2021年12月10日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2021年12月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 日本では、このところ新型コロナウイルスの新規感染者数について、全国的に減少傾向が続いており、弊社でも受講生の人数の比較的少ない研修の一部については、これまでのオンライン型から対面型へ切り替えて運営を始めています。昨年3月以降、弊社主催のセミナー・研修はすべてオンライン型に切り替えましたので、対面型での開催は実に1年7カ月ぶりとなります。受講生(今回は部長・課長クラスが対象)の方々にとっても、対面型での研修やセミナーへの参加は久しぶりであったことは同様なようで、会場のあちこちで名刺交換や情報交換が熱心に繰り広げられていました。
 以前、30代の人事の方に、「オンラインでも研修ができることが分かった以上、いまさら対面型で実施する必要はない。対面型にこだわるのは昭和世代の古い考え方だ」と、手厳しいご意見をいただいたこともありましたが、私はやはり昭和世代の人間のようです。オンラインの便利さは十分理解しているものの、やはり直接人と触れ合うことのできる対面型には対面型の良さがあり、どちらかというとこちらのほうが落ち着く気がします。
 昨年から急激に新卒採用において選考面接のオンライン化が進みましたが、2022年卒の選考においては、大手企業でも最終面接だけは対面型に切り替えた企業が少なくありませんでした。きっと、昭和世代の方の要望だったのではないでしょうか。

三木谷社長自らがライブ登壇する楽天

 さて、前回から、アンケートによる統計データではなく、2022年卒学生の本音の声を中心に紹介しています。今回は、HR総研が「楽天みん就」と共同で本年3月と6月に実施した「2022年卒学生の就職活動動向調査」の結果を基に、個別企業の「セミナー・会社説明会」と「面接官」について、学生の印象の良かった企業とその理由、そして逆に印象が良くなかった理由について取り上げます。
 印象が良くなかった例についても調査では企業名を挙げてもらっていますが、ここでは企業名は伏せさせていただき、共通する観点を紹介します。なお、今回の調査は1人1社しか投票できない形で実施しており、「最も印象の良かった」企業として回答していることに等しく、1票の持つ意味は重いといえます。
 まずは、個別企業の「セミナー・会社説明会」を取り上げます。好感度の高かった企業の上位20位までをランキング形式でまとめた表が[図表1]です。

[図表1]印象の良いセミナー・会社説明会TOP20

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 楽天グループ 53 45 8
2 ニトリ 46 37 9
2 旭化成 46 21 25
4 ジェーシービー 37 32 5
4 バンダイ 37 28 9
6 アクセンチュア 36 21 15
6 ソニーグループ 36 8 28
8 カゴメ 32 18 14
9 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 29 23 6
10 NTTデータ 27 18 9
11 NEC(日本電気) 25 12 13
12 富士フイルム 22 18 4
13 伊藤忠商事 21 17 4
14 旭化成ホームズ 20 13 7
14 東海旅客鉄道(JR東海) 20 12 8
14 富士通 20 7 13
17 バンダイナムコエンターテインメント 19 16 3
18 講談社 18 16 2
18 三井住友海上火災保険 18 16 2
20 東京海上日動火災保険 17 17 0
20 西日本電信電話(NTT西日本) 17 12 5

資料出所:HR総研「2022年卒学生の就職活動動向調査」(2021年3月、6月調査の合計)

 第1位は、前回の「採用ホームページ」好感度ランキングでもトップだった楽天グループ(2021年4月に楽天から社名変更)です。ITメガベンチャーの代表格の企業ですが、理系の得票数8票に対して、文系は5倍以上の45票を獲得しています。コメントを見ると、社長の登壇や、コンパクトにまとめられた構成を評価する声が多くなっています。

・3時間に及ぶ説明会を行ってくださったり、三木谷さんが実際にお話ししてくださったり、印象が良かったです(文系・早慶クラス)

・社長や創立メンバーの話をライブで聞けた(文系・中堅私立大)

・多くのイベントを開催され、さまざまな方向から企業研究ができた(文系・早慶クラス)

・事業が多岐にわたっているにもかかわらず、コンパクトに内容を知ることができた(文系・旧帝大クラス)

・社内の雰囲気、経営理念やそれに基づく事業への取り組み方が、他社と比べて分かりやすかったと感じた(文系・旧帝大クラス)

 中には、こんな長文を寄せてくれた学生も。

・内容が濃いにもかかわらず、飽きない内容であり、終始目が離せないまま聞いていました。一つひとつのテーマに休み時間を設けていたため、それが集中できていた理由なのではないかと感じた。また、司会進行をしている方や質問に答える方たちもフランクで、とても気さくな方たちというイメージを感じ、いい印象を持てた(文系・上位私立大)

人事の評価が高いニトリ

 2位は、前回の「インターンシップ」好感度ランキングでトップだったニトリで、こちらもトップ登壇を理由に挙げる学生が複数いるほか、人事担当者の対応を挙げる声も多く見られます。クイズ形式や就活支援プログラムなど、インターンシップ同様に、セミナーの演出やプログラム構成にも評価が集まっています。

・社長のお話を何度かお聞きできる機会があり、積極的に会社のことを知ってもらおうとする姿勢が感じられた(文系・早慶クラス)

・長時間でしたが、働いている方や社長などアットホームな雰囲気で話しているところと、また、質疑応答の際に明るく楽しく話していて良い印象を受けました(文系・その他国公立大)

・人事の方が非常に明るく、楽しそうな印象を受けた(文系・上位国公立大)

・とても明るくて、クイズ番組を見ているようだった(文系・中堅私立大)

・ニトリ自体の会社説明だけでなく、就職活動全般で活用できるノウハウやTIPSなどを学ぶことができ、非常に有意義だった。また、オンラインだったにもかかわらず、社員の方々全員から熱い思いとパッションを感じることができた(文系・早慶クラス)

人事の「人柄」を挙げる声が多い

 3位の旭化成は、メーカーらしく理系の得票数のほうが多くなっていますが、他のメーカーと違うところは、文系からもほぼ同数の支持を受けているところです。「人柄」を挙げる学生が多く、中には「正直」と表現する学生もいます。

・分かりやすく、社員さんの人柄が伝わった(文系・旧帝大クラス)

・人事の方の人柄が良く、話も分かりやすかった(文系・上位私立大)

・社員の話をしっかり聞けるもので、司会の人事の方も聞いてほしい内容を漏れなく質問してくれ、会社の雰囲気をつかむことができた(文系・旧帝大クラス)

・社員の方々と少人数で深くやり取りする時間を与えていただき、部門、分野を超えて何でも挑戦できるし、挑戦してほしいという風土があると感じられた(理系・早慶クラス)

・正直そう(文系・上位国公立大)

 4位のジェーシービーでも「人柄」や「雰囲気」といったワードが散見されます。

・仕事を楽しむ感じや、社員の人柄を感じることができた(文系・上位私立大)

・人事の方の雰囲気が良かった(理系・上位私立大)

・多くの企業は事業説明、質問という形で終わってしまったが、就活をしていく上で何を重視するかなど、就職活動のアドバイスをいただけた(文系・上位私立大)

・人事の方が説明中に学生の質問に答えるなど、学生に寄り添う姿勢が見られた(文系・中堅私立大)

・1日ライブ形式のようにさまざまな部署の方のお話を聞くことができる日程があり、好きな時間に出入りできたため参加しやすかった(文系・中堅私立大)

 同数で4位のバンダイには、生き生きと働く社員の姿に共感する声が多く寄せられています。

・社員の方々が本当に楽しく目標を持って仕事に向き合っていることが、他社よりも伝わってきた(理系・旧帝大クラス)

・登場する社員の方みんなが、自分の夢について語っている姿がうらやましかった(理系・旧帝大クラス)

・ライブ形式ではあったが、視聴者のコメントを随時拾ってくれたため、一緒に参加している感じが強くあった(文系・上位私立大)

・面接対策や社員の方を使った模擬面接といった内容まで見せてくれた(文系・上位私立大)

「真摯」「正直」という企業姿勢を評価

 6位にはアクセンチュアとソニーグループが同数で並びました。両社とも理系からの得票が多く、特にソニーグループの理系28票は、今回調査の理系得票数のトップです。
 それぞれのコメントを見ると、アクセンチュアではプログラム構成を挙げる学生が多くなっています。

・アジェンダがしっかりしており、双方向の説明会になっていた点が、印象が良かった(文系・早慶クラス)

・社員の方が大変分かりやすく、端的に内容を伝えてくれた印象がある。職種紹介やエントリー方法までも丁寧に教えてくれたことでスムーズに面接まで取り組むことができた(文系・早慶クラス)

・過去に行ったコンサルティングの事例をよく知ることができた(理系・旧帝大クラス)

・女性の活躍について非常に詳しく伝えていただいた(文系・旧帝大クラス)

 ソニーグループは職種別採用を実施していることもあり、グループ会社別や職種別の話が聞けることが評価されています。

・業種やグループ会社の個別相談会も並行して行われたので、自分の興味のある職に関して詳細に知ることができた(理系・旧帝大クラス)

・職種別に実際に働いている方々から話を聞くことができたので、より専門性や適性を得ることができた(理系・上位私立大)

・何を大切にしているかが分かりやすく、聞きやすかった(理系・旧帝大クラス)

・風通しの良い社風が伝わった(理系・上位私立大)

 8位のカゴメは、質問時間が長く用意されていたことが評価されています。

・堅苦しくもなく、フランクすぎずちょうどよかった。話も分かりやすく、人事の方の経験やエピソードを混ぜながらだったので、想像がつきやすく、聞いていて飽きなかった。他の説明会は「聞かないと」という感じだったが、「面白いなー」と思いながら話を聞けた(文系・上位私立大)

・説明会の後の質問時間がかなり長く取られていた(理系・旧帝大クラス)

・社員の方がすごく楽しそうに仕事のお話をされていた(文系・早慶クラス)

 9位の博報堂/博報堂DYメディアパートナーズは、出入り自由の1日ライブを評価する声が複数ありました。また、「正直」「真摯」というワードも目に付きます。

・ライブ形式で1日かけて行われたのだが、さまざまな部署、年齢の社員の方々が登壇してお話をしてくださったから、とても雰囲気が伝わり、こちら側の質問にも多く答えてくれた(文系・早慶クラス)

・実際の案件について事細かく教えてもらえたので、働く姿を想像しやすかった(文系・その他私立大)

・良い点も悪い点も正直に話してくださった(理系・上位私立大)

・質問に真摯に回答していた(文系・旧帝大クラス)

 10位のNTTデータは、就職人気企業ランキングでは理系でいつも上位にランクインする会社ですが、今回の「セミナー・会社説明会」の好感度ランキングでは文系からの得票のほうが多い結果となっています。

・さまざまなイベントを開催してくださり、いろいろな視点から企業の理解を深めることができた(理系・上位私立大)

・YouTubeライブで数時間にわたって多くの質問に答えてもらえた(文系・その他私立大)

・録画形式かつ、目次付きで見たい部分だけ見ることができた(文系・中堅私立大)

 以上、上位10社についての学生コメントを紹介しました。プログラム構成や演出はもちろん非常に大切ですが、それと同じく、あるいはそれ以上に学生からセミナーや会社説明会で見られているのは、人事や社員の人柄や雰囲気、社風であることが分かります。学生からの質問への真摯な対応も、人事の人柄や社風として捉えられています。
 プレゼンテーションの内容・演出だけでなく、学生への質問にどう対応していくのか、例えばオンラインのライブセミナーであれば、チャットやQ&Aに寄せられた質問に対して最後にまとめて答えるのか、質問のあったタイミングで随時答えていくのか、そもそも質疑応答の時間をどの程度設けるのか等も含めて、プログラム構成をよく検討していく必要がありそうですね。

質問への対応と人事の印象が大切

 次に、印象が良くなかったセミナー・会社説明会についてのコメントも紹介します。貴社にあてはまる項目はありませんか?

・採用担当の方の家の回線が悪いという理由でほとんどまともに聞くことができなかった。また、ほとんど台本を読んでいる状態で、熱意を感じられなかった(文系・上位私立大)

・早口で説明が頭に入ってこなかった(理系・旧帝大クラス)

・専門用語が多く、気取っている感じがした(文系・旧帝大クラス)

・質問の意図も汲み取ってもらえなかった(文系・早慶クラス)

・ありきたりな答え。答えてほしい質問には答えてくれない(文系・上位私立大)

・学生の質問に対し、社員の方が明らかに不機嫌になっていた。質の良い質問ではなかったかもしれないが、あの態度は疑問に思う(文系・旧帝大クラス)

・参加している学生数が多すぎて、座談会形式であるのに全く質問ができなかった(理系・旧帝大クラス)

・録画形式の会社説明会で、質疑応答の時間が設けられなかった(理系・その他国公立大)

・録画形式で時間が長く少し疲れてしまった(文系・上位国公立大)

・人事自身が仕事内容を把握していないように感じた(文系・上位私立大)

・企業の代表であるはずの人事のしゃべり方や表情が暗く、魅力的でなかった(文系・早慶クラス)

・人事が楽しそうじゃなかった。流れでこなしている感じが悪印象だった(文系・上位私立大)

・内輪ノリをひどく感じた(理系・旧帝大クラス)

・ホームページで分かるような内容だった(理系・上位私立大)

・具体的な業務内容が分からずじまいになってしまった(文系・早慶クラス)

・オンデマンドもライブ形式の説明会も両方とも参加させられたが、内容が被っている部分が多く、無駄に思えた(文系・早慶クラス)

・男女が活躍できると言いながら、男性社員しか参加していない点に矛盾を感じた、説明会参加後の勧誘電話が迷惑だった(文系・上位私立大)

面接官の評価でも楽天グループがトップ

 今度は「面接官」の評価を取り上げます。面接の合否に関係なく、好印象を持った面接官の対応についてコメントしてもらい、上位15位までをランキング形式にまとめた表が[図表2]です。

[図表2]印象の良い面接官TOP15

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 楽天グループ 32 29 3
2 東京海上日動火災保険 22 21 1
3 富士通 19 5 14
4 ジェーシービー 17 14 3
5 ニトリ 16 13 3
5 日鉄ソリューションズ 16 6 10
7 ソニーグループ 15 2 13
8 富士フイルム 12 10 2
8 旭化成 12 8 4
8 パナソニック 12 4 8
11 第一生命保険 11 11 0
11 NTTドコモ 11 8 3
11 トヨタ自動車 11 5 6
11 味の素 11 5 6
15 三菱UFJ銀行 10 8 2
15 旭化成ホームズ 10 6 4
15 NEC(日本電気) 10 5 5
15 凸版印刷 10 5 5

資料出所:HR総研「2022年卒学生の就職活動動向調査」(2021年6月)

 こちらも1位に輝いたのは楽天グループで、学生の本質を引き出そうと熱心にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が評価されているようです。

・緊張しない空気づくりからしてくださいました。「堅苦しい敬語などは気にせず、ありのままにお話ししてください」と笑顔で言ってくれた時にはとてもうれしく、面接をしていてやりやすいと感じました(文系・上位私立大)

・笑顔でうなずきながら、答えたことを確認しながら進めていただけた(文系・その他私立大)

・全面接で親身に話を聞いてくださった印象を受けた(理系・上位私立大)

・学生の中身をよく知ろうとする姿勢が伝わった(文系・中堅私立大)

・面接官の方が誠実に対応してくださった(文系・上位私立大)

・用意された質問を聞いている感じがしなかった(文系・中堅私立大)

 2位の東京海上日動火災保険も、学生のことをしっかり理解しようと耳を傾ける姿勢が高く評価されています。

・熱心に話を聞いてくださり、結果は不合格であったものの、質問内容等からどんなことを知りたいのかが分かり、その後の面接対策に役立った(文系・早慶クラス)

・言葉に詰まることがあると分かりやすく説明し直してくださったりして、優しさを感じた(文系・旧帝大クラス)

・会話ベースで面接を進めてくださり、相づちを打ちながら話を聞いてくださる方が多かった。圧迫面接もなかった(文系・上位国公立大)

・就活生のガクチカ(学生時代に力を入れたこと)に対する深掘りをしっかり行っていた。それが自分としては内面をしっかり見てくれていると感じ、伝えきれていない部分もその深掘りを通して伝えられ、さらに回答に対して「こういうことでしょうか?」と確認をするなど、しっかり話を聞いてくだっていたので印象が良かった(文系・上位私立大)

・興味を持って自分の話を聞いてくれた(理系・上位国公立大)

・こちら側の話を聞く姿勢が他社に比べて真剣だった(文系・その他国公立大)

 3位の富士通も、やはり一人ひとりの学生に寄り添う姿勢を評価する声が多くなっています。

・大手は学歴が大事だと感じていたが、色眼鏡ではなくちゃんと一人の学生として見てくれたと感じた(理系・その他国公立大)

・自分の内面を面接の中で多く引き出そうとしてくれた点について非常に好印象だった(理系・上位国公立大)

・自分のやりたいことを一緒に探ろうとしてくれる点が良かった。エントリーシートにしっかり目を通して、気づいた点や疑問点を解消しようしてくれる姿勢を感じられた。また、面接を通してのフィードバックをもらうことができ、非常に参考になったし、好印象だった(理系・上位私立大)

・自分の話に寄り添ってくれたように感じた(理系・旧帝大クラス)

緊張をほぐす雰囲気づくりやフィードバックを評価

 4位のジェーシービーと5位の日鉄ソリューションズは、就職人気企業ランキングではあまり上位にランクインする企業ではありません。今回の調査でランクインしている他の企業と比較すると、面接した学生のユニークな人数は、多分少ないと思われます。にもかかわらず、このランキングに名前を連ねていることを考えれば、別の計算式、例えば「得票数÷面接したユニーク学生数」で集計し直してみると、もしかしたら1位、2位になるのかもしれません。それぞれに向けた学生のコメントを見てみると、学生の緊張をほぐした上で、学生の内面を深掘りしようとする姿勢がうかがえます。
 まずは、ジェーシービーへのコメントです。

・寄り添って内面を見てくれた(文系・上位私立大)

・緊張をほぐそうとしてくださり、またその場で面接の合格をいただいた(文系・中堅私立大)

・笑顔でフランクに質問してくださる方が多い(文系・上位私立大)

・パソコンの不具合で、面接時間に間に合わず少し遅れてしまったが、決まった時間で終わらせず、規定の時間を超えても面接を続けさせていただけた(文系・上位私立大)

 続いて、日鉄ソリューションズへのコメントです。

・話を親身になって聞いてくれ、相互にコミュニケーションができていると感じた(理系・旧帝大クラス)

・非常に和やかな雰囲気をつくっていただいた(理系・旧帝大クラス)

・素が出るような雰囲気づくりをしてくれた(文系・上位私立大)

・こちらの話が長くなってもうなずいて聞いてくれた。作文に対するフィードバックをいただけた(理系・旧帝大クラス)

 同じく5位のニトリでは、前回紹介したインターンシップの好感度ランキングでのコメントにもあったように、「フィードバック」という言葉が多く使われています。

・自分の話を受け入れて楽しそうに聞いてくださり、今後のためにフィードバックもしてくださった(文系・上位国公立大)

・フィードバックをくれましたし、常に笑顔で対応してくれました(文系・上位私立大)

・的確なフィードバックをもらえた(文系・上位私立大)

・私の話を最後までしっかり聞いてくださり、次の面接に向けてのアドバイスももらうことができた。皆さん笑顔でリラックスさせるよう促してくれた(理系・その他私立大)

・こちらを試すのではなく、一緒に考えてくださる姿勢があった(文系・早慶クラス)

「傾聴力」養成がカギ

 7位はソニーグループ、8位には富士フイルム、旭化成、パナソニックと、メーカーがずらりと並ぶ形になりました。それぞれのコメントをまとめて紹介します。

[ソニーグループ]

・緊張してうまくしゃべれない中でも、自分の良さを引き出してくれるような雰囲気があった(理系・上位国公立大)

・しっかり、自身の強みや研究について聞いてくれる企業だった(理系・その他国公立大)

・自分の話を丁寧に、興味を持って詳しく聞いてくれた(理系・中堅私立大)

[富士フイルム]

・学生の話に興味を持って聞いてくださり、緊張もほぐしてくださった。面接官同士の会話からも関係性の良さを感じた(文系・旧帝大クラス)

・話しやすく、会話しているかのように面接に挑める話題も振ってくれた。この人の下で働くのは楽しそうという期待感を持てた(文系・中堅私立大)

[旭化成]

・こちらの回答に対して積極的に理解してくれる姿勢を見せてくれていた(文系・旧帝大クラス)

・研究内容や学業以外での活動に耳を傾け、話を引き出していただいた(理系・旧帝大クラス)

[パナソニック]

・自分のことを引き出そうとしてくれた(理系・上位国公立大)

・笑顔で話を聞いてくれたため、話がしやすく、聞いてくれているんだなという実感が得られた(理系・その他国公立大)

 これまで見てきた企業に共通するキーワードは、「傾聴力」と言ってよいでしょう。学生が話しやすい「雰囲気づくり」から始まり、絶えることのない「笑顔」、しっかり話を聞いていることを伝える「うなずき」、そして決して圧迫面接とは受け止められない巧みな「聞き取りの話術」。
 面接官は、人事や経営層だけでなく、初期の面接では人事部門以外の部署の社員に協力を仰ぐことも多いでしょう。ただ、目の前の面接官が人事部門の社員なのか、非人事部門の社員なのかは、面接官が自己紹介をしない限り、学生からは全く判別できません。面接に携わるすべての社員に向けて、学生の内面を探るためのこれらの「傾聴力」を養成する必要がありそうです。

学生の9割は、面接官の印象が志望度に影響

 印象が悪かった面接官についてのコメントも一部紹介しましょう。これまで見てきた「傾聴力」が全く感じられない対応を指摘するコメントが多く寄せられているほか、オンライン面接での面接官側の通信環境の悪さ、マニュアルにのっとった機械的な質問、さらには近年導入企業が増えている動画面接・AI面接に言及するコメントもあります。ぜひ反面教師として参考にしていただければと思います。
 なお、前出の面接官の好感度ランキングに名を連ねた会社も、以下に紹介するコメントに含まれています。好感度ランキング上位の会社だからといって、すべての面接官が高評価を得ているわけでは決してなく、一部の面接官は学生の志望度を下げるほどの低評価を受けていることを付け加えておきます。

・学生の面接にもかかわらず、面接官がしゃべる時間のほうが長かった(理系・早慶クラス)

・グループ面接だったが、面接の中で既に扱いに差があるように感じられた(理系・上位国公立大)

・面接中ずっとひじをついていた(文系・旧帝大クラス)

・面接官の人が暗く、盛り上がりに欠けた(文系・早慶クラス)

・笑顔が一切なく、話しづらかった(理系・上位国公立大)

・相づちが適当で興味ないように感じた(文系・上位私立大)

・初めから自分に興味がないことが分かった。相づちも打ってくれなかった(文系・旧帝大クラス)

・とても偉そうで、見下した態度だった(理系・旧帝大クラス)

・全く私の話を聞く姿勢を感じられず、逆質問への返答もいい加減なものであった(理系・上位国公立大)

・現場社員の方で面接慣れしていなかったのか、質問の意図が分からないものばかりだった(文系・旧帝大クラス)

・面接官が現場で働く社員だったこともあってか、質問がかなり機械的だった(文系・上位私立大)

・リアクションがなく、マニュアルどおりの質問に徹していた(理系・旧帝大クラス)

・面接の受け答えの中で、聞き流されている印象を受けた(理系・上位国公立大)

・先方の通信環境の影響で映像が悪く、一人で話す感覚に陥った。面接官の顔さえ分からずに面接を受けたため、気分が悪かった(文系・早慶クラス)

・面接官のほうの通信環境が良くなくて、全然声が聞き取れなくなり、対応も冷淡であった(文系・上位私立大)

・エントリーシートの内容を把握していない印象だった。就職の面接として質問の回答を用意しているが、最後まで言いたいことが伝えられず不完全燃焼だった(理系・上位私立大)

・圧迫感が強く、言いたいことに対して反論的な意見を述べる方が多かった(理系・その他国公立大)

・「懇談会」という名前だったにもかかわらず、面接だった(文系・早慶クラス)

・録画ビデオ面接だったので機械的だった(理系・その他私立大)

・AI面接だった(文系・旧帝大クラス)

 最後に、面接官の印象が学生の志望度にどの程度影響するのかを聞いた結果を紹介したいと思います[図表3]。文系では、「非常に影響した」が55%と過半数を占め、「影響した」の37%を合計すると9割を超えます。理系は文系ほどではないものの、「非常に影響した」が40%、「影響した」が45%で、合計85%が何らかの影響があったと回答しています。

[図表3]面接官の印象の志望度への影響

資料出所:HR総研「2022年卒学生の就職活動動向調査」(2021年6月)

 面接官の印象が良ければ志望度が上がる反面、印象が悪ければ志望度は下がってしまうリスクも持っているということになります。面接官は、学生が自社に合うかどうかをアセスメントするだけでなく、学生の志望動機の形成にも大きな影響を持つことをあらためて認識する必要があります。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/