2021年10月08日掲載

BOOK REVIEW - 『経営戦略としての取締役・執行役員改革』

柴田 彰/酒井博史/諏訪亮一 著
コーンフェリー 
四六判/296ページ/定価1800円+税/日本能率協会マネジメントセンター 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 2021年は、日本で取締役・執行役員の改革が本格的に始まった"役員改革元年"として後年記憶される、大きな節目の年になると著者は言う。6月11日に東京証券取引所から施行された「改訂コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」は、取締役会の機能発揮に関して、これまで以上に大きく踏み込んだ内容となっており、役員改革への機運が高まっている。本書では、企業価値を高める"攻め"のコーポレートガバナンスを実践していくために求められる取締役・執行役員改革を論じる。

 本書は大きく2部構成となっており、第1部が「取締役改革」、第2部が「執行役員改革」を取り上げる。前半の「取締役改革」では、CGコードの改訂やスキル・マトリックス(取締役会が備えるべきスキルを特定して示した一覧表)の開示要求など、取締役会に迫る改革の圧力に触れた上で、取締役会の実効性向上とその評価に向けた改革の論点をまとめている。そして、CGコードの主要な改訂ポイントである"社外取締役"にも踏み込む。本書後半の「執行役員改革」では、そもそも執行役員制度が生まれ、普及した背景や理由等を整理し、制度が抱える課題を明らかにする。執行役員の役割や評価、処遇が曖昧かつ不明瞭であることが社外取締役から指摘されるケースも増えており、「"人"ではなく"役割"で考える役員体制」実現に向け、執行体制の四つの発展段階や今後の目指す姿が挙げられている。

 日本企業のコーポレートガバナンスが十分に機能していないのは、監督と執行が分離できていない点に主たる原因がある。健全な企業統治を実現し、企業価値を高めようとするのであれば、取締役の改革だけでは不十分であることから、本書では取締役と執行役員の両者に言及している。役員改革が本格的にスタートした2021年、その波に乗り遅れないよう、ぜひ本書をご一読いただきたい。

 



経営戦略としての取締役・執行役員改革

内容紹介

◎日本企業停滞の頑強はガバナンス未成熟にある!
◎ガバナンスがしっかりすれば、正しい意思決定がなされ、不祥事も減る!
◎そのためには、取締役と執行役員の改革を実行し、監督と執行を完全に分離すること!


日本企業のコーポレートガバナンスが十分に機能していないのは、長らく指摘されてきたとおり、監督と執行が分離できていないことが主たる原因です。
監督を行う側と、執行を任される側とが一人格化してしまっているため、健全な牽制がかかりにくい構造になっているのが現在の日本企業です。
そのため、真剣に企業価値を高めようとするならば、取締役の改革だけでは不十分であり、両者を切り離したうえで、経営執行サイドにもメスを入れる必要があります。