2020年06月12日掲載

BOOK REVIEW - 『発達障害の人の雇用と合理的配慮がわかる本』

石井京子、池嶋貫二、林 哲也、村上由美 著
A5判/200ページ/定価1900円+税/弘文堂 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 2018年4月から障害者の法定雇用率の引き上げが開始され、対象となる事業主の範囲が拡大するなど、企業における障害者雇用の重要性は一段と高まっている。一方、「障害者」と一口に言っても、身体障害や知的障害、精神障害といくつかの類型がある。本書では、こうした障害の中でも、近年、世間一般での認知が広まっている「発達障害」を取り上げ、雇用に際して企業に求められる「合理的配慮」のポイントを解説していく。

 発達障害のある人の中にも、感覚過敏(五感が敏感すぎること)や感覚鈍麻(感覚過敏の逆)、注意欠如・多動症(ADHD)など種々の障害特性があり、個人によって「どの特性があり」「どういった状況で発現するか」は異なる。第1章では、発達障害のある人が職場で感じている困りごと、それに関連する障害特性、当事者の心理について具体例を交えて紹介する。続く第2章では、医療の観点から障害特性と合理的配慮について解説がなされており、発達障害のある人への合理的配慮という個別性の高い問題について、実務に近い視点から勘所を知ることができる。これらを踏まえ、第3章では、面接・採用時、就労開始後の各場面での課題と合理的配慮の考え方について、Q&A方式で解説する。

 後半の第4章では、発達障害のある人が職場に定着するためのコミュニケーション・支援の方法に触れ、最終第5章では、当事者たちの抱える悩み・不安等の声(本音)を紹介している。本書は、4人の著者(障害者雇用に関するコンサルタント、産業医など)が各章を執筆しているが、“行政機関による就労支援”や“企業における障害者雇用の具体例”などのテーマでさらに5人の専門者・実務家がコラムを書いており、多岐にわたる視点から、発達障害と雇用に関して理解を深められる一冊だ。

 



発達障害の人の雇用と合理的配慮がわかる本

内容紹介

どこから配慮が必要で、どこまでがわがままなのか?
障害者差別解消法の施行により、行政機関や民間企業の事業者に対して、「障害のある人への差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供義務」が課せられるようになりました。障害者雇用に追い風が吹く一方で、彼ら・彼女たちへのサポート体制は追いついていません。採用面接から就労開始直後、就労定着まで、それぞれのシーンで発達障害の人が障害特性ゆえに抱える困りごとと、必要な配慮を具体的に解説。支援者、人事、上司、同僚をはじめ「職場の発達障害」を支える人のための一冊です。