代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
HR総研では、今年も就活会議株式会社が運営する就活生向けクチコミサイト「就活会議」との共催により、7月に採用担当者と就活生を対象として、これまでの活動を振り返って、それぞれの目線からの印象深いエピソードをテーマにした「2022年卒 採用川柳・短歌」と「2022年卒 就活川柳・短歌」を募集しました。今回は、本編に入る前に、その入選作品を幾つか紹介したいと思います。
昨年に引き続き、最大のトピックは今年も「オンライン面接/Web面接」となりましたが、前回とは少々違った見方をした作品が数多く見られました。ぜひご一読ください。
マスク姿の履歴書写真の意味するものは
まずは、採用担当者による「採用川柳・短歌」の入選作品から紹介します。
【最優秀賞】はこちらです。
履歴書に マスク姿の 顔写真 (東京都 GLさん)
コロナ禍での選考は、オンラインならマスク着用なし、対面なら感染症対策としてマスク着用で行われるものです。通常、履歴書にはマスク直用なしの写真だけが添付されているものですが、どちらの場合にも人事担当者が自分を認識できるように、わざわざ両方の写真を添付した履歴書を送ってくれた応募者がいたとのこと。人事担当者の驚く顔が目に浮かびます。
対面で行われるのは何も面接だけではありません。内定すれば、内定者フォローの集まりを集合型で実施することもあるかもしれませんし、来年4月の入社式やその後の研修は対面で行われる可能性は大いにあります。マスクの着用ありなし両方の写真を送ってくれたことの真意は分かりかねますが、それを見越しての対応だとしたら大したものです。果たして、マスク姿の写真は役に立ったのでしょうか。
続いて【優秀賞】の2作を紹介します。
Uberで 届けて欲しい 内定承諾 (東京都 きゅうぴいちゃんさん)
就活生は内定が喉から手が出るほど欲しい一方、内定を出した企業の人事担当者は、一刻も早く「内定承諾」の返事が欲しくてしょうがないものです。手数料を払ってでもいいから早く届けて欲しいという、その切実な作者の思いを、コロナ禍で急成長する手軽なデリバリーサービス「Uber」に例えて表現した、秀逸な作品です。
果たして、この作者の思いは内定を出した学生にしっかりと伝わったのでしょうか。どうか届け先を間違えないように配達してほしいものです。
「釣りが趣味」 深掘りしたら 「あつ森」ね (新潟県 うさたろうさん)
趣味が「釣り」というアウトドアなイメージが、「ゲームソフト『あつまれどうぶつの森』での釣り」となることで、一気にインドアなイメージに大転換してしまいます。大事な情報を応募者に隠されていたことに気づいた作者の気持ちと、今どきの学生にはこういうことも想定しないといけないのかも、という参考事例をユーモラスに紹介している作品。
学生にしてみれば、コロナ禍でどこへも行けない環境での楽しみといえば、室内でできるゲームやSNSしかない状況にあることも考慮して、寛大な評価をしてあげてほしいところです。
一度も会わずに終わる今どきの採用活動
佳作からも二つの作品を取り上げます。
オンライン 内定出せば 辞退され 会えずに終わる 今の新卒
(東京都 うすみどりさん)
苦戦し続ける自社の状況を自虐的に描くことで、今の採用活動において主流となるオンライン採用が、企業と応募する学生のつながりをいかに希薄にしているか、人事担当者を代表した嘆きともいえる作品です。
それにしても、すべてオンライン面接で選考し、内定を出しても内定辞退となり、一度も対面で会うこともなく、応募学生との関係が終わるというこの状況は、あまりにもバーチャル感に溢れ、採用活動の手応えどころか活動の実感も湧かないのではないでしょうか。
君来ると 終わるはずだよ 採用は 始まるはずだよ インターン
(神奈川県 学生を信じ続けて十数年さん)
あと一人の内定者が内定承諾してくれれば、2022年卒学生の採用活動が終わるかという採用活動の佳境となるころには、もう2023年卒向けのインターンシップが始まるという、休みなく続く採用活動の忙しさが良く伝わる作品。「終わるはずだよ」と「始まるはずだよ」の対比が見事です。
できれば今年度の採用活動をすっきり終えて、心新たに次年度のインターンシップに臨みたいところでしょうが、それも自分たちでは決められず、あと一人の内定者の決断に委ねられているというのは、何とも歯がゆいことでしょう。
[図表1]「2022年卒 採用川柳・短歌」入選作品
入選 | 作品 |
最優秀賞 | 履歴書に マスク姿の 顔写真 |
優秀賞 | Uberで 届けて欲しい 内定承諾 |
「釣りが趣味」 深掘りしたら 「あつ森」ね | |
佳作 | DX 担当の机 ペーパーフル |
画面越し 俳優張りに リハ重ね | |
オンライン 内定出せば 辞退され 会えずに終わる 今の新卒 | |
入社式 リアルで実施も マスクあり 誰が誰だか わからない | |
熱い想い 語るもずっと 音ミュート | |
一社目は 御社「でも」いい なるほどね | |
面接は Zoomが基本 Z世代 | |
加工され 証明写真が Miiのよう | |
君来ると 終わるはずだよ 採用は 始まるはずだよ インターン | |
WEB面接 ひらり舞い飛ぶ カンペメモ |
(出所)HR総研、就活会議「就活会議」([図表2]も同じ)
オンライン慣れした学生には、対面型面接がハードル
ここからは就活生による「就活川柳・短歌」です。まずは、【最優秀賞】からです。
最終で 初の対面 意気込めど いきなり役員 何も話せず (神奈川県 白くまさん)
コロナ禍での面接形態は、従来からの対面型ではなく、オンライン面接が主流となっています。大手企業はもちろんのこと、昨年はすぐに対応できなかった中小企業でも、今年はオンライン面接を実施する企業のほうが多くなっています。オンライン面接に向けた入念な対策が奏功し、ついに最終面接にまでたどり着いたところ、最終面接だけはオンラインではなく、対面で行うことに。初めて体験する対面型の面接というだけもさぞかし戸惑い緊張し、いつもの力を発揮しづらい状況にもどかしさを感じたことでしょう。ましてや面接の相手が若手人事担当者ではなく、役員となればなおさらです。
オンライン面接ではあれば簡単に答えられた内容でも、対面型となると話は別です。上はスーツでも、下はジャージというリラックスできる格好で、無機質なPCモニターに向かって話すのとはわけが違います。上下を着慣れないリクルートスーツでびっしり固め、もちろんカンペを貼っておくこともできません。目の前には、すべてを見透かすような、眼光鋭い生身の人間がこちらを凝視しているのですから、緊張のあまり何も話せなくなるのも分からなくありません。
「最終」と「初」という、相対する単語を並べることで、作者の心の叫びが見事に表現された秀逸な作品だと思います。今年は、最終面接だけは対面で実施した企業が急増しており、同じ境遇に陥った学生が他にもたくさんいたはずです。きっと多くの学生から共感されることでしょう。
続いて【優秀賞】です。
落ち続け 頭によぎる YouTuber (神奈川県 ビーバーさん)
面接に落ち続けて終わりの見えない就活を続けることで、もう就職できないのではないかと自分の将来に不安を募らせる中、いつも見ているYouTubeに思いを巡らせ、いっそYouTuberの道をと真剣に考えた時期があると作者。現実逃避を始めたくなるほどの作者の苦しみを、「YouTuber」という現実逃避の象徴と思われがちな職業を出すことで、端的に表現されています。作者が望む「好きなことで生きていく」ということは、ある意味では幸せだと思えますが、好きなことが仕事になる辛さもあるはずです。大好きなYouTubeで気分転換しながら、悔いを残さない就職活動にしてほしいものですね。
「あなたらしい写真」を求めるのは無茶ぶり
佳作作品からも2点紹介します。
あなたらしい 写真を撮るため 遊びたい (大阪府 浸水さん)
コロナ禍という閉塞的な環境の中で学生生活を送らざるを得ない今年の就活生にとって、「あなたらしい写真」を求められることは、ある意味で無茶ぶりだと言われても仕方がないのかもしれません。そんな作者の心の叫びが聞こえてくる、皮肉たっぷりな良くできた作品です。部活動・サークル活動に没頭したり、海外留学をしたり、全国・世界を旅して回ったり、ボランティア活動に勤しんだり、お酒を飲みながら夜遅くまで(あるいは朝まで)議論を戦わせたりといった、学生の時にしかできない貴重な経験をしたり、何より一生ものとなる学生時代の友人との密な時間を思う存分楽しめるよう、新型コロナウイルスが落ち着きを見せ、安全安心な社会が早く戻ってくることを祈るばかりです。
WEB面接 目線はカメラ 相手だれ (岐阜県 ラブさん)
オンライン面接での目線問題は、学生も面接官も悩ましく感じている課題です。この作者は、面接官の印象を良くしようと最後までカメラ目線を貫いた結果、面接官を一度も見ることができず、面接官がどんな顔だったのかさえ覚えていないという状況を、最後の「相手だれ」でうまく表現しています。
カメラ目線と相手を見るタイミングやバランスは、オンライン面接対策の中でも難しい問題の一つでしょう。たまにはカメラから目線を外し、相手がどんな顔をして、どのように話を聞いているのか、画面をしっかり見ながら話すこともしてほしいものです。相手が頷いてくれている様子を見ることができれば、きっともっと話しやすくなるはずです。
[図表2]「2022年卒 就活川柳・短歌」入選作品
入選 | 作品 |
最優秀賞 | 最終で 初の対面 意気込めど いきなり役員 何も話せず |
優秀賞 | 落ち続け 頭によぎる YouTuber |
佳作 | オフライン 接続不良か 吃りがち |
ウェブ面接 ラグがある度 揺らぐ未来 | |
あなたらしい 写真を撮るため 遊びたい | |
副作用 怖くて打てず 最終へ 就活終えて ワクチンか | |
印象派 傍目はまるで YouTuber | |
気をつけて 名前の表示 ニックネーム | |
頼むから 内定祝いの ケーキプレート ストーリーには 載せるな友人 | |
オンとオフ 切り替え忘れる WEB面接 | |
平熱で 熱意伝える 面接日 | |
書類落ち 最終で落ち 皆同じ 友も自分も 同じ期待値 | |
WEB面接 目線はカメラ 相手だれ | |
癖抜けぬ 家出て気づく 下ジャージ ダッシュで着替え 内定奪取 |
HR総研のオフィシャルページでは、「2022年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」の全入選作品について、作者の思いを踏まえての寸評・解説も掲載しています。それぞれの作者がどんな気持ちでこの川柳や短歌を詠んだのか、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。
オンライン対応は重要施策からやや後退
さて、ここからは前回に引き続き、HR総研が2021年6月7~14日に企業の採用担当者を対象に実施した「2022年&2023年新卒採用動向調査」の結果を見ていきましょう。今回は、2023年卒向けの採用活動動向です。
まずは、2023年卒採用でより重要になると思われる施策について聞いてみた結果です[図表3]。得票が過半数に及んだ施策はなく、集中というよりもかなり分散した形になっています。
[図表3]2023年卒採用で、より重要になると思う施策(複数回答)
資料出所:HR総研「2022年&2023年新卒採用動向調査」(2021年6月。以下図表も同じ)
そんな中で最も多かったのは、「自社採用ホームページ」の34%で、「自社セミナー・説明会」が33%で続きます。昨年の同時期調査(2022年卒採用向け)の最多は「オンラインでの自社セミナー・説明会」が42%、次いで「オンラインでの面接」が38%、そして3位に「自社採用ホームページ」が31%で続きました。オンライン化初年度だった昨年は、次のシーズンに向けてもオンライン対応を重要施策として捉えていたようです。ところが、2年目となる今年は「オンライン会社説明会」は27%で5位、「Web面接(オンライン会議方式)」は20%で6位に後退しています(選択肢の項目名は前年と少し異なります)。
逆に昨年は、「自社セミナー・説明会」は15%に過ぎず、11位と上位には入っていませんでした。昨年の段階では、対面型のセミナー・説明会の実施はまだ困難で、オンライン化をさらに進めていく必要を感じていたのに対して、今年は遅れているとはいえ新型コロナウイルスワクチン接種の進行もあり、来年の採用では対面型のセミナー・説明会が開催できる環境になっているのではないかという期待が込められているのかもしれません。また、オンライン化対応のノウハウはこの2年である程度蓄積されたため、重要度がやや低下したという見方もできるかもしれません。
3分の2の企業が対面型インターンシップを予定
次に、前項の重要施策の3位にもランクインしていた「(2023年卒向け)インターンシップ」について、見ていきたいと思います。まず、実施意向について、全体では「未定」企業が24%と4分の1近くあるものの、「これまでは実施していないが、実施する予定」と「これまでも実施しており、実施する予定」を合計した「実施する予定」(以下同じ)は55%と過半数に及び、「未定」企業を除外して集計した場合には、73%と7割を超えます[図表4]。
[図表4]インターンシップの実施予定
従業員規模別に見ると、1001名以上の大企業では、「これまでは実施していないが、実施する予定」が9%と1割近くもあり、「実施する予定」は76%に達し、「未定」(14%)を除けば、実に90%にもなります。インターンシップを実施しない企業が極めて珍しい状況にまでなっています。301~1000名の中堅企業と300名以下の中小企業では、それぞれ「実施する予定」は58%、46%ながら、「未定」(23%、28%)を除けば75%、64%になります。どの企業規模でも、「これまでは実施していたが、実施しない予定」とする企業が極めて少ないことが特徴で、大企業に至ってはゼロとなっています。選考の早期化に乗り遅れないようにするためには、インターンシップを実施せざるを得ないというのが企業の本音ではないでしょうか。
次に、予定しているインターンシップの実施形態について見てみましょう。全体で最も多かったのは「オンライン型と対面型の両方を実施する」の40%で、「オンライン型のみで実施する」が28%、「対面型のみを実施する」が25%となっています[図表5]。
[図表5]インターンシップの実施形態
「オンライン型と対面型の両方を実施する」割合を、「オンライン型のみで実施する」と「対面型のみを実施する」に加算したものを、それぞれ「オンライン型で実施する」、「対面型で実施する」(以下同じ)とすると、前者が68%、後者が65%となります。3分の2近い企業が「対面型で実施する」ことを予定しているのは注目です。インターンシップの実施に当たっても、[図表3]で見たように、対面型での実施が可能になるだろうと見ている企業が多いことが分かります。
従業員規模別に見ると、「対面型のみを実施する」企業は、大企業では7%と少数派なのに対して、中小企業では46%と半数近くにまで及びます。その結果、「対面型で実施する」企業の割合は、大企業で51%、中堅企業で63%、中小企業では74%と企業規模が小さくなるほど、対面型での実施を予定しています。ただ、大企業ですら51%と半数以上の企業が、対面型のインターンシップを予定していることにやや驚きを感じています。
予定しているインターンシップの日数タイプについても見てみましょう。全体では、「1日程度」が49%と半数近く、次いで「2~3日程度」35%、「半日程度」31%、「1週間程度」24%と続きます[図表6]。
[図表6]インターンシップの日数タイプ(複数回答)
従業員規模別に見ると、すべての規模で「1日程度」が最多となっているものの、大企業の37%に対して中堅企業は63%となるなど、規模による差異は見られます。また、大企業では「2~3日程度」も「1日程度」と同じく37%で並んでいます。また、「半日程度」と「1週間程度」も33%で並ぶなど、日数タイプがほぼ同程度で横並び状態になっています。全体傾向に最も近いのは中小企業で、「1日程度」が46%で最多、次いで「2~3日程度」38%、「半日程度」28%、「1週間程度」21%となっています。中堅企業では、「1日程度」に次いで「半日程度」が多くなっており、インターンシップを会社説明会やセミナーに近い位置づけとして捉えている企業の割合が最も高そうです。
なお、「1カ月以上」の長期インターンシップを実施する企業は、ITベンチャーを中心に中小企業が多いイメージがあります。確かに中小企業が8%で最も多くなっていますが、大企業でも4%あるのに対して、中堅企業ではゼロとなっています。このあたりにも、中堅企業におけるインターンシップの位置づけが他の規模の企業と異なる点がありそうです。
秋シーズンにもインターンシップ開催へ
次に、インターンシップの実施予定時期についても見てみましょう。全体で最も多く実施されるのは「2021年8月」で58%、次いで「同年9月」が52%で続きます[図表7]。
[図表7]インターンシップの実施予定時期(前年比較・複数回答)
昨年の同時期調査では、突然始まった新型コロナウイルス感染症対応により、採用活動が中断したり、オンライン化対応のためにスケジュールが遅れたりしたこともあり、次年度に向けたインターンシップの実施時期について「9月」(57%)が「8月」(48%)を上回るなどしましたが、今年は例年のように「8月」がピークとなっています。昨年は15%しかなかった「7月」も、今年は28%と倍増に近い割合になっています。
7月開催の企業がこれだけ増えた背景には、大きく二つの理由があると思われます。一つは、これまで就職ナビ頼りだったインターンシップの募集について、6月1日以降という時期的な制約を受けない自社採用ホームページで告知や参加申し込み受付をする企業が増えたこと。もう一つは、その就職ナビ自体も、かつてのようにインターンシップ情報の掲載や参加申し込み受付を6月1日から開始するのではなく、5月からインターンシップ情報の掲載と参加申し込み予約を始めており、6月1日はあくまでも就職ナビから企業へ参加申し込み受付データの受け渡し開始日に過ぎなくなったことです。就職ナビでインターンシップ募集を知り、参加申し込みはその企業の採用ホームページからという動きもあります。実質的な募集や参加申し込み受付を早めることができれば、7月のインターンシップも実施可能になってきたというわけです。
もう一つ、昨年の調査と比較して明らかに異なるのは、「2021年10月」「同11月」の秋シーズンに実施を予定している企業の多さです。昨年と比べてみると、「10月」:昨年31%→今年38%、「11月」:昨年31%→今年36%となっています。「12月」は昨年も今年も40%で変わりません。オンライン開催が可能になったことで、長期休暇のない秋シーズンにも実施を計画する企業が増えたものと思われます。
従業員規模別にも見てみると、大企業では「2021年9月」が70%で昨年と同様に最も多く、次いで「同8月」と「同10月」がともに63%で並びます[図表8]。
[図表8]インターンシップの実施予定時期(従業員規模別・複数回答)
「同11月」43%、「同12月」52%も比較的高く、逆に二つ目の山になるべき「2022年1月」は37%、「同2月」は33%と少なくなっており、山どころか「11月」「12月」よりも少なくなっています。「1月」と「2月」にはもう実施しないということではなく、あくまでも日程・内容の未確定が理由だと思われます。
中堅企業では、「2021年8月」が67%で最も多く、次いで「2022年2月」が60%、「2021年9月」が57%で続きます。秋シーズンは30%台にとどまっており、過去のこれまでの傾向に最も近い結果となっています。中小企業は、「2021年8月」が最も多いとはいえ49%と半分に満たず、その代わり「2021年6月以前」(「2021年5月以前」と「2021年6月」の合計)が25%と他の規模の企業よりも突出して多くなっているとともに、「2022年3月以降」も15%で他の規模の企業より多くなっています。早期開催組と後半開催組も多いことから、採用シーズン内に大きな山を形成することなく、時期を問わず満遍なく実施される傾向となっています。
対面型のセミナー・説明会の復活はあり得るのか
最後に、セミナー・説明会の実施形態について見てみましょう。全体では、「未定」の企業が26%と4分の1以上ありますが、最多は「対面型とオンライン型の両方を実施予定」で40%、次いで「オンライン型のみを実施予定」が28%、「対面型のみを実施予定」はわずか6%となっています[図表9]。
[図表9]セミナー・説明会の実施形態
「未定」企業を除外して、方針がはっきりしている企業だけで再集計してみると、「対面型のみを実施予定」9%、「対面型とオンライン型の両方を実施予定」54%、「オンライン型のみを実施予定」38%となります。「対面型のみを実施予定」と「対面型とオンライン型の両方を実施予定」を合計した「対面型実施予定」(以下同じ)は63%と6割を超えることになります。
従業員規模別に見ると、大企業で「対面型のみを実施予定」はゼロですが、「対面型とオンライン型の両方を実施予定」と「オンライン型のみを実施予定」はともに37%となり、「未定」(26%)を除外すると、ともに50%となります。つまり、すべての企業がセミナー・説明会をオンライン型で実施するものの、半数の企業は対面型でも実施を考えているということになります。同様に中堅企業、中小企業も「未定」を除外して集計し直してみると、「対面型実施予定」の企業はそれぞれ53%、74%と、規模が小さくなるほど「対面型実施予定」の割合は高くなり、中小企業では4分の3近くにもなります。
前回の本稿の[図表3]では、2022年卒採用のセミナー・説明会において、「対面型」で実施した企業の割合は、大企業43%、中堅企業42%、中小企業44%となっていました。「(セミナー・説明会を)実施していない」企業も含まれていましたので、それを除外して集計し直すと、大企業44%、中堅企業46%、中小企業65%となります。前年比較では、「対面型実施予定」の企業の割合は、大企業6ポイント、中堅企業7ポイント、中小企業9ポイントのアップとなっています。
これまで見てきたように、「対面型」への揺り戻しが起こりそうですが、変異株(デルタ株)の影響は大きく、新型コロナウイルス感染者は増加の一途をたどっており、国内でのワクチン接種がある程度進行したとしても、対面型での開催実現にはまだまだ時間がかかりそうな気配です。
次回は、就活生を対象にした「2022年卒学生の就職活動動向調査」の結果について、見ていきたいと思います。
寺澤 康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 http://www.hrpro.co.jp/ |