2021年12月10日掲載

BOOK REVIEW - 『日本的ジョブ型雇用』

湯元健治、パーソル総合研究所 編著
A5判/224ページ/2500円+税/日本経済新聞出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 近年、よく耳にする"ジョブ型"というワード。大手企業が相次いでジョブ型の人事制度への移行を発表したことでも注目を集めてきた。社会環境の変化等により、"メンバーシップ型"と呼ばれる日本型雇用システムの機能不全が目立つようになる中、新たな仕組みとして、ジョブ型雇用に大きな期待が寄せられている。しかし、"ジョブ型待望論"の中にはさまざまな誤解や誤認も見られる。本書ではそうした誤解を解き、"ジョブ型"の本質を捉えるとともに、自社でジョブ型の人材マネジメントを設計・導入する際の留意点を解説する。

 本書は大きく三つのパートで構成されている。第Ⅰ部ではジョブ型雇用の本質をつかむために、日本型雇用システムの現状や、ジョブ型議論で起きている問題点を整理する。そして、パーソル総合研究所が2020年に実施した調査結果に基づいて、日本企業における「ジョブ型」の実態を解明していく。その上で、自社でジョブ型の人材マネジメントを検討する際のプロセスや、制度構築後の運用面での留意点を解説する。その際に、本書の大きな特徴として、同テーマの書籍で強調されがちな職務記述書の作成方法などの手順を紹介するのではなく、制度を機能させるために必要な視点や考え方を伝えることに重点を置いている。

 第Ⅱ部では、各論として、鶴光太郎氏、水町勇一郎氏、中原淳氏などの有識者・実務家と執筆陣とのディスカッション内容を収録しており、ジョブ型雇用への転換で生じ得る変化や課題を整理する。さらに、第Ⅲ部は企業事例編として、富士通、KDDI、J.フロントリテイリングの取り組みを紹介。こうしたさまざまな議論やデータを踏まえ、本書では日本の企業風土や労働慣行にもマッチする「日本的ジョブ型雇用」を提言する。"ジョブ型"への理解を深め、自社での制度改革を進める上でぜひ一読いただきたい一冊である。

 



日本的ジョブ型雇用

内容紹介

ジョブ型雇用は問題解決の万能薬なのか? ジョブ型雇用の効果と課題を明らかにし、制度設計のポイントと課題を解説。経営と人事が果たすべき役割、個人の意識改革と働き方、教育・人材育成のあり方も提言する。

ジョブ型雇用の本質とは何か、日本の企業風土・雇用慣行と親和性の高い仕組みとは、転換へのさまざまなハードルをいかに克服するか、具体的なジョブ型雇用のモデルとは、企業の円滑な転換をサポートする政策の在り方など、本書は幅広い観点から有識者を交えて議論し、現実に即した導入を提言します。
ジョブ型雇用は働く人にとっても企業にとってもメリットが多いシステムですが、いざ転換となると、日本の企業風土や労働慣行にそぐわないとの意見や、解雇が困難な現行の労働法制に合っておらず雇用不安を煽るだけとの指摘もあり、具体的制度設計はむしろこれからです。
本書は、日本企業で広く行われているメンバーシップ型雇用の良さを残し、日本の企業風土や労働慣行にもマッチする日本的ジョブ型雇用を提案。日本企業がジョブ型雇用に転換する際にクリアしなければならない課題を指摘します。