2021年09月10日掲載

BOOK REVIEW - 『コンプライアンスのすべて ~取り組むことが求められるこれまでとこれからのテーマ』

中島 茂 著
中島経営法律事務所 代表 弁護士・弁理士 
A5判/240ページ/定価2400円+税/第一法規 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 "法令順守"とも表現される「コンプライアンス」だが、その本来の意味は"相手の期待に応えること"だと著者は言う。法律の基準を満たしてはいても、有事の際にその対応を非難され、社会的な信用を失う企業は多々見られる。企業にとっては、ただ法律に違反しないというだけでは足りず、消費者、従業員、取引先、地域社会など、自社を取り巻く多くの人の期待に応えていくことが必要となる。本書は、ビジネスに関する主要な「法令」を解説するだけでなく、多くの事例を取り上げ、コンプライアンスの基礎的な知識と考え方を身に付けるための一冊だ。

 本書は全6Unitから構成される。Unit1では、1人のビジネスパーソンとして、働く上でコンプライアンスがどのように関係するのか、その基礎を解説する。続くUnit2~6では、「会社」「職場」「個々人の仕事」「情報」「社会」といった観点で、知っておくべき法令の目的と概要、コンプライアンスを実践するためのポイントを見ていく。関連する法令については丁寧に解説がなされており、法律分野に詳しくない人でもしっかりと理解することができるだろう。また、各Unitの終わりごとに設けられた、著者の実体験などを基にしたコラム「リーガル喫茶室」で、さらなる気づきを得られる点も特徴的だ。

 ビジネスを進める上で、「法令を知らなかった」という言い訳は通用しない。そのため、最低限の法令知識を知っておくことは重要だが、多岐にわたる法令のすべてを覚えることは現実的ではない。むしろ、「もしかして法令に違反しているのではないか」「コンプライアンスの観点で問題ないだろうか」という発想を身に付けることが重要であり、本書の活用方法の一つともいえる。ぜひ、社員へのコンプライアンス教育などで使ってみてほしい。

 



コンプライアンスのすべて~取り組むことが求められるこれまでとこれからのテーマ

内容紹介

法令順守に加え、これから企業として取り組むことが求められるコンプライアンスのすべてを理解できる解説書!

会社・職場・仕事・情報・社会という切り口から、「企業として、これまで、そしてこれから取り組むことが求められるコンプライアンスのすべて」が学べる一冊。実際の判例・事件が社会に与えた影響や、企業現場の「あなた」への助言を随所に盛り込み解説する。
巻末に理解度チェック問題集付き。