厚生労働省は23日、仕事が原因でうつ病などの精神障害を患い、2020年度に労災認定されたのは前年度比99件増の608件だったと発表した。1983年度の統計開始以降、2年連続で最多を更新した。原因別では、昨年、認定基準項目に追加された「パワーハラスメント」が99件で最も多かった。自殺(未遂含む)の認定は前年度比7人減の81人。新型コロナウイルス感染症に関連する認定も7件あった。
パワハラによる労災は近年、社会問題化してきた。パワハラの項目が新設されたことで、改めて、劣悪な職場環境がまん延している実態が浮き彫りになった。パワハラ自殺を巡っては、トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=について、今年4月に同社が因果関係を認め遺族側と和解している。
厚労省によると、原因ではパワハラに続き、「悲惨な事故や災害の体験、目撃」83件、「同僚などからの暴行、いじめ・嫌がらせ」71件の順に多かった。
申請は2051件で過去2番目の多さ。うち女性は999件、48・7%を占め、5年前に比べ約10ポイント増えた。業種別にみると申請、認定とも「社会保険・社会福祉・介護事業」が最も多かった。
一方、過重労働が原因の脳・心臓疾患での労災申請は784件と、過去5年間で最も少なかった。認定は194件、うち死亡(過労死)は67人。発症前2~6カ月の残業が月平均80時間などとした「過労死ライン」を盛り込んだ認定基準が反映された02年度以降で、いずれも最少となった。
厚労省の担当者は「働き方改革やコロナ禍を背景に、労働時間が減ったことが影響したのでは」としている。業種別にみると、申請、認定とも「道路貨物運送業」が最多だった。
厚労省は脳・心臓疾患の労災認定基準について、今秋にも20年ぶりに見直す方針。同省の専門家検討会が今月22日、残業が過労死ラインに届かない場合でも、不規則勤務などの有無を踏まえ認定できるとの内容を盛り込んだ報告書案を示した。
(共同通信社)