2021年04月23日掲載

BOOK REVIEW - 『中途採用人材を活かすマネジメント ―転職者の組織再適応を促進するために―』

尾形 真実哉 著
甲南大学 経営学部 教授 
A5判/216ページ/2000円+税/ 生産性出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 少子高齢化が進み人材確保が難しくなる日本では、中途採用の重要性が今後ますます高まっていくことが予想される。本書は、組織行動論・経営組織論を専門とする筆者が、①研究者や研究者を志す大学院生、②転職を考えている個人、③中途採用者を受け入れる企業の人事担当に向けて執筆したものである。中途採用者に対する社会の誤解を解き、中途採用者を組織に再適応させ、また、高いパフォーマンスを発揮させるために何が必要であるかを、豊富なデータの分析結果を基に提示していく。

 本書は、筆者の論文を改稿した章と、新たに書き下ろした章に分かれている。全編を通じて学術的な内容ではあるものの、各章の冒頭に「本章の目的」、末尾に「まとめ」を記載し、また平易な表現を意識しているため、読み進めやすい構成となっている。冒頭の第1章では、中途採用者に対するインタビュー調査から得られた質的データ分析を行って、「スキルや知識の習得」「暗黙のルールの理解」「アンラーニング(いったん学習したことを意識的に忘れ、学び直すこと)」「中途意識の排除」「信頼関係の構築」「人的ネットワーク構築」の六つを、中途採用者が組織再適応するための課題として抽出した。そして、それぞれへの課題への対応を次章にかけて説いていく。

 また、中途採用者のパフォーマンスの発揮や信頼関係の構築においてカギとなる「社内での人的ネットワーク」については、それをサポートする存在となる「コネクター(人的ネットワーク構築・広範化をサポートする重要な他者)」や「適応エージェント(組織再適応全般をサポートする存在)」の性質を詳細に解説する。前章までの内容を基に、最終第7章では中途採用者を活かすための七つの提言を述べているため、中途採用者のいる組織では実践するとよいだろう。自社の中途採用者戦略立案に活用いただきたい一冊だ。

 



中途採用人材を活かすマネジメント
―転職者の組織再適応を促進するために―


内容紹介

人材を受け入れ、定着・戦略化させる施策「オンボーディング」に取り組む。中途採用者に対する社会的な誤解を解き、うまく組織に再適応させ、高いパフォーマンスを発揮させるには何が必要なのか。豊富なデータ分析により解明する。

中途採用者に対する社会的な誤解を解き、うまく組織に再適応させ、高いパフォーマンスを発揮させるには何が必要なのか。中途採用者と企業の双方の視点からデータ分析を行い、中途採用者の組織再適応モデルを提供する。