2020年05月15日掲載

BOOK REVIEW - 『ストーリーでわかる! 人材マネジメントの課題解決―施策の企画から実行までの最適解を導く』

角 直紀 著
山田コンサルティンググループ株式会社 経営コンサルティング事業部 専門部長 
A5判/220ページ/2700円+税/中央経済社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 人事制度改定の場面で考えてみよう。国内外の優良企業が相次いで導入している施策であろうと、著名コンサルタントが推奨する取り組みであろうと、「自社の状況に適した制度」でない限りは、決して「正解」とはならない。運用に無理がかかって、現場の不満がたまるだけだ。
本書の巻末で、著者は「個人的な感想だが」と前置きして、以下のように書いている。「組織人材の問題を扱うコンサルティングは、面白い仕事である。その一番の理由は、『正解がないこと』にあるように思う」。この「正解がない」ことの面白さは、そのまま企業における人事実務の面白さ、そして難しさにも通じているのではないだろうか。

 本書は、人材マネジメントに関する九つの失敗・問題例を起点として、人事部門は現場や経営者の思いにどう向き合い、現実的な解決に向けて対応すればよいのかを解説していく、課題解決の指南書である。
職務基準の人事制度を導入したが、ベテラン社員のモチベーション低下を恐れて現場では"骨抜き"の状態で運用している。営業現場を知る人事部長の問題意識からつくられた新研修体系だが、ターゲットである次世代リーダー人材は業務で多忙なため受講していない――本書で挙げられるストーリーは、どんな企業でも起こりがちな、しかし根本的な解決が極めて難しいタイプの状況ばかりだ。

 こうしたケースに対して著者は、コンサルタントとしての豊富な経験を踏まえ、「自社に適した施策の選択」の方法論を惜しみなく開示していく。こうしたタイプの書籍にありがちな、失敗に至る要素ばかりを過度に強調する"デフォルメ事例"ではないことも、本書の腹落ちがよいことの理由の一つだろう。実務家にとって、共感しながら学びを深めることができる1冊だ。

 



ストーリーでわかる! 人材マネジメントの課題解決

内容紹介

あなたの会社の人事管理、本当にうまく行っていますか? 「失敗・問題」を起点に「解決」まで示す九つのストーリーで、現場や経営層への現実的な対応をていねいに解説。課題の明確化、施策の企画立案、実行のプロセスが分かる、人事コンサルティングのプロのノウハウを詰め込んだ1冊。