2020年02月14日掲載

Point of view - 第150回 千葉祐大 ―外国人社員の受け入れ体制づくりのポイント

外国人社員の受け入れ体制づくりのポイント

千葉祐大 ちば ゆうだい
一般社団法人キャリアマネジメント研究所 代表理事

花王(株)を経て、2012年より現業。外国人材との協働に悩むビジネスパーソンに、価値観の違う相手とのコミュニケーション法を指導するコンサルティング業務を行う。これまで6000人以上の外国人材を指導した経験があり、異文化マネジメントに精通している。著書に、『異文化理解の問題地図~「で、どこから変える?」グローバル化できない職場のマネジメント』(技術評論社)ほか。

外国人社員の受け入れ体制ができているか?

 外国人社員を活躍させるには、社内の受け入れ体制づくりが重要な要素になる。外国人社員は日本人と立場や特性に違いがあり、従来の受け入れ体制をそのまま適用してもうまくはいかない。そのため、日本人社員との違いを踏まえて、部分的にやり方を変える必要があるのだ。
 では、今までの受け入れ体制のどこを、どう変えるべきなのか。以下で、ポイントを三つほど紹介したい。

ポイント❶ー外国人雇用の重要性を社員全員に伝える

 初めて外国人社員を受け入れる会社にありがちなのが、外国人雇用に対する意識の差が、経営層と現場レベルで大きく乖離かいりしているケースだ。経営者の独断で外国人の受け入れを決めたものの、現場はまったく「寝耳に水」。そんなケースが代表的である。
 「そんなの聞いてないよ!」
 「なんだか面倒くさそう」
 「配属先を他部署に変えてほしい」
 こうした社員のネガティブな意識が現場に蔓延まんえんしていれば、はなから外国人社員との円滑なコミュニケーションが成立するはずがない。上司や同僚が外国人社員を招かれざる客として迎え入れ、彼ら彼女らが職場内で孤立する状況が生まれてしまう。
 そのため、外国人社員の受け入れを決めた際は、経営者はまず、外国人雇用の重要性を社員全員にしっかり伝える必要がある。
 「外国人材の受け入れを決めた経緯はどうしてか」
 「当社にとって外国人材の受け入れがいかに重要か」
 「今後、社内で外国人材とどのように協働していくか」
 こうした点について説明する機会を設け、社員全員に納得してもらうことが大切だ。外国人雇用の重要性を認識すれば、現場は外国人材を「かけがいのない仲間」として迎え入れるようになるだろう。

ポイント❷ー適切な人物を上司に選定する

 外国人社員の受け入れに当たり、適切な人物を上司に選定することが非常に重要である。上司選びを間違えてしまうと、彼ら彼女らの活躍はおぼつかなくなる。「外国人社員の能力を生かすも殺すも上司次第」と言っても過言ではない。
 では、適切な人物の条件とは何か? 日本人上司を選定する際のポイントとしては、次のような点が挙げられる。

・異文化を理解できる人物かどうか
・差別的な意識を持っていない人物かどうか
・説明能力がある人物かどうか

 まず、外国人社員(異文化)に理解のある人物かどうかが、重要なポイントになるだろう。異文化を理解しようとしない、あるいは外国人に差別的な意識を持っている人が上司では、コミュニケーションが円滑に進まず、業務に支障を来すのは間違いない。
 また、説明能力があるかどうかも重要なポイントとなる。日本人が取るコミュニケーションの中には、外国人に伝わりにくい表現方法が多くある。例えば、「例の件、よろしく」「結構です」といった判断がつきかねる、曖昧あいまいな表現や「暇なときに、この書類に目を通しておいて(急がないけれど、なるべく早く確認してほしい)」といった本音と建前がある表現に対し、外国人は戸惑うことが多いだろう。
 そのため、日本人と同じやり方だと意思が伝わらなかったり、誤解を招いたりする場合があるのだ。かたくなに今までのやり方を変えようとしない人が上司では、適切なマネジメントを行うことは難しいだろう。

ポイント❸ー孤独にさせない仕組みをつくる

 三つ目として、外国人社員を活躍させるには、彼ら彼女らを孤独にさせない仕組みをつくることが大切だ。具体的には、以下のような取り組みが有効となる。すべて実施するのが理想だが、難しいようであれば、取りあえず一つだけでも着手することをお勧めしたい。

(1)同じ国籍から複数名採用する
(2)「重視されている」と感じさせる
(3)仕事以外のコミュニケーションの機会をつくる

[1]同じ国籍から複数名採用する

 外国人社員は、できれば同じ国籍から何人か採用することが理想である。母国語で気兼ねなく話せる相手がいるだけで、孤独を感じる場面はグンと減るはずだ。

[2]「重視されている」と感じさせる

 孤独を感じさせないために、常に社内の誰かがケアをしてあげる必要がある。頻繁に声を掛けるだけでもよい。「私は重視されている」と感じさせることが大切なのだ。
 「メンター制度」を導入するのも一つの手だろう。先輩社員をメンターに任命し、外国人社員の精神的なサポートをするのだ。メンターは、可能であれば同じ国籍の先輩社員から選ぶのが理想である。母国語を話せる気安さもあって、彼ら彼女らの孤独感が随分薄らぐのは間違いない。

[3]仕事以外のコミュニケーションの機会をつくる

 仕事以外のコミュニケーションの場に誘うのも効果的だ。飲み会や社内サークル、イベント等の機会をつくり、どんどん外国人材を誘ってあげるべきだろう。実は、外国人社員は日本人の若手よりも、こうしたインフォーマルコミュニケーションの参加に前向きな人が多い。母国であまり経験できないイベントであれば、むしろ率先して参加しようとするはずだ。

受け入れ体制の見直しから始めよう

 外国人社員が活躍できない職場は、総じて受け入れ体制が整備されていないことが多い。従来のやり方を何も変えずに外国人材を受け入れ、結果として、うまくいかないケースは枚挙にいとまがない。外国人社員の採用を検討している実務担当者は、まずは、ご自身の職場の受け入れ体制を見直してみる必要があるだろう。