労基法違反の労働契約
労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、「その部分について」無効となります。言い換えれば、労基法違反の規定があった場合、その労働契約のすべてが無効となるのではありません。
たとえば、「1日の所定労働時間は10時間」とする労働契約を結んでも、労基法が定める法定労働時間は「1日8時間」ですので「その部分について」無効となり、1日8時間労働制が採用されたものとみなされます(時間外労働協定が締結されていないものと仮定します)。
就業規則に反する労働契約
就業規則の基準に達しない労働条件を定めた労働契約も、「その部分について」無効となります。たとえば、労働契約で1日の所定労働時間を法定労働時間である8時間と定めたとしても、就業規則に「1日7時間」とする定めがあるときには、この7時間が所定労働時間となります(「就業規則と労働協約、労働契約との関係」参照)。
賠償予定・前借金の禁止
表彰・制裁の規定などにおいて、①違約金を定めることや損害賠償額を予定する契約をすること、②前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺する定めを設けることは禁じられています。
違約金とは、労働契約の期間途中で労働者が転職をするようなときに労働者が使用者に支払うべきものとして、あらかじめ定められるものをいいます。
損害賠償額の予定とは、たとえば営業車を事故で傷つけた場合には一律50万円を賠償させるというように、実害額にかかわらず賠償すべき損害額を一定の金額に定めておくことなどをいいます。なお、使用者が実際に受けた損害について賠償を請求することは差し支えありません。
前借金とは、働くことを条件に使用者から金品を借り入れ、将来の賃金によりこれを返済していくことを労働契約の締結の際などに約束したものをいいます。
労基法に反する労働契約、
就業規則に反する労働契約とは
違約金、損害賠償額の予定
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この解説は『初任者・職場管理者のための労働基準法の本 第4版』より抜粋しました。労務行政研究所:編 A5判 192頁 2,035円 |