2021年03月26日掲載

BOOK REVIEW - 『従業員をめぐる転職・退職トラブルの法務 ~予防&有事対応~』

湊総合法律事務所 編
野坂真理子、野村奈津子、太田善大、平木太生、石田嘉奈子、湊 信明 著 
A5判/232ページ/2800円+税/中央経済社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 著者らが所属する湊総合法律事務所では、従業員や取締役の退職に伴うトラブルに関する事件の受任件数が、10年前に比べて大幅に増加しているという。また、インターネットの普及により、さまざまな情報を簡単に入手できるようになった結果、"法的武装"をしてくる退職者なども出てきており、企業として社員の転職・退職に関して何も対策を取らずにいるのは危険な状況である。そこで、本書は従業員の転職・退職にまつわるトラブルにフォーカスし、予防策と対応策を提示する。

 本書は、「競業によるリスク」「情報の漏えい・不正使用によるリスク」「従業員の引き抜き、顧客奪取によるリスク」「退職前・退職時の事情に基づく紛争リスク」という4テーマ別に章を分けて構成されている。裁判例などを細かく見ながら、それぞれのケースに対する具体的な予防策・対応策を示していく点が大きな特長だ。例えば「競業によるリスク」では、競業避止義務に関する就業規則の規定例や、競業行為が発覚した後の対応フロー、損害賠償請求する場合の手続きといった点まで、幅広く解説している。さらに、最終章「退職前・退職時の事情に基づく紛争リスク」では、未払い残業代請求、労働組合(ユニオン)、退職代行サービスなどの法的論点やリスク回避のポイントも網羅している。

 巻末には、書式集として、入社時/退職時の競業避止義務・秘密保持義務等に関する誓約書、秘密情報管理規程の例なども収録している。さまざまな裁判例を整理し、企業が取り得る手段をまとめた本書は、転職・退職をめぐるトラブルを回避するためだけではなく、いざトラブルが発生した際にも役立つはずだ。

 



従業員をめぐる転職・退職トラブルの法務 ~予防&有事対応~

内容紹介

”雇用流動化時代”におけるトラブル解決に役立つ法律実務書の決定版
増加する転職者・退職者トラブルを解決するための平時からの予防策や有事での正しい対応法を解説。


転職者・退職者による競業リスク、情報漏えい・不正使用リスク、顧客奪取リスクなど、実際よく見られるトラブルにフォーカスし、誓約書・合意書の取得、就業規則の整備ほか、裁判例を踏まえた上での法的予防法・法的有事対応をわかりやすく解説する。