2022年02月01日掲載

労働基準法の基礎知識 - 賃金の範囲

給料、手当、賞与

 労基法には、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と規定されています。この給料には、基本給、能力給、資格給など、いわば給与明細に「給与」として掲げられている金銭すべてが該当し、月給制、年俸制など支給の方法は問いません。
 一方、賃金は「通貨」で支払うこととしていますので(「賃金支払いの5原則」参照)、労働協約で別段の定めをしない限り、実物給与は原則、禁止されています。しかし、賃金が生活の糧であることを考えれば、通貨で支払われるべきであり、そもそも実物給与が賃金か否かは別問題といえます。
 手当には、家族手当、食事手当など、一見労働とは直接関係がないような名称であっても、「労働の対償として」「使用者が労働者に支払う」ものであれば、すべて含まれます。
 また、賞与とは、定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないものをいいます。支給回数、支給形態は問いません。

その他賃金と認められるもの、認められないもの

●任意的、恩恵的なもの
 長年の勤務に対する恩恵的なものが退職金だといえますが、労働条件の一つとして労使間であらかじめ支給条件が明確に定められており、使用者の義務とされている場合は、賃金に該当します。なお、退職金制度があるならば、①適用される労働者の範囲(正社員のみかパートタイム労働者なども含むのかなど)、②退職金の決定、計算および支払いの方法(一時金で支払うのか年金で支払うのかなど)、③退職金の支払いの時期について、就業規則に定めておきます。

●実費弁償的なもの
 旅費や社用のために支給される役職員交際費などは、賃金には含まれません。

賃金は「使用者が労働者に支払うすべてのもの」

賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう

賃金は「労働の対償」

●任意的、恩恵的なものであるか否か

●福利厚生であるか否か

※「食事の供与のために賃金の減額を伴わないこと」「食事の支給が就業規則などに規定されていないこと」「食事の供与による利益の客観的評価額が、社会通念上ごく少ないものと認められるものであること」の要件を満たす限り、福利厚生であって賃金ではない

この解説は『初任者・職場管理者のための労働基準法の本 第4版』より抜粋しました。労務行政研究所:編 A5判 192頁 2,035円
(URL:https://www.rosei.jp/store/book/9123
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