2021年09月24日掲載

BOOK REVIEW - 『サスティナブル・コーチング ―「自走する組織」の創り方』

合力知工/市丸邦博 著
福岡大学商学部教授/コーチ・コントリビューション株式会社 代表取締役 
A5判/200ページ/定価2000円+税/同友館 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 近年、生産性向上への寄与などの観点から、管理職研修等でコーチングの技術習得を取り入れようとしている企業は多い。しかし、それが長続きする、言い換えれば"持続する(サスティナブル)"ことなく、組織に根付かないケースが散見される。その要因として、著者は、「コーチ自身に、コーチングを持続可能にするパラダイム(モノの見方は考え方に影響を及ぼす認知的枠組み、あるいはそうした見方や考え方そのもの)が確立されていない」ことを指摘する。本書では、このパラダイムを確立させ、持続的にコーチングの効果を発揮させるためのノウハウを示す。

 コーチングを持続可能にするパラダイムの確立に多大な影響を及ぼす基盤として、本書では「禅的思考」「ポジティブ心理学」「脳科学」を取り上げる。第1章と第2章では、この三つの領域に関する知見と、コーチングとの関係性や重要性に触れる。その上で、第3章と第4章において、周囲の環境に左右されることなくコーチングを持続的に根付かせ、その効果を発揮させるための具体的な方法論を解説する。続く第5章では、持続的なコーチングの実践により成果を上げた学習塾の事例を、著者の1人である市丸氏のインタビュー形式で紹介している。

 最終第6章では、著者の合力氏と市丸氏によるオンライン対談の様子がまとめられており、本書に込めたコーチングに対する思いやオンラインコーチングのポイントなど、前章までの内容を補完している。コーチングの技術に関する書籍は数多く上梓されているが、"いかに根付かせるか""そのためのパラダイムの重要性"など独自の課題認識に加え、"人事評価制度における≪1on1コーチング≫の位置付け"など、一歩進んだコーチング論を提示している点が、本書の特徴といえるだろう。

 



サスティナブル・コーチング ―「自走する組織」の創り方

内容紹介

ビジネスを活性化させるために組織に導入したコーチングを、持続可能なツールとして根付かせるための方法論について、学術的な側面と実践的な側面から解説。コーチングを持続的に実践している事例も紹介する。

多くの企業で注目され、導入されているコーチングだが、コーチングを取り入れた人(組織)の中で持続されることが難しいケースが多くみられる。コーチングはコーチ自身がコーチングのスキルを学ぶことも大事だが、考え方に影響を及ぼす認知的枠組みや考え方そのものを確立する必要がある。本書ではコーチングの理論および実践を示した。