2022年02月11日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2022年2月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 年明け以降、オミクロン株を中心とした新型コロナウイルスの感染急拡大が続いており、東京では1日の感染者が2万人を超え、全国では10万人を超える日も出てきました。2月6日現在、過去2年間の累計感染者数は330万人を超えていますが、2022年に入ってからのわずか1カ月余りでの新規感染者数が、その4割を占めるほどになっています。
 本稿では、2021年に実施されたインターンシップについて、前年と比べて「対面形式」を採り入れる企業が増えたことをデータでお伝えしますが、これから本格的な選考シーズンを迎えるに当たって、「対面形式」を予定していた企業も面接については、再び「オンライン形式」への変更を余儀なくされそうです。

「内定充足率9割以上」がまだ半数の中小企業

 さて、今回は、HR総研が2021年12月に企業の採用担当者を対象に実施した「2022年&2023年新卒採用活動動向調査」の中から、2022年卒採用の内定充足率、2023年卒採用の採用計画、インターンシップなどを中心に取り上げます。
 まずは、2022年新卒採用活動の状況からです。「2022年卒は採用活動をしていない」企業のデータを除外して集計したところ、2021年12月時点における「2022年卒採用計画の充足率」は、全体では「100%以上」が最多で37%、次いで「90~100%未満」が23%となり、両者を合計した「90%以上」の充足率の企業は60%に達しています[図表1]

[図表1]2022年4月入社の採用計画に対する現在の内定者充足率

資料出所:HR総研「2022年&2023年新卒採用活動動向調査」(2021年12月。[図表11]を除き、以下[図表]も同じ)

[注]2022年卒の採用活動をしていない企業は除いて集計している。

 企業規模別に見ると、従業員数1001名以上の大企業では、「100%以上」が最多で44%、次いで「90~100%未満」が32%となり、これらを合計した「90%以上」は76%と4分の3以上となっています。301~1000名の中堅企業では、「100%以上」が最多で35%、次いで「90~100%未満」が26%で、合計した「90%以上」は61%と6割を超えています。300名以下の中小企業では、「2022年卒は採用活動をしていない」企業が36%もありましたが、それを除いて集計すると、「100%以上」は34%と中堅企業とほぼ同じながら、「90~100%未満」が17%にとどまり、「90%以上」は51%と半数程度となっているとともに、「0%(内定者ゼロ)」と回答した企業が8%もあるなど、大企業や中堅企業と比べて採用活動に苦戦している状況がうかがえます。
 2021年12月時点における「2022年新卒採用活動の継続状況」を見ると、上記のように内定充足率に大きな差がありながらも、企業規模に関係なく「(採用活動を)継続している」企業の割合は35%強となっており、残りの6割以上の企業は「(採用活動を)終了した」としています[図表2]

[図表2]2021年12月時点での採用活動状況

 中小企業では、内定充足率「90%以上」の企業は半数程度にもかかわらず、6割以上の企業が採用活動を終了しています。他の企業規模と比較すると、採用計画にほぼ達したから終了した企業だけでなく、計画を達成することを諦めて終了した企業も少なくないことが推測されます。

10月以降の内定辞退が増えた大企業

 次に、「(採用活動を)終了した」企業を対象に、「終了した時期」を確認してみましょう。企業規模により、終了時期には違いが見られます[図表3]

[図表3]2022年新卒採用活動の終了時期

 大企業では「2021年6月」に32%でピークを迎えますが、「2021年6月まで」(「2020年12月以前」~「2021年6月」の合計、以下同様)に終了した企業の割合は、大企業では41%と4割を超えますが、中堅企業22%、中小企業23%と、まだ2割強にとどまります。
 中堅企業は「2021年8月」に22%で終了時期のピークを迎え、中小企業は1カ月後の「2021年9月」に21%でピークを迎えます。ただ、中堅企業と中小企業の動きは似通っており、「2021年6月まで」とそれぞれのピークである「2021年8月まで」と「2021年9月まで」に終了した割合の推移を見てみると、中堅企業が22%→48%→67%、中小企業は23%→49%→69%となっており、この間に45~46ポイントほど伸びています。
 一方、大企業はというと、41%→59%→73%といずれも中堅・中小企業を上回っているものの、この間の伸びは32ポイントしかありませんので、「2021年6月まで」では中堅・中小企業と20ポイント近くあった差は、4~6ポイントの差しかなくなっています。大企業では、「2021年11月」にも23%と「2021年6月」に次ぐ二つ目の山が来ています。

 次に、「10月以降の内定辞退率」について前年との比較を聞いてみた結果が[図表4]です。全体をはじめ、どの企業規模でも「(前年と)変わらない」とする回答が圧倒的に多く、8割を超えています。ただ、「増えた」企業と「減った」企業の割合を比較してみると、企業規模による違いが見られます。

[図表4]10月以降の内定辞退率の前年比較

 意外にも、大企業のみが「増えた」12%に対して、「減った」が6%と「増えた」企業の割合のほうが多くなっています。しかもダブルスコアです。一方、中堅企業は「増えた」の7%に対して「減った」が12%、中小企業は「増えた」の5%に対して「減った」が9%と、逆に「減った」のほうがダブルスコアに近い差で多くなっています。
 前項で見たように、大企業では採用活動の終了時期(内定を出し終えた時期)が早い企業が多く、当然、内々定・内定期間が長くなりますが、その間のコミュニケーションの密度や内容に課題があったのかもしれません。また、早期に内定した学生は、大学3年のインターンシップ参加を起点に、内定取得まで企業と長期にわたるコミュニケーション機会があったのに対して、採用活動の後半で内定した学生は、企業との最初の接点から内定までの期間が短く、コミュニケーションの密度においても内容(質)においても、入社後の不安を払しょくできるほど十分ではなかったとも考えられます。大企業ほどオンライン選考のみで内定に至った内定者が多く、企業と学生の関係性(グリップ)の弱さもあったのではないでしょうか。いずれにせよ、内定辞退防止は、大企業にとっても次年度に向けた大きな課題となりそうです。

 内定辞退率が「増えた」企業と「減った」企業について、採用担当者からの考察コメントを紹介します。

【増えた】

・複数内定社を抱えたまま就活継続する学生が増えた。オンライン化浸透により学生側の就活負担が減ったせいで、応募者母集団は増えたが、内定者母集団(各社競合多重内定者)も増え、学生側も一通り就活が一段落した後に承諾を出す傾向が強まった(メーカー、1001名以上)

・Web応募が多くなり、滑り止めで当社を受ける学生が増加した(建設・住宅、1001名以上)

・対面接触が限られたこと(商社、1001名以上)

・志望意思が低い企業へ活動しているように思う(IT・インターネット、301~1000名)

・オンライン面接により、会社への思い入れが以前と比較して薄まった(メーカー、300名以下)

・志望度を上げきれなかった、内定出しの遅れ(メーカー、300名以下)

【減った】

・内定者フォローのきめ細かい実施(流通、1001名以上)

・グリップ力の向上(流通、1001名以上)

・企業理解度を採用前から例年以上にした(建設・住宅、301~1000名)

・アウトソーシング等で進捗管理等事務作業を効率化し、学生との接点を増やせた結果と考えている(メーカー、301~1000名)

・内定時期が例年よりも遅くなった(メーカー、300名以下)

「ターゲット層の集客」に苦労した企業

 2022年卒採用についての最後の項目は、「2022年卒採用を実施して苦労したこと」です。全体で最も多かったのは「ターゲット層の応募者を集める」の42%、次いで「応募者の数を集める」が40%、「内定者フォロー」が28%、「応募者フォロー」が24%などとなっています[図表5]

[図表5]2022年新卒採用において苦労したこと

 1位と2位の項目は僅差ではあるものの、ただ応募者を数多く集めるのではなく、自社のターゲット層を強く意識した応募者を集めることに注力し、内定を出した後は内定辞退を防止するためのフォロー、さらには選考途上での辞退を防止するとともに志望度を高めるためのフォローに苦労を感じている企業が多いことがうかがえます。
 企業規模別に見ると、「ターゲット層の応募者を集める」ことに最も苦労したのは中堅企業のようで、50%と半数に及びます。また、中小企業では、「ターゲット層の応募者を集める」の40%に対して、「応募者の数を集める」が43%と順位が逆転しています。ターゲット層にこだわるのではなく、とにかく応募者そのものを集めることが優先であるという切実な実態がうかがえます。
 また、2020年10月に調査した「2021卒採用時で苦労したこと」では、「オンライン面接」や「オンライン説明会」、「採用スケジュール遅延」が上位に挙がっていましたが、今回は上位にはなく、コロナ禍2年目となった採用活動で、これらにしっかりと対応できた企業が多かったことがうかがえます。ただ、「オンライン説明会の開催」や「オンライン面接の実施」を選択した大企業はいずれも10%前後にとどまるのに対して、中堅企業ではそれぞれ21%、17%となるなど、オンライン対応にまだ苦労している企業も少なくないようです。

依然として新卒採用に慎重な中小企業

 ここからは、2023年新卒採用の活動状況について見ていきます。まず、「2023年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数」を見ると、いずれの企業規模でも最も多いのは「前年並み」で、大企業では67%、中堅企業では60%と、ともに6割を超えている一方、中小企業では33%と3割程度にとどまっています[図表6]

[図表6]2023年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数の前年比較

 「増やす」と「減らす/採用なし」(「減らす」と「採用なし」の合計、以下同じ)のバランスを見ると、大企業では「増やす」の14%に対し「減らす/採用なし」は9%で、やや「増やす」が多い傾向となっています。中堅企業では「増やす」の13%に対し「減らす/採用なし」は15%とほぼ同等となっています。一方、中小企業では、「増やす」の12%に対し、「減らす/採用なし」は33%と顕著に多く、中でも「採用なし」が26%と4分の1を超えています。また、2022年新卒採用活動を「中断した」もしくは「採用活動をしていない」とした中小企業の37%のうち、「増やす」は8%にとどまっており、2023年卒で新卒採用を再開する中小企業はわずかです。2022年新卒採用に続いて2023年新卒採用においても、大企業や中堅企業より新卒採用に対して慎重な姿勢であることが推測されます。

 次に、「2023年卒採用における自社の課題」について、本調査と2022年卒採用動向調査(2020年10月調査)の回答を比較すると、どちらも「ターゲット層の応募者を集めたい」が顕著に高いものの、特に2023年卒では54%と過半数を占め、2022年卒の45%から9ポイント増加しています[図表7][図表5]で見たように、2022年卒採用で最も苦労したことは、引き続き2023年卒採用でも最大の課題となっているようです。

[図表7]2023年卒採用の課題(2022年卒比較)

 これに次ぐ2023年卒採用の課題は、「内定辞退者を減らしたい」で27%となり、2022年卒の23%より4ポイント増加し、課題感が強くなっています。3位の「応募者の数を集めたい」も26%と、2022年卒の18%から8ポイントも増加しています。絞り込んだターゲット層だけでなく、応募そのものを増やしたい企業が増えていることがうかがえます。
 一方、「オンライン・WEB化対応を進めたい」は2022年卒の18%に対して2023年卒では5%まで下がっており、苦労はしたものの多くの企業で必要なオンライン・Web化対応はおおむね完了し、課題解決ができている企業が多いことがうかがえます。ただし、採用活動のオンライン化が進んだことで、採用活動における応募学生とのコミュニケーションの密度と内容が希薄化する傾向にあり、学生に対する企業のグリップ力が弱まり、ひいては内定辞退されやすい状況となるなど、次の課題を生み出す結果となっています。

大企業と中堅企業のインターンシップ実施率は互角

 ここからはインターンシップの実施状況について見ていきたいと思います。全体では57%の企業が「実施する」(「前年は実施していないが、今年は実施する」と「前年同様に実施する」の合計、以下同じ)としており、「前年は実施したが、今年は実施していない」が3%、「前年同様に実施していない」が24%、「未定・検討中」が17%となっています[図表8]

[図表8]2023年新卒採用向けのインターンシップ実施状況

 12月の段階で「未定・検討中」の企業は、プログラムの企画期間や募集期間を考えると、実質的には「実施しない」になる企業が多いものと推測されます。企業規模による差異は見られるものの、かつてあった大企業と中堅企業の実施割合の差はなくなってきているようです。今回の調査で「実施する」企業の割合は、大企業で68%、中堅企業69%となっており、2021年10月に実施した2022年卒採用に向けての調査でも「実施する」企業の割合は、大企業54%、中堅企業53%となっています。前回は10月調査ということもあり、「未定・検討中」企業が大企業でも24%もあるなど、「実施する」割合は今回よりも低めとなっています。
 ただ、中小企業での「実施する」割合はまだ低く、44%と半数以下にとどまっているほか、「前年は実施したが、今年は実施していない」が4%もあります。企画、募集、運営、実施後のフォローとなると、中小企業ではまだハードルが高いと感じる企業が少なくないのではないでしょうか。

 次に、インターンシップを実施する企業を対象に、「インターンシップを実施する時期(月)」について予定を含めて聞いた結果が[図表9]です。

[図表9]インターンシップの実施月(予定含む)

 全体では、「2021年8月」が最多で51%と過半数を占めます。次いで「2022年2月」48%、「2022年1月」44%と続きます。8~9月をサマーインターンシップ期間と呼ぶことが多いですが、「2021年9月」は35%と「8月」「1月」「2月」と比べると、かなり実施率に差が出ています。その他の月では、「2021年12月」が31%と高くなっています。長期休暇中ではないものの、オンライン形式での実施が後押ししているものと推測されます。

一気に拡大した「対面形式とオンライン形式の混合型」

 続いて、「実施したインターンシップの形式」について、「対面形式」、「オンライン形式」、「混合形式(複数回開催が前提)」で選択してもらったところ、企業規模による明らかな差異が見られました[図表10]

[図表10]実施したインターンシップの形式

 「すべてオンライン形式で実施」こそ、企業規模による差異はほとんどなく、26~29%と似たような傾向となりましたが、「すべて対面形式で実施」と「対面形式とオンライン形式を混合して実施」の割合は企業規模で全く異なります。大企業では、「すべて対面形式で実施」は18%と2割にも満たず、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」は53%と過半数に達しています。一方、中小企業では、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が20%にとどまり、「すべて対面形式で実施」が52%と過半数を占めます。割合はちょうど逆転している状況です。中堅企業はその中間の割合で、「すべて対面形式で実施」が35%、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が39%と拮抗しています。
 参考までに比較対象として、2020年10月に実施した「2022年新卒採用活動動向調査」の結果を紹介します[図表11]

[図表11]【参考】実施したインターンシップの形式(2022年卒)

資料出所:HR総研「2021年&2022年新卒採用活動動向調査」(2020年10月)

 この時点では、「すべてオンライン形式で実施」の割合がどの企業規模でも最も多くなっているとともに、その割合は企業規模によって大きく異なり、中小企業41%に対して、中堅企業55%、大企業では67%と企業規模が大きいほど割合が高くなっていました。コロナ禍1年目ということもあり、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」する余裕のあった企業は少なく、大企業ではわずか11%にとどまります。今回の調査では53%であったことを考えると、たった1年の違いで隔世の感があります。今から思えば、当時は「対面形式」で予定していたインターンシップを、いかに「オンライン形式」に置き換えるかということで精いっぱいだったのではないかと推測されます。

在宅勤務による制約を受ける大企業

 次に、「対面形式」と「オンライン形式」に分けて、その特徴を見ていきたいと思います。まずは、「対面形式」で実施されたインターンシップの「日数タイプ」です[図表12]

[図表12]「対面形式」で実施したインターンシップの日数タイプ

 いずれの企業規模においても最も多いのは「1日程度」で、大企業50%、中堅企業では59%と6割近く、中小企業でも44%となっています。次いで多い日数タイプは企業規模によって異なり、大企業は「2~3日程度」が33%、中堅企業では「半日程度」が35%、中小企業では「1週間程度」が39%と4割近くもあり、「1日程度」との差は5ポイントしかありません。
 「1週間程度」は、大企業では17%、中堅企業では12%にとどまり、中小企業の39%は突出しています。大企業や中堅企業のほうが在宅勤務を推奨している割合が多く、「対面形式」で実施するために1週間にわたって出社することが難しかったのではないかと推測しています。「1週間以上」(「1週間程度」~「1カ月以上」の合計、以下同じ)で比べてみても、大企業33ポイント、中堅企業24ポイントに対して、中小企業は50ポイントと高くなっています。
 一方、「半日程度」を見ると、大企業は17%、中小企業では11%にとどまり、中堅企業の35%は突出しています。中堅企業では、「対面形式」で会社説明会やセミナーに近い内容のインターンシップ(1日仕事体験)が展開されるケースが多かったのではないかと思われます。
 続いて、「対面形式」で実施したインターンシップの「内容」を比較してみましょう[図表13]。大企業では、「実務体験」「社員との交流」などが、他の企業規模と比べて低くなっています。

[図表13]「対面形式」で実施したインターンシップの内容タイプ

 「実務体験」では、中堅企業と中小企業ではどちらも7割を超えるのに対して、大企業では25%にとどまります。「社員との交流」においても、中堅企業59%、中小企業50%と5~6割近くとなっているのに対して、大企業では17%と2割以下にとどまります。いずれも人事以外の社員が出社する必要がある内容となっており、ここからも前述したように在宅勤務の影響が出ていることをうかがわせます。
 また、「ケースワーク/グループワーク」は、大企業では83%もの企業で導入されているのに対して、中堅企業65%、中小企業に至っては22%と企業規模が小さくなるほど、実施率が低くなっていることが分かります。中小企業では、「実務体験」や「会社/現場見学」などを通じて直接体感してもらうことに重きを置かれているようです。

複数タイプのインターンシップを実施する中堅企業

 今度は「オンライン形式」についても見てみましょう。まずは「オンライン形式」で実施したインターンシップの「日数タイプ」です[図表14]

[図表14]「オンライン形式」で実施したインターンシップの日数タイプ

 「オンライン形式」で長期間のインターンシップを実施するのは、主催する企業にとっても、参加する学生にとってもハードルが高いことは想像できます。「1週間以上」のインターンシップを「オンライン形式」で実施した企業は、大企業でこそ21ポイントと2割を超えますが、中堅企業は13ポイント、中小企業では8ポイントにとどまります。最も多かった日数タイプは、中堅企業と中小企業は「半日程度」で、それぞれ60%、75%におよびます。ただし、大企業では29%と他の企業規模とは大きな開きがあり、「対面形式」同様、「オンライン形式」でも「半日程度」で実施する企業は多くないことがうかがえます。大企業で最多は「1日程度」の36%で、中堅企業の20%、中小企業の8%を大きく上回ります。
 企業によっては、同じタイプのインターンシップを複数回開催するだけでなく、全く別のタイプのインターンシップを開催することもあります。「対面形式」と「オンライン形式」という違いもあるでしょうが、「対面形式」で複数タイプ、「オンライン形式」で複数タイプということもあります。「1日程度」タイプで内容が全く異なるプログラム構成で実施することもあれば、初期は「1日程度」タイプで広く学生を集客し、参加学生の一部を次のステップとして、より中身の濃い「2~3日程度」タイプへ誘導することもあります。この設問は複数選択方式ですので、各選択肢のポイント(割合)の合計は100ポイント(%)を超えます。100ポイントを超えた数字が大きいほど、より多くの日数タイプが選択されたことになり、企業が複数タイプのインターンシップを実施した割合のひとつの目安になります。
 「対面形式」のポイント合計を見ると、全体では134ポイント、大企業で133ポイント、中堅企業で147ポイント、中小企業で122ポイントとなっており、中堅企業が最も複数タイプのインターンシップを実施していることがうかがえます。一方、「オンライン形式」のポイント合計を見ると、全体では114ポイント、大企業で107ポイント、中堅企業で120ポイント、中小企業で116ポイントと、「対面形式」と比べて総じてポイントは低く、複数タイプはさほど実施されていない様子です。ただ、こちらでも中堅企業のポイント合計が最も高くなっています。大企業のほうが、さまざまなプログラム構成のインターンシップを実施している印象がありますが、日数タイプで分類すると同じ日数のものが多いものと考えられます。

 最後に、「オンライン形式」で実施したインターンシップの内容について見ていきましょう[図表15]

[図表15]「オンライン形式」で実施したインターンシップの内容タイプ

 「対面形式」で見られたような大企業だけが他の企業規模の企業と傾向が異なることはないものの、「ケースワーク/グループワーク」についてのみは、やはり中小企業での実施率が極端に低くなっています。大企業71%、中堅企業80%と7~8割の企業が実施しているのに対して、中小企業は33%と3分の1に過ぎません。1回当たりの参加学生数の少なさや、「ケースワーク/グループワーク」のテーマ設定や運営方法についての知識・スキル不足などが理由として考えられます。
 次回は、各選考ステップの開始予定時期など、より具体的な2023年新卒採用の活動状況を見ていきたいと思います。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/