2021年06月11日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2021年6月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 6月を迎え、2022年卒学生を対象とした採用・就活ルール上の面接選考が解禁となると同時に、2023年卒学生向けの就職ナビ上でのインターンシップへのエントリー受付も開始されました。かつては、就職ナビのオープン自体が6月1日でしたが、近年は5月中にいち早くオープンし、インターンシップ情報の閲覧ができるとともに、気になるインターンシップへのエントリー予約ができるようになっています。翌年3月1日の正式オープン時もそうですが、それぞれの解禁日は「情報公開解禁日」から「企業への学生エントリーデータ送信解禁日」へと意味合いが変わってきたようです。
 2023年卒向けの就職ナビに掲載されているインターンシップ情報を少し確認してみましょう。6月6日現在、「マイナビ2023」にインターンシップ・仕事体験情報を掲載している企業数は6641社。「1日」タイプのワンデー仕事体験情報を掲載している企業が5404社で全体の81%と8割を超えている一方、「2~3日」タイプのインターンシップ情報は1693社(25%)、「1週間以上」タイプのインターンシップ情報に至っては969社(15%)と少数派です。「1日」タイプはもはや「インターンシップ」とは呼ばず、「ワンデー仕事体験」と区別するようになり、早期の就職ナビは、インターンシップ情報サイトと位置づけられていますが、実態は「ワンデー仕事体験情報サイト」と呼んだほうがよいくらいですね。
 コロナ禍の中で、昨年は開催形態が対面型ではなく、オンライン型が主流になっていましたが、今年は再び対面型も復活しているようです。開催方法を「WEB」としてプログラムを展開する企業は3039社と全体の5割以下となっている一方、具体的な開催地を指定しての対面型プログラムを展開する企業は5033社と76%にも及びます。会場コストがかからず、運営の手間も大幅に削減できるほか、地方学生が参加しやすくなるなど、メリットの多いオンライン型ではあるものの、できることには制約があり、企業と学生の結び付きも弱いため、対面型への揺り戻しが起きていると言ってもいいのかもしれません。

進捗は、新型コロナ前の2020年卒採用に近い

 さて、今回も前回に引き続き、2022年卒業予定の「楽天みん就」会員学生を対象にして3月に実施した「2022年卒学生の就職活動動向調査」の結果について紹介していきたいと思います。
 まずは、個別企業が開催するセミナーや会社説明会への参加社数です。なお、昨年(2021年卒)のデータは、突如として広まった新型コロナ感染症に対して、オンライン化への対応をうまくできないことなどを理由に、セミナーや説明会を中止や延期した企業も数多くあったことから、比較対象としては不適かと思われるため、コロナ禍前の2020年卒のデータまでを含めた3年比較で見ていきましょう。
 [図表1]は文系、[図表2]は理系について、過去3年間の同時期調査の結果を比較したものです。両方のグラフの形を見ると分かるように、2022年卒は文系・理系のいずれにおいても、明らかに2021年卒よりも2020年卒の結果に近くなっています。

[図表1]セミナー・説明会の参加社数の3年比較(文系)

資料出所:HR総研「2022年卒学生の就職活動動向調査」(2021年3月。以下図表も同じ)

[図表2]セミナー・説明会の参加社数の3年比較(理系)

 文系では、「4~5社」だけ3年間ほぼ同程度の割合ですが、「0社」~「3社」はいずれも2021年卒が最も多く、2020年卒と2022年卒は同程度、逆に「6~11社」~「21社以上」は2021年卒が最も少なくなっています。理系でも文系とほぼ同様な傾向が見て取れます。
 2021年卒では、企業のセミナーや説明会が中止・延期となった影響を受けて、3月の調査段階で6社以上に参加できた学生の割合が落ち込みましたが、2022年卒は2年前の水準に戻った、いや、オンライン説明会増加の恩恵を受けて、これまで以上に説明会に参加しやすい環境になったことから、「21社以上」など多くの企業の説明会に既に参加した学生の割合が増えています。
 ちなみに、昨年同時期対比では、6社以上の説明会に参加した学生の割合(「6~11社」~「21社以上」の合計)は、文系:27%→51%、理系:18%→42%へと大幅に伸びています。面接社数、内々定社数など、この後のステップについても見ていきますが、データは昨年(2021卒)対比ではなく、一昨年(2020卒)対比でも見ていったほうがよさそうです。

理系のセミナー参加ペースは文系を大きく上回る

 次に、セミナーや会社説明会に参加したことのある学生を対象に、そのうちオンライン型のプログラムで参加した社数を聞いてみたところ、「0社」(対面型のみに参加)との回答はごくわずかで、文系1%、理系2%に過ぎません[図表3]。従来の対面型のセミナー・説明会にしか参加したことのない学生はほぼいないことが分かります。

[図表3]オンライン型のセミナー・説明会参加社数

 参加社数で多いのは、文系ではトップが「4~5社」の27%、次いで「6~10社」の21%、理系では順位が入れ替わり、トップが「6~10社」の27%、次いで「4~5社」24%となり、この二つを合計するといずれも半数前後に上り、ボリュームゾーンを占めることが分かります。
 セミナー等に初めて参加した時期を見てみると、文系で最も多いのは「2021年2月」の18%、次いで「同3月」(16%)となっています[図表4]。これに対して理系では、「2020年7月」が僅差とはいえ14%でトップ、次いで「同8月」と「同12月」が13%、「同6月以前」と「2021年2月」が12%で続きます。

[図表4]セミナー・説明会に初めて参加した時期

 「2020年6月以前」~「同10月」まではいずれも理系の割合のほうが高く、「2020年10月」までに参加実績のある学生の割合は、文系の39%に対して理系は58%と、20ポイント近く引き離しています。理系学生のセミナー参加の進捗が文系よりもかなり早いペースで進行していたことが分かります。

勤務時間や休日に関心が強い学生たち

 セミナーや説明会でのプログラム内容として、あるいは採用ホームページでの掲載情報として、なくてはならない情報が「社員の実際の働き方」です。その関心度と、知りたい具体的な内容について聞いてみた結果を紹介します。
 まず、関心度については、文系の92%が「関心がある」(「非常に関心がある」と「やや関心がある」の合計、以下同じ)と回答し、「関心がない」(「全く関心がない」と「あまり関心がない」の合計、以下同じ)と回答した学生はわずか4%です[図表5]。理系に至っては「関心がある」は97%に達し、「関心がない」はほぼ皆無(0.4%)となっています。学生が入社後の自分をイメージするためにも、現社員の実際の働き方に関心があるのは当然のことですが、ここまで関心が高いとは驚きます。

[図表5]社員の実際の働き方についての関心度

 では、具体的にはどのようなことを知りたいと思っているのでしょうか。学生のコメントを抜粋して紹介します。特に、勤務時間や休日、プライベートとの両立などに関心を持つ学生が多いようです。

・実際に月に何時間の残業があるのか、多い人と少ない人での比較。風邪や身内絡みでの緊急性が伴う休暇取得状況。副業ができるかどうか(文系・上位国公立大)

・何のために社員一人ひとりが働いているのか、という目的意識の徹底がなされているのか(文系・上位国公立大)

・働いてみてやりがいを感じるかどうか、そのやりがいにより厳しい勤務状況であっても進んで仕事に向かえているかどうか(文系・早慶大クラス)

・実際にどれぐらいの時間働いているのか、業務においてどのようなスキルが身に付くのか、プロジェクトの進め方がどのようになっているのか(文系・早慶大クラス)

・主にメンタル面について、その仕事にやりがいを持って働いているか、やりがいはなくてもワーク・ライフ・バランスや福利厚生が充実していて、精神的に負荷がかかりすぎていない状態で働けているか(文系・早慶大クラス)

・プライベートとの両立の仕方(ワーク・ライフ・バランス)、リモートワークがどれほど推奨されているのか、チームで働く機会の多さについてなど(文系・早慶大クラス)

・部活などへの参加、自己啓発や自発的な学習の実施状況(文系・早慶大クラス)

・実際に何時間平均して働いているのか、社風(上からの指示は絶対か、ノルマへのプレッシャーはあるか、風通しの良さ)(文系・旧帝大クラス)

・1日のスケジュールや、仕事でない日にどれぐらい充実した生活を送っているのか(休日に仕事をしなくていいのか)(文系・上位私立大)

・結婚、出産経験のある女性のキャリアプラン(文系・その他私立大)

・どのようなタイムスケジュールで毎日働いているのか関心がある。閑散期、繁忙期ともにどのぐらいの時間働いているのか、何時に退社しているのか(理系・旧帝大クラス)

・能力に見合った給与面での評価について(理系・旧帝大クラス)

・フレックスの活用度合い、テレワークの普及率、男性の育休取得率(理系・旧帝大クラス)

・家庭と両立して働くことができるのか、コロナ渦でどのような対策を取ったのか(理系・旧帝大クラス)

・意見を上司に言いやすいかどうか(理系・早慶大クラス)

・キャリアの歩み方、実際の業務内容、オンライン化した場合のコミュニケーション(理系・早慶大クラス)

・うわべだけでない、本当の働き方を知りたい。離職率や有給取得率、年間休日等を実態とかけ離れた数字を公表している会社は社会的制裁を受けるべき(理系・その他国公立大)

・生き生きと働けているか、企業に対して解消しない不満はないか(理系・その他国公立大)

・採用情報とのギャップがどれほどあるのか、確かめたい(理系・中堅私立大)

オンライン化が面接社数をかさ上げ

 ここからは面接について見ていきましょう。まずは面接社数について、[図表6]は文系、[図表7]は理系について、過去3年間の同時期調査の結果を比較したものです。こちらも2021卒よりも2020卒の調査結果に近いデータとなっています。

[図表6]面接受験社数の3年比較(文系)

[図表7]面接受験社数の3年比較(理系)

 文系を見ると、「0社」は33%で2021卒の27%よりも多く、2020卒の31%に近いものになっています。2021卒の採用選考は、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることを前提に、当初は2020卒採用よりも速いペースで進捗していたため、3月時点で面接を1社も受けていない学生の割合が少なかったといえます。ただし、受けてはいたものの、社数はそれほど伸びておらず、「1社」~「3社」といった少ない社数では2021卒の割合が高くなっている一方、「6~10社」では2022卒のほうが4ポイントも高くなるなど、面接社数が多くなると2022卒の割合が高まる傾向となっています。
 理系も同様で、「0社」は2021卒が2022卒よりも5ポイント低かったものの、「1社」~「4~5社」の割合は、いずれも2021卒が最も高くなっています。文系と同様、「6~10社」では2022卒のほうが6ポイントも高くなるなど、それ以上の社数では2022卒が上回っています。
 2022卒の調査結果は、2021卒よりも2020卒の調査結果に近いデータとなっていますが、社数が多くなると2020卒の結果よりもさらに高くなる傾向にあります。面接がほぼすべて対面型で実施されていた2020卒と比べて、2022卒採用はオンライン化が昨年よりもスムーズに進行していることもあり、面接社数のかさ上げに大きく寄与しているものと推測されます。

オンライン型が面接の主流に

 次に、1社以上の面接を経験した学生を対象に、参加した面接の形式(対面型/オンライン型)を聞いた結果を見てみましょう。対面型とオンライン型を併用していた企業については、それぞれで社数をカウントして回答してもらっています。
 文系では、対面型を「0社」(オンライン型しか経験していない)と回答した学生が53%と過半数に達しています[図表8]。対面型を経験した学生の社数内訳を見ても、「1社」が28%と3割近くある以外、「2社」以上はすべて1桁以下にとどまっています。

[図表8]面接の形式別受験社数(文系)

 一方、オンライン型は、「0社」(対面型しか経験していない)はわずか9%にとどまり、こちらも「1社」の26%が最多ではあるものの、「2社」17%、「3社」15%、「4~5社」16%、「6~10社」も12%となるなど、複数社数の受験者も少なくありません。「11社以上」(「11~15社」~「21社以上」の合計)と回答した学生も5%いるなど、2022卒採用の面接は、オンライン型が明らかに主流となっていることが分かります。
 理系ではこの傾向がさらに顕著です[図表9]。対面型を「0社」(オンライン型しか経験していない)と回答した学生は67%と3分の2に及ぶとともに、オンライン型を「0社」(対面型しか経験していない)と回答した学生はわずか3%です。オンライン型の社数内訳でも、「1社」の28%に続いて「2社」も24%と多くなっています。

[図表9]面接の形式別受験社数(理系)

 続いて、オンライン面接を経験した学生を対象に、オンライン面接のタイプを聞いてみました。最も多かったのは、Zoom等のオンライン会議ツールを利用しての「WEB面接(オンライン会議方式)」で、文系98%、理系99%とほとんどの学生がこのタイプを経験しています[図表10]。オンライン面接を実施している企業においては、この形式を採り入れている企業がほとんどであるともいえます。

[図表10]経験したオンライン面接のタイプ(複数回答)

 次に多かったのが、エントリーシート同様の事前選考や、一次面接で使用されることの多い「WEB面接(動画収録方式)」(文系27%、理系17%)です。学生の立場からすると、オンライン会議方式でのライブ面接は対面型の面接と同様に日時を指定されるのに対して、動画収録方式は指定された期間内であれば、24時間いつでも自分の好きな時間帯に面接を受ける(録画をする)ことができることが最大のメリットです。また、多くの場合、自分が納得するまで撮り直しができることも、学生にとっては有り難いところでしょう。
 一方、企業側の立場からも、いつでも採用担当者の都合の良い時間帯で録画内容を確認することができるメリットがあります。その他、複数の担当者が時間を合わせることなくそれぞれ録画をチェックすることができる点や、不合格と判断した学生の面接を最後まですべて見なくても済むという効率的な点もメリットと受け取られているようです。近年はさらに、発言内容、音声・スピード、映像等のデータからAIが参考指標を提示してくれる機能も評価されているようです。
 面接でのAIにはもう1タイプあります。それが、学生の回答内容に応じてAIが次の質問を投げ返す、まさに面接官の代わりを務めるタイプです。ただし、こちらのタイプはAIの質問と学生の回答がループ状態に陥ったり、面接時間が決まった時間内に終了しなかったりと、運用面ではまだ課題があるようです。採用している企業もまだ少ないようで、経験した学生も文系で5%、理系では1%とごくわずかにとどまります。

2020卒ペースの内々定率に

 次に、3月中旬段階での内々定率について見てみましょう。2021卒採用を振り返ってみると、新型コロナ感染症が拡大する中で、説明会や面接選考が中止や延期となったり、あるいは新卒採用自体の見直しが実施され、新卒採用の中止や採用数の減少を打ち出す企業が現れたりしたのは3月以降のことで、前半戦は2020卒採用よりも却って早いペースで内々定出しが進行していました。そのため、3月時点での調査結果では、2020卒よりも2021卒のデータのほうが内々定率では先行していたわけです。
 前述のセミナー・説明会や面接と同様に、内々定取得社数についても文理別に過去3年の調査結果を比較してみたのが、[図表11][図表12]のデータになります。

[図表11]内々定取得社数の3年比較(文系)

[図表12]内々定取得社数の3年比較(理系)

 文系では、内々定取得社数が「0社」と回答した学生が76%で、77%だった2020卒とほぼ同じ結果になっています。「0社」が76%とは、裏返せば「1社以上」の内々定取得者が残り24%、すなわち内々定率24%を意味します。前半戦が早いペースで進行していた2021卒は、内々定率が29%でしたので、3月時点では昨年より内々定出しのペースが遅いと言えます。社数の内訳を比較しても、これまでよりも多くの企業で内々定出しが進んでいることはうかがえません。
 一方、理系の内々定率(「0社」を除いた割合)は42%で、2020卒の32%よりも2021卒の45%に近い数値となっています。内々定率はわずかに昨年に及ばないものの、「3社」と回答した割合は昨年よりも2ポイント、一昨年と比べると4ポイントも高くなるなど、理系は極めて早いペースで選考、内々定出しが進行していることがうかがえます。
 今度は、内々定取得時期で過去3年間の結果を比較してみましょう。内々定取得者を対象に、[図表13]は文系、[図表14]は理系について、すべての内々定を取得した時期を複数選択方式で回答してもらった結果の比較データになります。

[図表13]内々定取得時期の3年比較(文系・複数回答)

[注]大学院生の場合には、「3年生」=「修士1年生」を指す([図表14]も同じ。)

[図表14]内々定取得時期の3年比較(理系・複数回答)

 文系では、2020卒と2022卒の「3年生3月」がともに48%となり、「同2月」の20%、29%から大きく伸びているのに対して、2021卒は「同2月」が2022卒と同じ29%であったものの、「同3月」は32%とほとんど伸びることなく、選考・内々定出しのスピードに急激なブレーキがかかったことがうかがえます。
 もう一つ、2021卒は2020卒と比べて「同2月」までは極めて早いペースで内々定出しが進んでいたわけですが、「同12月」以降は2022卒もそれに近いペースで内々定出しが進み、「同3月」では逆に2021卒を大幅に上回るペースで内々定出しが行われています。
 理系もほぼ同様です。「3年生2月」までは2021卒が上回っていますが、「同12月」以降は2022卒もそれに近いペースで内々定出しが進み、「同3月」で大きく逆転しています。この後、2021卒はしばらく内々定出しのスピードが停滞しますので、2022卒の内々定率が今後どんどん引き離していくことが予想されます。現に、就職ナビ各社が発表する月次の内定率調査では、2021卒を大きく上回り、2020卒並みかそれ以上に回復してきているとしています。

2022年卒業予定の大学生・大学院生の5月末時点での内々定率は59.9%(前年比11.9ポイント増)、平均内々定保有社数は2.0社(前年比0.3社増)であった。内々定率は新型コロナウイルス感染拡大以前の2020年卒並みとなっている。また、全体の31.4%が活動を終了したと回答した(マイナビ 2021年6月7日発表)

6月1日時点の大学生(大学院生除く)の就職内定率は、68.5%(+11.6ポイント)となりました。引き続きコロナ禍以前の2020年卒と同水準となっています(リクルート 2021年6月7日発表)

6月1日現在の学生モニターの内定率は 71.8%。先月調査(5月1日、58.4%)からの1カ月間で13.4ポイント上昇し、前年実績(64.0%)を7.8ポイント上回った。今期は序盤から早いペースで進行。前年のみならず、新型コロナウイルスの影響がなかった2年前に比べてもかなり高い水準で推移してきたが、選考解禁のこのタイミングで2年前(2020年卒者、71.1%)とほぼ同水準になった(ディスコ 2021年6月7日発表)

採用活動はマーケティング活動へ

 最後に、インターンシップ(ワンデー仕事体験含む)と内々定の関係について見ておきましょう。インターンシップ参加実績があり、かつ、すでに内々定を取得している学生だけを対象に、内々定取得企業の中にインターンシップ参加企業が何社あるのかを聞いてみた結果が[図表15]です。

[図表15]インターンシップ参加企業からの内々定取得社数

 「0社」、つまり内々定は取得しているものの、インターンシップ参加企業からは内々定は取得していないと回答した割合は、文系で26%、理系で25%と、約4分の1です。残りの文系74%、理系75%、つまり約4分の3の学生は、インターンシップ参加企業の中から、最低1社は内々定を取得しているということになります。内々定を取得した企業数の内訳を見てみると、「1社」が最も多く、文系53%、理系50%と約半数になります。残りの約4分の1は2社以上から内々定を取得しており、中には「4~6社」が3%、「7~9社」が2%など、参加した多くの企業から内々定を取得している学生もいます。
 早期の内々定取得者は、それだけ早くから企業と接触していたという証であり、サマーインターンシップをはじめ、昨年のうちに開催されたインターンシップ経由の比率が高いことは想像できます。ただ、この3月の段階では、大手企業からの内々定出しはまだそれほど進行していないでしょうから、今後、インターンシップ参加企業から内々定を取得する学生はまだまだ増えるものと思われます。
 インターンシップは、企業にとっても学生にとっても、採用・就職活動のマストアイテムとなっています。今後、企業はさらにインターンシップ当日のプログラム自体に磨きをかけることはもちろんのこと、インターンシップ募集方法から始まり、インターンシップ参加後のフォロー、そしてインターンシップから選考へと、どうスムーズにつなげていくかをストーリー立てて練り込む、いわゆるカスタマーエクスペリエンス、カスタマーサクセスを考えていく必要がありそうです。まさに、採用活動はマーケティング活動と変わりなく、採用担当者はマーケティングの知識も身に付ける時代が来たといえます。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/