2021年03月04日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2021年3月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 3月1日、深夜0時に就職ナビの2022年卒向けプレエントリーや説明会予約のデータ送信が開始されました。かつては、それまで前年の採用情報やインターンシップ情報を掲載していたプレオープンサイトから、新しい年度の採用情報を掲載するとともにプレエントリーの受付も開始される正式サイトへとプログラムを総入れ替えするべく、前日からメンテナンス中としてサイトへのアクセスを遮断し、0時ともにグランドオープンするのが風物詩となっていましたが、今やもうその姿はありません。
 新しい年度の採用情報は既に2月から掲載が始まり、プレエントリーや説明会の参加申し込みも3月1日を待つことなく「予約」ができる仕組みとなり、その応募情報は3月1日に日付が変わると同時に、一斉に各企業の管理画面に送信されます。PCの前で日付が変わるのをじっと待ち、日付が変わると同時に就職ナビにアクセスし、競って目当ての企業にプレエントリーする学生の姿はありません。アクセスが集中しすぎてサーバがダウンするなんてことも、もはや遠い過去の話です。

就職イベントは、対面型とオンラインのハイブリッドに

 3月1日現在の採用情報掲載社数を確認すると、「リクナビ2022」は1万827社、「マイナビ2022」は2倍以上の2万4192社となっています。ただ、前述のように、2月から採用情報を掲載している企業が多く、前日の2月28日時点で、「マイナビ2022」には2万1040社、「リクナビ2022」には9641社が既に採用情報の掲載をスタートさせていました。さらに、同日時点でのセミナー・説明会情報の掲載社数もそれぞれ1万3013社(うちWebセミナー8267社)、6989社に及んでいました(「リクナビ2022」にはWebセミナーを検索する機能は搭載されていないようです)。応募情報(大学、氏名、住所などのプロフィール情報)の送信は3月1日になりますが、応募数のカウントだけはリアルタイムに行われており、3月開催の会社説明会・セミナーの多くが既に定員に達して締め切られている状態でした。
 就職ナビ主催のイベントも見てみましょう。昨年は、イベントの自粛要請もあり、2月下旬になって3月以降の対面型イベントの中止を発表しましたが、今年は対面型イベントも予定どおり開催されたようです。「マイナビ2022」の主なイベントを見てみると、3月1日開催の「就職EXPO 西東京会場」(アリーナ立川立飛)や「理系学生のための就職EXPO 東京会場」(ベルサール渋谷ガーデン)は対面型で実施されるものの、約540社が出展する「マイナビ就職MEGA WEB EXPO JAPAN」はWeb(ライブと録画)のみで開催、翌3月2日の「就職EXPO 東京会場」と「理系学生のための就職EXPO 東京会場」はいずれも幕張メッセを会場にして対面型で実施されるだけでなく、Web(ライブ)でも視聴可能となっています。
 ただ、視聴できるのは講演形式の企業や就活支援セミナーだけで、出展企業の大半が参加するブースエリアの話を視聴できるわけではありません。ブースエリアの全企業の会社説明動画を視聴できるようにするなど、今後の改善余地はまだありそうです。「就職EXPO 東京会場」の案内ページを見ると、出展を予定していたものの出展を見送った企業や、Web配信だけに切り替えた企業、さらに講演をリモートに切り替えた企業などが合計で20社以上あったようです。新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言の影響があったものと推測されます。
 ところで、就職ナビ主催イベントとして、今年新しい動きがありました。それは、就活口コミサイトの「ONE CAREER」とテレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA(アベマ)」のコラボレーションによる、12時間にも及ぶ生放送です。解禁日である3月1日の正午から、24時間365日ニュースを専門に放送する「ABEMA NEWSチャンネル」にて特別番組『どうする? withコロナの就活&働き方【12時間特番】』と題して、2ちゃんねる創設者の西村博之さん、有料オンラインサロン「田端大学」を主宰する田端信太郎さん、カンニング竹山さん、弘中綾香アナウンサーらのほか、丸紅や味の素、JICA、三井物産、東京メトロ、三井住友銀行など17社の採用担当者も出演。単なる会社説明ではなく、「創業者のDNAをどう残すのか」「なぜSDGsに取り組むのか」などテーマごとに採用担当者のセッションが展開されたり、オンライン就活にどう対応していけばいいのかを、堅苦しさのない誰もが楽しめる番組で伝えるなど、他の就職ライブイベントとは一線を画す構成となっていました。今後の就職イベントの可能性を探る、面白い試みだったと思います。

文系以上に現場や技術を知りたいと思う理系院生

 今回も前回に引き続き、HR総研と理系大学院生向け就活サイト「LabBase」(株式会社POL)が本年1月に共同で実施した「2022年修了 理系院生の就職活動動向調査」の結果を取り上げます。
 まず、理系院生が希望するインターンシップの具体的な内容から見ていきましょう。社風や人間関係を気にする声もありますが、職場環境や技術、製品の内部など、理系ならではの希望が散見されます。

・会社で実際に働いたときのビジョンが明確にできるかどうかが分かる会社説明、および社員の方との交流(上位国公立大学・化学)

・想像していた実務と実際の実務では必ず隔たりが生まれると考えているので、それらのすり合わせよりも、社風や人間関係等職場環境について社員の方と対談できること(中堅私立大学・電気・電子)

・対面型では、インターンシップに参加する前の意気込みからオンラインとの差があるので、自分の考えをまとめる準備をしっかりします。このような緊張感を持ちながらインターンシップに参加することで、より企業に対する考えやイメージを深めることができ、また交流会においても正確に考えを伝える術を身に付けられて、オンラインよりも有意義なインターンシップにすることができると考えます(その他国公立大学・機械)

・オンラインであると、タイムラグにより質問や会話がしづらかったり、社員の方のお話が途中途切れるなどのトラブルも生じたりします。また、座談会の緊張、情熱、盛り上がりなどは対面でなくてはお互いに伝わりづらいと考えます(上位国公立大学・建築・土木)

・社員の方が入社した理由、感じるギャップなどが知れること(上位国公立大学・物理・数学)

・会社の強み、新規参入の可能性があるかで今後生き残れるのか、周りの人間がどういう人間で何に興味を持っているのかを知ること(上位国公立大学・生物・農)

・コードを書いて何かシステムを改善するなり、プロダクトを開発できたりする内容を重視しています(その他国公立大学・情報)

・会社の上司との関係性や雰囲気、風通しがいいのかどうか分かること(その他国公立大学・機械)

・自分の研究分野とどれくらい関連のある仕事であるかを理解すること(その他国公立大学・生物・農)

・働いている方からの社内の雰囲気や福利厚生について。また、技術などについての他社との比較や優位点について(その他私立大学・機械)

・実際の業務を体験できること。コロナ禍においては、実際の業務をオンライン上で見せていただくこと(旧帝大クラス・生物・農)

・日々続けることになる実作業が自分に向いているか、例えば自分の興味の延長にあるかどうかや、5年程度の間向上心を持ち続けられそうかを知れる内容であるとうれしい(その他国公立大学・電気・電子)

・現場で実務体験をすることで、将来働くときのイメージをつかむこと(早慶大クラス・物理・数学)

・インターンシップでしか見られない、例えば製品の内部であったり内情であったりを聞くことが重要だと考えている(その他国公立大学・電気・電子)

・大学では経験できない実務や仕事体験が重要で、特に会社の雰囲気や入社後の業務をより現実的にイメージできる内容が望ましいと考えています(上位国公立大学・情報)

・実際の社員の方と同じフロアで職場体験でき、一人につき一人のメンターが付くようなインターンシップ(早慶大クラス・建築・土木)

・企業ならではのモデルケースにチームで取り組み、社員からのフィードバックをいただける(早慶大クラス・生物・農)

・オンライン、対面型を問わず、参加した企業の事業内容や志望する職種(技術職、研究職など)の理解を深めることができ、参加した後に良い意味でも悪い意味でもその企業に対するギャップを持つことができるくらいの内容の濃さが望ましいです(その他国公立大学・化学)

理系院生の4分の3が「仕事内容への自身の専門性活用は重要」

 仕事内容に自身の専門性を活用することの重要度について見てみると、「重要である」は25%、「やや重要である」が49%で、「重要である派」(「重要である」と「やや重要である」の合計)は74%と、4分の3の理系院生が仕事内容に自身の専門性を活用することを重視していることがうかがえます[図表1]

[図表1]仕事内容に自身の専門性を活用することの重要度

資料出所:HR総研×LabBase「2022年修了 理系院生の就職活動動向調査」(2021年1月。以下図表も同じ)

 では、活かしたい専門性の内容とは、どのようなものでしょうか。「これまでに培ったPCスキルや論理的思考力などを活かしたい」が最多で37%、次いで「学部や大学院での専攻で培った知識を活かしたい」が32%、「研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい」が19%などとなっており、専門性のレベル感に差はありながらも、大学院までに培ったスキルや知識等を何らかの形で活かしたいと考える理系院生が多いことがうかがえます[図表2]

[図表2]活かしたい専門性の内容

 理系院生として実験や実測などの研究を日々続けることにより、研究対象は各々違えども「PCスキルや論理的思考力」が着実に身に付いていることを実感していることも、あらゆる職場で必要となる「これまでに培ったPCスキルや論理的思考力」が最多となる背景にあるのでしょう。

理系院生の6割がダイレクトリクルーティングでスカウト受けた経験あり

 従来型の就職ナビだけでなく、学生の登録情報を基に、企業が求める人材にオファー(スカウト)を発信していく逆求人型サイトの利用が、企業、学生ともに年々伸びています。理系院生での普及率を探るべく、ダイレクトリクルーティングツール等で企業からのスカウトを受けた経験の有無について確認してみたところ、6割が「ある」としていました。理系院生の早期獲得の場は、インターンシップだけでなくさまざまな手法で行われているとともに、理系院生の中で、ダイレクトリクルーティングツールを就職活動に利用する学生が多数派となっていることもうかがえます[図表3]

[図表3]逆求人サイト等で企業からのスカウトを受けた経験の有無

1月時点で既に内定を得た理系院生は1割

 理系院生の就職活動の状況として、調査時点で内定(内々定)が出た社数を聞いてみたところ、「0社」が88%と圧倒的で、「1社」が11%となっており、1割程度と少数派ではあるものの、年明け早々の時点で既に内定を得た学生がいることが分かります[図表4]。なお、図表ではいずれも1%未満のために表示されていませんが、「2社」「3社」「4社以上」と回答した学生がそれぞれ2~3人います。また、内定を持っている学生のうち29%と3割近くは、既に内定承諾をしているようです[図表5]

[図表4]内定(内々定)が出た社数

[図表5]すでに内定承諾した企業の有無

 内定保有状況を志望する職種別に見てみると、「コンサルタント」(18%)が最も多く2割近くにも上り、次いで「ITエンジニア」(16%)や「データサイエンティスト」(16%)など需要が高まり続けている理系人材の職種を志望する学生が、早期に内定を得ている傾向が見られます[図表6]

[図表6]志望職種別 内定(内々定)率(2021年1月現在)

 内定した企業のインターンシップ参加状況は、「すべての企業で参加した」が64%と圧倒的に多く、「参加した企業もある」(9%)と合計すると、73%が少なくとも内定した企業のうち1社ではインターンシップに参加していることが分かります[図表7]。したがって、この時期に内定を得る学生は、インターンシップ経由での採用選考が主流となっていると推測されます。ただし、中にはインターンシップの事前選考で落選したにもかかわらず、その企業の内定を勝ち取った学生も複数いるなど、必ずしもインターンシップ参加がありきではない選考が実施されているようです。

[図表7]内定した企業のインターンシップ参加状況

推薦応募枠の廃止に「困る」は4割

 理系特有の応募方法である「推薦応募」(学校推薦・教授推薦の両方を含む)の傾向を見てみましょう。「推薦応募する予定」の学生が22%なのに対し、「推薦応募しない予定」と回答した学生は46%と、推薦応募しない意向を持つ学生が半数近くとなっています[図表8]。残り32%は「決めかねている」としており、そのうちの一部は推薦利用へと流れるとしても、過半数の学生は推薦応募を利用しない就職活動を送ることになるでしょう。

[図表8]就職活動での推薦応募の利用意向

 推薦応募を利用する理由としては、「希望の企業の推薦枠があるため」が最多で67%、次いで「自由応募よりも推薦のほうが内定につながりやすいと思うため」が59%、「一般よりも推薦のほうが早く選考が進むため」が47%などと効率的に早く希望の企業から内定を得られるメリットに注目している学生が多数派であることが分かります[図表9]

[図表9]推薦応募を利用する理由(複数回答)

 一方、推薦応募を利用しない理由としては、そもそも「希望の企業の推薦枠がないため」が最も多く54%、次いで「推薦での内定は内定辞退しにくいため」が50%などとなっています[図表10]。理系院生の中でも、希望する企業と推薦枠のある企業が一致する学生は決して多くはなく、推薦枠はあったとしても、推薦応募のリスクともいえる「内定辞退しにくい」ことを敬遠する学生も多いことがうかがえます。

[図表10]推薦応募を利用しない理由(複数回答)

 そして、昨年11月にトヨタ自動車が発表した「推薦応募枠の廃止」を受けて、今後、推薦応募枠を廃止する企業が増える動きがあった場合に対する理系院生の所感としては、「非常に困る」(10%)と「やや困る」(29%)を合計した「困る派」が39%と4割となっています[図表11]。推薦応募を利用する意向を明確にした学生は2割にとどまるものの、「(推薦応募の利用を)決めかねている」学生も3割以上おり、理系院生にとって「推薦応募枠の廃止」は奥の手としてキープしておきたい武器でもあるのでしょう。

[図表11]推薦応募枠の廃止に対する所感

 ただし、残り6割以上の学生は「困らない派」(「あまり困らない」と「全く困らない」の合計:61%)であり、推薦応募を利用しないと決めている、あるいは多分利用しないだろうと考えている層だと推測でき、推薦応募の利用意向は[図表8]よりも、こちらの[図表11]のほうがよく表れているのかもしれませんね。

推薦応募枠の廃止に「困らない」旧帝大クラス

 推薦応募枠の廃止に対する所感の理由について、学生からのフリーコメントの内容を一部抜粋して紹介します。大学の知名度の点で推薦がなくなることに不安を感じる地方国立大学の学生が目につきます。一方、推薦応募枠の廃止を気にしない学生は、旧帝大クラスや早慶クラスなど、高偏差値大学の学生の割合が多くなっています。

【非常に困る】

・早期選考で落ちた場合、推薦を頼りにしているから(旧帝大クラス・その他)

・研究で忙しい人のための学校推薦であったのに、廃止が進むと就活に時間をかけて面接がうまくなった人が優先的に行きたい企業に行けてしまう(上位国公立大・電気・電子)

・推薦枠に頼ってスムーズな就職活動を行いたいため。理由としては修士での研究に早く集中したいため、就活を早く終わらせたいからです(上位国公立大・物理・数学)

・もともと面接など自分をアピールすることが苦手な上に、推薦がなくなると有利な部分がなくなってしまう(上位国公立大・電気・電子)

・大学院生は研究が忙しいため、就職活動を短期間で終えられる学校推薦は絶対に必要であると思います。なくすべきではありません(上位私立大・その他)

・大学院での強みの一つである。推薦が使えないから(早慶大クラス・物理・数学)

・行きたい企業の中で推薦枠がある場合、ぜひとも推薦枠を利用してなるべく不安要素をなくして本選考に臨みたいと考えているから(その他国公立大・機械)

【やや困る】

・挑戦した結果としての理系院生の受け皿となっているから。なくなると、膨大な企業にエントリーしなければならなくなる(旧帝大クラス・化学)

・門戸が広く開かれるのは良いことであるとは理解しつつも、志願度合いが強い学生が評価されてほしいという思いもある(上位国公立大・建築・土木)

・推薦がなくなると、大学内の志望企業に偏りができやすくなりそうで、自分の企業の倍率が上がるのが不安だから(上位国公立大・建築・土木)

・最終的に「逃げる」場所がなくなってしまう(中堅私立大・薬学)

・本当に幅広く人材を採用するのか、学歴だけで判断しないか不安(その他私立大・電気・電子)

・大手からの推薦があることは、大学や大学院を選ぶ指標の一つにもなるから(その他私立大・機械)

・私は地方国立大学出身であるため、推薦枠が廃止されると有名大学出身の学生の採用が増えると考えているため(その他国公立大・電気・電子)

・知名度の高くない地方国立大学などは、一般選考で内定をいただきにくいため、確実性を上げるために第一志望は推薦を狙うから(その他国公立大・電気・電子)

【あまり困らない】

・自分の専攻はビジネスの役に立つ確信と証拠があり、実際にアルバイトにて収益増加に寄与したことがあるため(旧帝大クラス・情報)

・実力で内定先が決まるほうが公平であると思うから(上位国公立大・生物・農)

・もともと専門分野に問わずに採用していただける企業様に多様性などの魅力を感じておりましたので、困るというよりかは良い流れと考えております(上位国公立大・物理・数学)

・幅広い業界を選択できる(上位国公立大・機械)

・就職先を推薦で決めることにあまり魅力を感じない。第一候補であればよいが、日が経つにつれて印象の変わる企業も多いため、推薦を出した当時の判断を後悔するのではないかと考えたから(上位国公立大・生物・農)

・推薦枠の企業の中に行きたい企業がないから(その他国公立大・機械)

【全く困らない】

・行きたい企業と自分の価値のマッチングを大切にしているから(旧帝大クラス・生物・農)

・元から推薦枠のない学部・研究室であるため。むしろ本選考の枠数が増えると考えるとありがたい(旧帝大クラス・医学)

・志望先として公務員も検討しているため、推薦枠の廃止によって一般の枠が広がれば併願先として考えやすくなる(旧帝大クラス・電気・電子)

・競争率が高まったほうが就活生にとってもレベルアップにつながるから(旧帝大クラス・生物・農)

・本来の自分自身の能力で評価していただけると考えるから(旧帝大クラス・化学)

・推薦には自由度がなく、選択肢を狭めることになるため(上位国公立大・情報)

・インターン経由で就活を終わらせたから(早慶大クラス・電気・電子)

・研究職希望や高度専門職志望でないため、そもそも企業推薦がほとんどなく関係がない。また、推薦制度の意義に疑問があるので廃止はむしろ望ましいと感じる(早慶大クラス・情報)

・推薦を利用しようとしていないため(その他国公立大・機械)

 これまで長年にわたり築いてきた大学、研究室との関係を断ち切ることには、企業には相当な勇気と英断が必要です。採用方針を変革することは簡単なことではないです。ただ、事業構造や取り巻く環境が目まぐるしく変わる現在、いつまでもこれまでのやり方が正しいとは限りません。過去のやり方に縛られていることが、事業戦略を遅らせる最大のリスクになるかもしれません。
 一度も直接学生と会うことなく、内定までのすべての選考がオンラインで進むことなど、ほとんどの企業が一年前には全く想像すらしていなかったはずです。でも、やらざるを得ない環境の中では、試行錯誤ながらもやり通すことができたわけです。トヨタ自動車の「推薦枠の廃止」は採用変革のあくまでも一例であり、ほかにも変革の対象は企業ごとにいろいろとあるはずです。いきなり大ナタを振るうのは難しいかもしれませんが、小さなことの積み重ねからでも結構ですので、ぜひ新しいチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/