2021年11月12日掲載

BOOK REVIEW - 『「55歳以上」の雇用・法務がわかる本』

岡芹健夫 著
弁護士 高井・岡芹法律事務所 所長 
A5判/180ページ/定価2500円+税/中央経済社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊


 2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、従来から使用者に課されていた65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業確保も努力義務となった。一方で、加齢に伴う業務能力の低下は人によって異なり、一律の対応も難しいため、苦慮する担当者も多いのが高齢者雇用の分野である。本書は、高年齢者の処遇制度と環境整備を考える上で、人事労務・法務上で必須のポイントを網羅した一冊だ。

 本書冒頭の第1章と第2章は、わが国の企業で一般的に実施されてる定年制と、高年齢者の雇用延長制度を、法制の変遷に沿って解説する。第3章では人件費の問題に焦点を当て、役職定年制や定年後再雇用に伴う労働条件の変更について、多くの判例を用いつつ争点となり得る点を取り上げる。第4章は高年齢者個人の問題に焦点を当て、健康状態の問題やパフォーマンス能力の低下、あるいは現在役職に就いている者との"年下上司・年上部下"関係などの問題を抱えがちな高年齢者への適切な対応と、個々人のキャリア支援のポイントを詳解する。

 高年齢者の適切な雇用と人事労務を通して、既存の労働法制や人事・労務措置にどのような影響があるかを著者の視点で解説する、最終章「展望」にも注目したい。雇用確保義務のさらなる高年齢化に伴い、総人件費の上昇が問題となる一方で、現在の労働法制では賃金体系の変更は難しく、解雇法制の厳格さにより人員調整も事実上困難である。こうした状況に対し、どのようにして若年層、中年層の活躍を引き出すか――という視点からの著者の論は、ぜひ手に取ってご一読いただきたい。

 



「55歳以上」の雇用・法務がわかる本

内容紹介

喫緊の課題である高年齢者の労働力活用にフォーカス。高年齢者雇用における労働条件の変更、高年齢者個々の能力低下への対応等、人事労務上の留意点を判例分析とともに解説。

わが国においては、高年齢者の割合の急速な増加、平均寿命および健康寿命の伸長等、高年齢者をめぐる状況は刻一刻と変化し、世界的にみても高齢化が進んでいるといえる。このように、少子高齢化が進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分発揮できるよう、70歳までの就業確保を努力義務とする等の法改正も行われたところである。本書では、喫緊の課題である高年齢者の労働力活用に焦点を当て、高年齢者雇用における労働条件の変更、高年齢者個々の能力低下への対応等、人事労務・法務上の留意点を判例分析とともに解説している。