年休についてはその例外となる(労働基準法39条7項、120条)。

●年休の付与日数が10日以上の労働者とは、基準日(年休権が発生する日)に付与される年休の日数が10労働日以上である労働者であり、比例付与の対象となる労働者が、前年度繰越分の年休を合算し10労働日以上となったとしても、付与日数が10労働日以上である労働者とはならない(平30.12.28 基発1228第15号)。

●使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能である(平30.12.28 基発1228第15号)。

●年休の時季指定に当たっては、あらかじめ、当該年休を与えることを労働者に明らかにした上で、その時季について労働者の意見を聴かなければならない。また、使用者は、年休の取得時季を定めるに当たっては、できる限り労働者の希望に沿ったものとなるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならない(平30.9.7 基発0907第1号)。

●年休の時季指定においては、労働者からの時季指定により付与された半日単位年休を時季指定義務の対象(0.5日)として取り扱っても差し支えはない(平30.9.7 基発0907第1号)。ただし、時季指定義務を時間単位年休で行うことは認められない(平30.12.28 基発1228第15号)。

●時季指定の方法としては、例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で年休取得計画表を作成し、これに基づき年休を付与すること等が考えられる。また、労働者が自ら時季指定して年休を取得した場合や、労使協定に基づく年休の計画的付与により年休を付与した場合には、当該付与した年休の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする)分については、使用者による時季指定は不要である(平30.9.7 基発0907第1号)。

(あした葉経営労務研究所 代表 本田和盛)