2022年02月01日掲載

労働基準法の基礎知識 - 賃金支払いの5原則

「通貨で」「直接労働者に」「その全額」を支払うこと

●通貨払いの原則
 賃金は「通貨」で支払わなければならないため、いわゆる実物給与は禁止されています(「賃金の範囲」参照)。預貯金口座への賃金の振り込みについては、「労働者の同意を得た場合」に可能ですが、この同意は個々の労働者に対して必要であり、労使協定などで一括して認められるものではありません。

●直接払いの原則
 賃金は直接労働者に支払われなければならないものであり、労働者本人以外、たとえば労働者の家族や法定代理人に対して支払うことはできません。しかし、労働者本人が病気のために、かわりの人が使者として受け取るような場合は、これに反しないものとされています。

●全額払いの原則
 賃金はその全額を支払わなければなりません。ただし、所得税や社会保険料などほかの法令により賃金控除が認められている場合や、社宅料や積立金を控除することをあらかじめ労使協定で取り決めている場合は問題ありません。

「毎月1回以上」「一定の期日を定めて」支払うこと

●毎月払いの原則
 賃金は毎月少なくとも1回は支払うものとされています。そのかわり、賃金締め切り期間を暦月でしばるものではなく、「前月の21日から当月の20日まで」を一つの期間として支払うことも可能です。

●一定期日払いの原則
 「毎月20日」のように、期日を特定して賃金を支払わなければなりません。一定のものであれば、月給について「毎月末」、週給について「土曜日」のようにすることも差し支えないですが、月給制について「毎月第3土曜日」のように月7日の範囲で変動するような決め方は認められません。
 なお、退職金などの「臨時に支払われる賃金」や「賞与」などについては、その性格上、例外として認められています。

賃金計算での端数の扱い

●割増賃金の計算上の端数処理

●1カ月における時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金総額の端数処理

1カ月の賃金支払額に100円未満の端数がある場合
➡50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げることはかまわない

1カ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月に繰り越す
➡翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことはかまわない

●遅刻、早退、欠勤などの時間の端数処理

5分の遅刻を30分の遅刻として賃金をカットする(働いた25分について丸めて計算する)

➡賃金の全額払いの原則に反して違法

この解説は『初任者・職場管理者のための労働基準法の本 第4版』より抜粋しました。労務行政研究所:編 A5判 192頁 2,035円
(URL:https://www.rosei.jp/store/book/9123
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