2020年03月26日掲載

BOOK REVIEW - 『若年就業者の組織適応―リアリティ・ショックからの成長』

尾形真実哉 著
甲南大学経営学部 教授 
A5判/328ページ/定価3800円+税/白桃書房 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 新入社員が会社に対する理想と現実との間にギャップを感じ、折り合いをつけていく過程は、先輩社員からは"通過儀礼"としか見られないことが多い。だが、本書の「はしがき」のとおり、「企業側の若年ホワイトカラーの組織適応に関する理解が乏しかったり、あるいは、理解しようとしなかったりする」ために若手の離職が起きるのであれば、単なる通過儀礼では片付けられない。そこで著者は、学生から社会人になった個人が組織に適応するメカニズムを理解すべく、分析を進める。

 本書の構成は大きく三つに分けられる。まず、若手が直面するさまざまな適応課題を分析し、見過ごされてきた課題を明らかにする(3~5章)。次に、代表的な適応課題である「リアリティ・ショック」(入社前の期待が入社後に異なっていた場合に受けるショック)に焦点を当て、企業と個人がどう対応すべきかを提示する(6~7章)。続く8~11章では、若手自身の行動、他者、職場などの視点から、組織適応を促進する行動を分析している。

 最後の12章では、分析から得た結論と、組織・若手双方への提言を示す。組織に対する提言は"若手の組織適応を促進する環境デザインの重要性"、若手に対する提言は"入社前後での情報収集や他者との関係構築の重要性"、そして"若手自身が環境に働き掛けるパワーを持った存在であることに気付くこと"だ。これらの提言は、研究者向けの知見にとどまらない、きわめて実践的なものだ。人事や若手が課題解決の糸口を掴む助けになる、"研究書の形をとった実務書"と形容できる一冊ではないだろうか。

 



若年就業者の組織適応―リアリティ・ショックからの成長

内容紹介

若手社員が入社してから成長し、活躍していくことが、企業の活力維持、成長につながります。特に、若年人口が減りつつあり、また、終身雇用・年功序列が崩れつつある現在、その能力は、企業にとって非常に重要なものとなっています。
しかし、若年就業者の組織への適応に関する研究蓄積は、我が国において豊富とは言い難いところです。
本書は、若年就業者の中でも特に若年ホワイトカラーに焦点を当て、入社前に想像で描いていた働き方と入社後の実際との落差による「リアリティ・ショック」などの適応課題をいかに乗り越え、組織に適応し、一人前の人材に発達していくのか、その内容やメカニズムを丹念に捉えていきます。同時に、若年就業者に対する組織や職場の働きかけ、さらには若年就業者自身の行動にも焦点を当て、若年就業者を上手く組織に適応させるためのさまざまな疑問に答える1冊です。