2021年03月26日掲載

BOOK REVIEW - 『ジョブ型人事制度の教科書』

柴田 彰、加藤守和 著
コーン・フェリー 
A5判/224ページ/2500円+税/日本能率協会マネジメントセンター 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊
 日本的な人事慣行の特徴として、終身雇用や年功序列といった「人」を基軸にする「メンバーシップ型」人事制度が挙げられるが、これの対比として、「職務」を基軸とした「ジョブ型」人事制度が改めて注目されている。事業環境の変化が激しさを増し、同一労働同一賃金の実現が政府主導で進められるなど、「ジョブ型」が求められる背景はさまざまであるが、誤った理解のまま導入が進められることも少なくない。本書は、多くの企業で「ジョブ型(職務型)」人事制度導入を支援してきたコンサルタント2名が、「ジョブ型」の制度を体系的に整理した一冊である。

 全10章のうちの第1~3章では、「ジョブ型」人事制度の背景や歴史、日本と海外の労働慣行の違いをおさらいし、続く第4章~6章は「等級制度」「評価制度」「報酬制度」に焦点を当て、「ジョブ型」制度におけるそれぞれの位置づけやポイント等を解説している。特に運用負荷となりやすい「職務記述書」に盛り込む内容や、ポストに関する情報の収集方法、運用のポイントなど、人事担当者が気になる点を丁寧にまとめている。

 第7章~8章では、制度導入時の社員への説明方法や情報開示レベル、人事部の役割やノウハウの蓄積・継承など、制度導入後の対応をまとめ、続く第9章では制度の導入背景やテーマ別に9社の事例を紹介する。終章となる第10章では、筆者らが所属するコーン・フェリーの調査や実際の企業のケースを踏まえながら、制度の形骸化や中途半端な運用方法、経営陣の意識改革の必要性など、「ジョブ型」制度の導入における課題を考察している。「ジョブ型」人事制度を検討する際、タイトルのとおり本書を"教科書"として活用いただきたい。

 



ジョブ型人事制度の教科書

内容紹介

ここ数年、日本企業ではジョブ型人事制度の導入が進んでいる。「等級」「報酬」「評価」を考える視点、導入コミュニケーション、運用体制とそのプロセス、導入企業事例、今後の課題を専門家が詳説する。

残念ながら、「ジョブ型」についての誤解が多いことを実感する。例えば、「ジョブ型は成果主義のことだ」「ジョブ型はリストラのためにおこなわれるものだ」といった誤解である。それは、日本において「ジョブ型」を体系的に学ぶための機会が圧倒的に不足していることによるからだ。
「ジョブ型」は確かに日本の人事慣行と相容れない部分のある難しい仕組みである。しかし、日本以外のグローバルではほとんどが「ジョブ型」を採用しており、日本でも「ブーム」となって何度となく上陸するのは、「ジョブ型」の持つ普遍性ゆえであろう。
その普遍性とは「処遇は職務の価値によって与えられるものであり、年齢・性別・人種などによって変えられるべきものではない」ということである。日本においては、「年功序列」がやり玉にあがることが多いが、「年齢が高い者が高い処遇を得るのではなく、職務価値が高い者が高い処遇を得る」ということを志向しているとも捉えられる。誤った理解に基づき、このような本質を見誤るのは望ましいことではない。
本書は、「ジョブ型」の持つ良い点も悪い点も含めて、体系的に整理し、まさにこれから導入する日本企業の「教科書」として役立つことを期待している。