2021年02月12日掲載

BOOK REVIEW - 『評価をしない評価制度』

榎本あつし 著
株式会社MillReef 代表取締役 
A5判/224ページ/2000円+税/アニモ出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 労務行政研究所が2014年に実施した「人事評価制度の実態と運用に関する調査」では、人事評価制度の運用状況について、"適正な評価ができている"とする企業は2割未満にとどまっていた。被評価者は評価されることによる不満、評価者は評価することの難しさや負担など、双方とも人事評価における悩みは尽きないだろう。本書は、人事コンサルタント・社会保険労務士として多くの中小企業支援を行ってきた筆者が、良い・悪いという「評価」や点数付けなどをせず、「事実の振り返り」を行うことで、社員のパフォーマンスと企業の業績向上につなげるためのヒントを提供する。

 「評価をしない評価制度」では「評価」の代わりに、「応用行動分析学」で用いられている「パフォーマンス・フィードバック(P・F)」を行う。これは「行動事実の振り返り」を意味するもので、「この行動をした(していない)」というように、事実だけを振り返るフィードバックだという。実際に、アメリカや日本における配達業や接客業で「パフォーマンス・フィードバック」を用いて業務を改善した事例が紹介される一方、取り上げた架空の中小企業をサンプルとして役割等級制度や範囲給制度などの構築方法を提示したりと、運用方法や各種オリジナルツールを含めて丁寧に解説している。

 巻末には、本書の中で触れた各種資料をダウンロード特典としてリスト化している。「会社目標・組織目標作成シート」や「パフォーマンス一覧(スキル項目・姿勢項目)」「マンスリー・ミーティングシート」「継続フィードバックシート」など、すべての資料をWEBサイトからダウンロードすることができるため、読者が自社の制度として取り入れることも可能だ。本書を片手に、「評価をしない評価制度」の導入を検討してみてはいかがだろうか。

 



評価をしない評価制度

内容紹介

評価をしなくてもパフォーマンスは上がる! 「評価をしない評価制度」のしくみやつくり方から、評価しないことによる給与の決め方、人材育成のやり方などの運用のしかたまでをやさしく解説。

「評価をしない評価制度」とは、文字どおり経営者や上司が「部下の評価をしない」で運用する評価制度のことです。いままでの人事評価制度の概念を大きく覆すユニークな制度です。
コロナ禍をきっかけに在宅やテレワーク勤務が増加し、著者のもとには「部下の働きぶりを見ていないのに、どうやって評価したらよいのか?」という相談が非常に増えました。そもそも人事評価には、特に中小企業の上司はプレイングマネジャーであるため、評価することの手間も時間も負担に感じ、一方で評価される部下には「評価基準が不明確で納得できない」「評価者にバラツキがあり不公平だ」などの不満があるという課題がありました。
そこで、それらの負担や不満といった課題を解消しようと著者が考え出したのが「評価をしない評価制度」(この言葉は商標登録済み)です。本書は、これからの新しい人事評価制度について、そのしくみやつくり方から、評価しないことによる給与の決め方、人材育成のやり方などの運用のしかたまでをやさしく解説。経営者や人事担当者、管理職などにとって“目からウロコ”の画期的な実践的・実用書です!