建設現場でアスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などの病気になった元労働者や遺族のうち、国などに損害賠償を求める訴訟を起こしていない人を対象とした給付金制度を創設する法律が9日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。健康被害の程度に応じ1人当たり550万~1300万円を支給するのが柱。制度は来年度に運用が始まる見通しで、訴訟原告らの求めていた幅広い被害救済の実現へ向けて大きく前進する。
政府は給付対象者を最大約3万1千人、かかる費用を総額約4千億円と見込み、国費から基金を積む。
同法によると、有症者や療養中の人の給付額は病態に応じて550万、700万、800万、950万、1150万円の5段階。亡くなった人は病状により1200万~1300万円となる。
申請は各地の労働基準監督署などで受け付け、厚生労働省が被害の内容を審査、認定。同省所管で、労働者の未払い賃金立て替え事業を行う独立行政法人「労働者健康安全機構」(川崎市)を通じて支給する。
受給後に症状が悪化した場合、進行後の病態で得られる給付額との差額を申請可能。
建設アスベスト訴訟では5月に最高裁が国の賠償責任を認める初の統一判断を示し、菅義偉首相が原告団・弁護団と面会、謝罪した。政府は原告への和解金支払いや、訴訟外の被害者を救済する給付金制度創設などを盛り込んだ和解内容で原告らと基本合意した。
(共同通信社)