労働条件の明示
明示すべき労働条件とは、
①労働契約の期間
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③就業の場所、従事すべき業務
④始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
⑤賃金(⑦⑧を除きます)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期ならびに昇給
⑥退職(解雇の事由を含みます)
に関することのほか、⑦退職手当、⑧臨時に支払われる賃金、賞与など、⑨食費、作業用品などの労働者負担、⑩安全衛生、⑪職業訓練、⑫災害補償、業務外の傷病扶助、⑬表彰、制裁、⑭休職に関することがあげられます。
これらのうち、①~⑥(②については、契約期間満了後にこの契約を更新する場合があるとき)は必ず定めなければならない事項(絶対的必要記載事項)であり、書面で明示しなければなりません(⑤のうち昇給については除きます)。一方、⑦~⑭は、その制度がないならば必ずしも規定しなくてもよい事項(相対的必要記載事項)です。しかし、該当する制度がある場合には、書面によって明示することが望ましいでしょう。
労働条件の明示は、労働契約を締結する際に行います。かつては書面の交付に限られていましたが、今では労働者が希望した場合、FAXや電子メール、SNS等でも明示できるようになっています。
明示された労働条件が事実と異なる場合
明示された労働条件が事実と異なる場合には、労働者は労働契約を即時に解除することができます。これが原因で14日以内に労働者が帰郷する場合には、使用者はそのために必要な旅費を負担しなければなりません。
必ず定めなければならない事項とは
●期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
・「契約更新の判断基準」としては、「契約期間満了時の業務量により判断する」「労働者の勤務成績、態度により判断する」「労働者の能力により判断する」「会社の経営状況により判断する」「従事している業務の進捗状況により判断する」等を明示することが考えられる
●就業の場所、従事すべき業務に関する事項
・雇い入れ直後の就業の場所、従事すべき業務
➡将来の就業場所や従事させる業務をあわせ網羅的に明示することも可能
●始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項
・労働者に適用される労働時間等に関する具体的な条件を明示
➡明示すべき事項の内容が膨大なものとなるときには、時間外労働の有無以外の事項については、勤務の種類ごとの始業・終業時刻や休日等に関する考え方を示したうえで、適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りる
●賃金(退職金・賞与等を除く)の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め切り、支払いの時期、昇給に関する事項
・「賃金」については、基本給等について具体的な額を明記すること
➡就業規則に規定されている賃金等級等により賃金額を確定し得る場合は、当該等級等を明確に示すことで足りる
●退職に関する事項
・退職の事由・手続き、解雇の事由等
➡明示すべき事項の内容が膨大なものとなるとき、適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りる
例:退職に関する事項は、就業規則第○条による。
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この解説は『初任者・職場管理者のための労働基準法の本 第4版』より抜粋しました。労務行政研究所:編 A5判 192頁 2,035円 |