2021年08月13日掲載

BOOK REVIEW - 『遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み』

神谷 俊 著
株式会社エスノグラファー代表取締役、バーチャルワークプレイスラボ代表 
四六判/296ページ/1600円+税/日経BP 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 テレワークの浸透により働き方や職場環境が変化する中、社員一人ひとりが自律的に働くことの重要性を感じている企業は多いだろう。しかし、メンバーに権限を委譲するなど、社員の自律を促す取り組みをしても、思ったような効果が得られず、かえって社員のモチベーションが下がってしまうケースもある。それは、義務感や責任感によって自分をコントロールする、「真面目」な自律を基軸としているからかもしれない。本書では、社員の自律をより高次のもの――自らの価値観や仕事の面白さ・楽しさを燃料とする、「遊び」による自律――に引き上げ、チームの成果を上げるノウハウを解説する。

 「遊び」による自律とは、前述の「真面目」な自律を超えて、仕事が"自分事"化され、仕事を楽しんでいる状態を指す。「しなければならない」「やるべき」という義務感や責任感に基づくものではなく、自分が「したい」「やりたい」と思いながら取り組むものだ。本書冒頭の第1~2章では、そのような高次の自律が求められる背景や、「真面目さ」を基軸とする自律の問題点を整理する。そして、第3章以降では「社員自身」「管理者」「組織」のそれぞれの視点から、自律を高めるために必要なアクションやアプローチを具体的に解説していく。

 本書では、エスノグラフィー(フィールドワークによって行動観察を行い、その記録を残すこと)を専門とする著者が、複数の企業で実施した社員インタビューの内容を豊富に紹介している点も特徴だ。理論的な内容とリアルな事例を合わせて知ることで、より理解が深まるだろう。働き方が変化する中、チームで成果を出すために求められる"自律支援"とはどういうものか、本書を通じて今一度整理していただきたい。

 



遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み

内容紹介

テレワークで社員の生産性が下がるのはなぜか?
真面目さの向こうに活路を見出す、新しいマネジメントを提示する


ITを使いこなす先進企業から新型コロナの感染拡大で突然テレワークを導入した中小企業まで、多くの企業を悩ます問題の要因が、社員の自律性の高め方にある。テレワーク環境のマネジメントとして、成果目標を定め、業務役割を明確にしてセルフマネジメントを促す企業は多い。ただし、それだけでは自律性の高まりは期待できず、むしろ社員のやる気や能力の発揮を削いでしまっている側面がある。
いまひとつモチベーションが上がらない社員にとって何が足りないのか、どんなきっかけが社員を動かすのか――。著者自身の企業でのフィールドワークに基づくコンサルティング経験に裏打ちされた事例をとおして、課題の所在と具体的な改善策をわかりやすく解説する。