2021年01月22日掲載

BOOK REVIEW - 『ザ・インターナルブランディング』

栗原隆人、鵜川将成 著
株式会社博報堂コンサルティング 
四六判/300ページ/1600円+税/同友館 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 「インターナルブランディング」とは、社員など組織内部に対し企業の理念や目指す方向性を浸透・啓発する活動を指す(『労政時報』第3908号-16.4.22でオルビスの事例を紹介)。事業環境の変化に合わせ、企業も素早い対応が求められる昨今、社員の意識はその変化に追い付いているだろうか。企業のブランド価値を会社の外部にアピールするように、会社の中に向けて企業の理念を浸透させる活動で組織変革を進めた例を、小説形式で描いたのが本書である。

 物語の主人公は、中堅エレクトロニクスメーカーの人事部員。組織変革室の立ち上げと、室長への任命を社長から言い渡されるところから本書はスタートする。町工場から独自の技術力で成長し、創業50年を迎えた企業であったが、組織は硬直化し、優秀な若手社員の退職も発生していた。主人公は、組織変革室の活動の中で初めて組織内部の厳しい現状を理解し、組織風土変革を模索する中で、「インターナルブランディング」の手法にたどり着く。

 インターナルブランディングの定石や「ファクトドリブンコミュニケーション」、「野武士理論」、ビジョンワード作成に必要な「三つのW」など、理論と手法の解説をする一方、現実的に社内でどんな反応が出てくるのかも物語で描かれている点が、本書の特徴だ。組織風土変革は「失笑期」を避けられない――という部分は、担当者が日々抱いている実感に近いだろう。インターナルブランディングを活用し、社員の意識統一やモチベーション向上を目指す変革の一歩として、本書を手に取ってもらいたい。

 



ザ・インターナルブランディング

内容紹介

インターナルブランディングの理論を活かして変革を進める大野健太に、様々な壁が立ちはだかる。閉塞した現場、妨害する管理職、そして新たなる協力者。組織変革の「論理」と「感情」がわかるリアルストーリー。激動の時代に必要な組織変革の処方箋。

インターナルブランディングによる企業変革を小説仕立てで解説。登場人物にはさまざまな理論や事例を語らせながら、組織変革に関わる人々の感情の変化を描き、プロセスを追体験、成功イメージを形成させます。読書を楽しみながら、インターナルブランディングの考え方が身につきます。