2020年07月31日掲載

BOOK REVIEW - 『「仕事映画」に学ぶキャリアデザイン』

梅崎 修、松繁寿和、脇坂 明 著
A5判/238ページ/2600円+税/有斐閣 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 「仕事映画」とは、言葉の通り、職場を舞台にして働く人たちが登場する映画である。鑑賞して楽しむだけでなく、自分では経験したことのない仕事に触れたり、異なる時代の働き方を垣間見ることができる。本書では、『プラダを着た悪魔』『ALWAYS 三丁目の夕日』『プリティ・ウーマン』など、1960年代から2010年代までの"仕事"にまつわる映画を22本ピックアップし、個人のキャリア形成やこれまでの働き方の変化を見ていく。

 第1部では主人公たちの職業人生(キャリアデザイン)に焦点を当て、「新卒採用市場」「初期のキャリア形成」「ワークライフバランス」などのテーマごとに1~2作品を紹介する。第2部では、組織や社会の変化により、登場人物たちの働き方がどのような影響を受けたのかを、「労働問題の構造」「企業とステークホルダー」など複数の切り口から見ていく。それぞれのテーマでは、まず映画の内容紹介から入り、そこで取り上げるテーマについて、社会科学の知見を織り交ぜながら解説する。時には映画の台詞なども紹介し、議論を深掘りしていく。

 もちろん、取り上げられている多くの映画はフィクションであり、現実の職業生活を正確に反映しているとは必ずしも言えない。しかし、本書では歴史的な事実やデータから、フィクションとノンフィクションの違いをはっきりと示した上で、フィクションだからこそ見えてくるものがあり、その作品が公開された当時の人たちの社会意識を想像できる点の意義を強調する。「仕事映画」という親しみやすいコンテンツを切り口にした本書は、キャリアデザインに関心を持つ人にぜひ手に取ってもらいたい一冊である。

 



「仕事映画」に学ぶキャリアデザイン

内容紹介

フィクションだからこそ、働くリアルが見えてくる
昭和の名作から最近作、娯楽作から社会派まで、作品が映す仕事/雇用/経済を、労働経済学者ならではの観点で解説。
フィクションの世界に実際のデータを照らし合わせることで、登場人物にとっての現実が私たちのリアルとして立ち上がる。