2021年05月28日掲載

BOOK REVIEW - 『教養としての「労働法」入門』

向井 蘭 編著
杜若経営法律事務所 弁護士 
四六判/336ページ/2000円+税/日本実業出版社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 人事実務の担当者であれば、1日の労働時間は8時間、1週間で40時間と労働基準法で法定時間が定められていることは知っている人がほとんどであろう。では、なぜ1日8時間、週40時間となっているのか、その背景まで説明することはできるだろうか。本書は、使用者側の労働問題を数多く取り扱ってきた弁護士らが、紛争を防ぎ企業を存続させていくために「教養として」求められる労働法知識について、さまざまな切り口から紹介していくものである。

 「労働法が制定された背景」「諸外国とのルールの違い」「労働法の基本的な判決」などを豊富な事例とともにやさしく解説している。具体的には、労働法の作られ方、労働行政の仕組み、労働法の歴史、解雇規制、高齢者雇用、有給休暇、懲戒ルールが生まれるまで―といった多岐にわたるテーマを取り上げている。また、各テーマについて、アメリカ、イギリス、EU各国、シンガポール、中国などと日本を比較しており、実務では知る機会が少ないであろう知識を取り入れることができる点も本書の特徴だ。

 本書は「労働法とは」と題された序章から、第7章「労働組合を知る」まで八つのパートで構成される。各章の冒頭には、その章で取り扱うテーマのサマリーが見開きで掲載されており、サマリーから興味のある内容をピックアップして読み進めることも可能である。年次有給休暇制度の誕生から確立までの歴史、各国でのハラスメントの取り扱いなど多彩な話題についても触れられているため、これまでに自分が培ってきた知識を別の視点から俯瞰(ふかん)したい方や、知見を広げたい方には十分なインプット量となるだろう。本書を片手に、労働法に関する教養を深めてみてはいかがだろうか。

 



教養としての「労働法」入門

内容紹介

役に立たない知識が役に立つ!
労働法を考える上でヒントになる情報を盛り込んだ入門書。「労働法が制定された背景」「諸外国とのルールの違い」「労働法の基本的な判決」等を取り上げ、豊富な事例とともにやさしく解説する。


古くは劣悪な労働環境改善や、長時間労働の是正などのために、最近では同一労働同一賃金、ハラスメントなどへのルールを定めてきた労働法。細かいルールを正しく理解して適切に対応するのはもちろん大切なことですが、社会状況が変わればさらなる課題も生まれるものです。外国人労働者の増加、多様な働き方が求められる今後を考えると、いま存在しているルールを知っているだけでは新しい課題に立ち向かうことは困難です。
そこで本書は、重要判例や、海外諸国の制度と比較しながら、労働基準法や労働契約法などが制定された歴史的な背景から労働法をわかりやすく解説。「採用時に職務が決まっていない」「時間外労働の割増率が低い」など、日本の特殊な雇用環境や、先進国の中で低いルールで働いている実態もみえてきます。労働法の歴史を学ぶことは、役に立つのです。本書は、 物事に対する別の角度からの見方や今後の課題を解決するヒントがみつかる一冊です。