2021年07月09日掲載

BOOK REVIEW - 『仕事のアンラーニング ―働き方を学びほぐす―』

松尾 睦 著
北海道大学大学院経済学研究院教授 
A5変型判/224ページ/定価2000円+税/同文舘出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 「過去の成功体験から抜け出せない人は、仕事で通用しなくなる」――これは多くの人が理解し、また実感していることではないだろうか。自身のキャリアや仕事内容、外部環境などが変化する中で、これまでに得た知識やスキル(=ノウハウ)を捨て、新しい知識・スキルを取り入れる「アンラーニング」は重要である。アンラーニングに関し、これまで「組織」視点での研究は数多く進められてきたが、本書では「個人(職場で働く人)」に焦点を当て、どのようにアンラーニングし、成長しているのかを検討していく。

 本書は大きく3部構成となっており、著者がこれまでに行ってきた学術研究のエッセンスが詰め込まれている。第1部では、アンラーニングとは何かを説明した上で、さまざまな業種で働く人を対象とした自由記述調査からその全体像を俯瞰(ふかん)する。続く第2部では、アンラーニングを促す個人要因として「学習志向」「内省(出来事を振り返ること)」「自己変革スキル」の三つに着目。「どのような目標を大切にし」「いかなる振り返りをし」「どのような変革スキルを持っている」とアンラーニングができるのかを明らかにする。そして、第3部では直属の上司の働き方や自身の昇進(本書では役員への昇進を取り上げる)といった状況要因が与える影響を分析している。

 アンラーニングは、「学びほぐし」とも言われ、硬直した知識やスキルをほぐして新しく組み立てなおすという意味を持ち、ノウハウのアップデートを"意図的"に実践していくことだと定義される。新型コロナウイルスの感染拡大により世界は激変し、否が応にも仕事の進め方を転換せざるを得ない状況となった。キャリアに伸び悩む方や、今後さらに成長し続けたいと考えている方こそ、ぜひ本書を手に取り、アンラーニングとは何か、その本質を知っていただきたい。それこそが、アンラーニングの第一歩かもしれない。

 



仕事のアンラーニング ―働き方を学びほぐす―

内容紹介

人や組織は、過去の成功経験に固執すると環境に適応できなくなる。
身につけた自分の型を問い直し、解体し、組み替える、
「捨てる学習」(アンラーニング)について事例を基に解説!


時代に合わなくなった知識やスキルを捨てつつ、新しい知識・スキルを取り込む「アンラーニング(学びほぐし)」。職場で働く人は、どのようにアンラーニングし、成長しているのかを検討する。
立教大学経営学部 中原淳教授推薦!