フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン

公開日 2021.4.21 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
(ふりーらんすとしてあんしんしてはたらけるかんきょうをせいびするためのがいどらいん)

 事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法(下請法)、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するために策定されたガイドライン。内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で、2021年3月26日に策定された。
 このガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す。
 独占禁止法、下請法、労働関係法令とフリーランスとの適用関係の基本的な考え方は、次のとおりである。

(1)独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用される。

(2)下請法は、取引の発注者が資本金1000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用される。

(3)フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けていると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用される。

 このガイドラインでは、フリーランスが労働関係法令の適用に当たり雇用に該当するかどうか(「労働者」かどうか)を判断する際の基準について、次のとおり示されている。

(1)労働基準法における「労働者性」の判断基準

①「使用従属性」に関する判断基準

・「指揮監督下の労働」であること(労働が他人の指揮監督下において行われているか)

・「報酬の労務対償性」があること(報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか)

②「労働者性」の判断を補強する要素

・事業者性の有無(仕事に必要な機械等を発注者と受注者のどちらが負担しているか等)

・専属性の程度(特定の発注者等への専属性が高いと認められるか)

(2)労働組合法における「労働者性」の判断要素

①基本的判断要素

・事業組織への組み入れ(業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか)

・契約内容の一方的・定型的決定(労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか)

・報酬の労務対価性(労務供給者の報酬が労務供給に対する対価などとしての性格を有するか等)

②補充的判断要素

・業務の依頼に応ずべき関係(相手方からの個々の業務の依頼に対し、基本的に応ずべき関係にあるか)

・広い意味での指揮監督下の労務提供(労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか等)

③消極的判断要素(この要素が肯定される場合には、労働組合法上の労働者性が弱まる場合がある)

・顕著な事業者性(恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者か)