2021年12月10日掲載

BOOK REVIEW - 『心理職のための産業保健入門』

小山文彦 編著
東邦大学産業精神保健職場復帰支援センター(佐倉)センター長・教授 
A5判/296ページ/2800円+税/金剛出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 産業保健とは、働く人びとの生きがいと労働生産性の向上に寄与することを目的とした活動である。職場内においては、産業医、衛生管理者、安全衛生推進者などの産業保健スタッフを中心に、作業環境や職場環境の改善が進められる。本書は、表題で示されている"心理職"以外にも、産業保健スタッフやこれから産業保健を学ぶ人に向け、臨床心理士や産業医、社会保険労務士など多職種の視点から、実務で必要となる事項を網羅し、豊富な解説とアドバイスを提供する一冊である。

 企業の人事担当者としても、自社の産業保健活動に携わる専門職のスタッフが、「職場」という環境に対してどのように感じているのかを実感できる、貴重な書籍となっている。本書の冒頭には、産業保健にかかわる組織・人物連携相関図が掲載されている。企業の人事部や事業部、健康管理室といった社内の各部門・担当と、健康保険組合や医療機関等の社外機関との関係性が一目で分かるようになっている。続く第Ⅰ部では産業保健スタッフの心得や支援対象、第Ⅱ部では産業保健活動に必要となる労働基準法や労働安全衛生法等の各種労働法や、作業環境管理、作業管理、健康管理等の労働衛生について説明する。

 第Ⅲ部では職場のメンタルヘルス対策に焦点を当て、ストレス要因の説明や実際の面談方法や場所のアドバイスを解説する。第Ⅳ部は日常の健康相談、健康経営、治療と仕事の両立支援においての心理職の役割等を解説するほか、実際の相談を基に七つの事例を紹介し、背景や相談時のポイント等を示しているため、人事担当者目線の実務でも大いに参考となる。"心理職"のみならず、企業の安全衛生担当者、事業場内メンタルヘルス推進担当者等、多くの人に手に取っていただきたい一冊だ。

 



心理職のための産業保健入門

内容紹介

公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、カウンセラー必読!
カウンセリングの幅がひろがる! 働く人の健康支援をはじめよう


「産業保健」の心理支援は心理臨床とはどう違うの? 相談以外にはどのような業務があるの? 誰とどんなふうに働くの? どういった対応が現場で求められるの? どういう知識・スキルが必要?……などなど、「産業・組織領域」で心理支援を始める際におさえておきたいポイントを網羅した産業保健入門ガイド。
現役で活躍する産業保健スタッフ(産業医、保健師、臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士)と産業保健に精通する社会保険労務士が、現場の生の声をふんだんに盛り込んで書き下ろしているので、心理職だけでなく、これから産業保健について学びたい方々にもぴったり。
さあ、本書をめくって「産業保健」への第一歩を踏み出そう!