パート社員として勤務する大阪府岸和田市の東証1部上場の不動産会社「フジ住宅」で、ヘイトスピーチに当たる民族差別的な文書を配布され精神的苦痛を受けたとして、在日韓国人の50代女性が同社と男性会長(74)に計3300万円を求めた訴訟の判決で、大阪地裁堺支部(中垣内健治裁判長)は2日、計110万円の支払いを命じた。
判決は「労働者の国籍によって差別的扱いを受けないという人格的利益を侵害するおそれがあり違法だ」と判断。原告側弁護団は、職場での「ヘイトハラスメント」を認めた司法判断だと評価した。
判決などによると、女性は2002年から勤務。13年ごろから社内で業務とは無関係に、中国や韓国を非難する表現を丸印や波線で強調した書籍や雑誌が配布された。また15年に女性が提訴した後、社内で訴訟に関する説明会が開かれ「温情をあだで返すばか者」「彼女に対して世間から本当の意味でのヘイトスピーチが始まる」など女性を誹謗中傷する旨の社員の感想文が配られた。
中垣内裁判長は判決理由で、資料配布は原告個人に向けられた差別的言動とはいえないとする一方、原告の名誉感情を害し、差別的取り扱いを受けるのではと危機感を抱かせると指摘。「労働契約に基づく従業員教育としては、人格的利益侵害のおそれが社会的に許容しうる限界を超えている」と違法性を認めた。
また感想文配布についても、原告が提訴したことを従業員に周知し批判するもので「裁判を受ける権利を抑圧し、職場で自由な人間関係を形成する自由を侵害した」と判断した。
会社側は「表現の自由の範囲内だ」と請求棄却を求めていた。
(共同通信社)